この物語の魅力は、単なるダークファンタジーという言葉だけでは語り尽くせません。剣と魔法、ダンジョン、傭兵、魔術師、死体回収屋――濃密なファンタジー要素がありながら、その中心にあるのは、傷ついた人間の魂そのものです。
主人公アストリアは、最初から英雄として立っている人物ではありません。すべてを背負いながら、それでもなお、歩いている。そこに、この物語の深い痛みと、静かな強さがあります。
そして、アストリアの魂に少しずつ触れていくクレリアの存在。彼女は“救世主の少女”でありながら、決して神聖なだけの存在ではありません。不安も、怖れも、幼さも、意地も抱えている。だからこそ、彼女の存在には生々しい光があります。壊れた世界で、壊れたままの人間たちが、それでも何かを守ろうとする、その切実さがひしひしと伝わってくる作品です。
決して万人受けする作品ではないが刺さる人には返し付きで刺さる作品。
俺TUEE系の作品ではなく、ハイファンタジーの世界観の中、丁寧に描かれた旅をする仲間達の様子を読みたい方にオススメ。
主人公サイドの登場人物にアから始まる人物が複数配置されていたり、人物描写が少な目等、読みやすさはあまり考慮されていないが、共依存関係の主人公とヒロインが少しずつ関係を深めながら少しずつ不穏なエンディングに近付いていく様子は、この作品でなければ得られない栄養素といえる。
また、主要登場人物は敵味方によらずそれぞれの信念を持っており、ただの舞台装置ではない事は読者の感情移入を助けるだろう。
作品全体の色合いとしては白黒ハッキリというよりは、光の当たり方で白にも黒にも見えるグレーを描いているように感じる。