(四)-2(了)
そんな生活の中で、高野のことはすっかり忘れてしまっていた。それは大事にしていたい思い出であった。確かに思い出そうとすれば思い出せたはずだった。しかし、いつの日からか、高野のことを思い出すことを止めてしまっていたことに気づいた。
あの日の後、高校一年の頃は高野のことについて考えることがあった。自分が高野の気持ちに何も応えられなかったことに気づき、後悔と反省しか覚えなかった。それが、園子をして記憶を封印せしめたのだ。
それが今、観覧車の中で、婚約者の加治元のキスによって、その記憶が思いがけなく解き放たれたのであった。あのときの彼の気持ちに応えていれば……。そんな今はどうしようもできない後悔に、園子はただ涙を流すことしかできなかった。
(了)
観覧車の中で 筑紫榛名_次回1/18文学フリマ京都 @HarunaTsukushi
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