第3話
「とにかくおやつはショートケーキだ。クリーム最強!」
「は?そんな凡庸なのは許せません。ひんやりさっぱりバニラアイスが至高だ!」
「どっちも却下。プルンとした食感とほろ苦さ。コーヒーゼリーが気高い!」
三つ巴の戦いに終止符を打ったのは、王道のデザート。
「ひれ伏せ。すべてを兼ね備えるプリンしか勝たん!!」#twnovel
妹に受験のはなむけと言ったらおかしいが、『薬』をやった。俺の妹は試験前になると『気持悪い、吐きそう』と緊張で実力が発揮できない。緊張しない薬だと言って、ミントタブレットを3錠ほど薬包みにして渡した。妹は驚きながら大事そうにポケットにしまった。結果は上々、効果はあったようだ。#twnovel
星を見ようと誘われたのに外は雪。しかも着いた先は建物の地下一階。彼が楽器の練習場に使っている部屋。星と関係ないじゃない?「本当は星の下であげたかったんだけど…」天井にはプラネタの星。ツリーにはイルミネーション。そして私の手には一粒の星が降ってきた。メリークリスマス☆ #twnovel
『
透きとおる冬の空気。見上げる夜空に満月が神々しく輝いている。手を伸ばすが届かない。美しいけれど、突き放されているようで胸が痛い。時に朧に照る月は温かく、爪の先用の様な細い三日月は儚げで、どれが本当の姿かわからない。けれど、どれもあなただから。私はほろほろと恋に落ちる。 #twnovel
俺は路地裏で残飯を漁り生きてきた。慣れればそんなに悪くない。自由は腐るほどある。ただ最近飯をくれる彼女に出会って何かが変わった。ある時、彼女が車にひかれそうになった。彼女を守った俺は助かりそうもない。「猫ちゃん死なないで!」命の対価に受け取ったのは彼女の温もりだった。 #twnovel
子供の頃、映画に出てくる魔法使いのステッキが欲しくて、似たような棒を振り回して遊んだ。残念なことにそれはただの棒で、キラキラした光も、動物に変身することもできなかった。 #twnovel
けれど、今は違う。私が
満月のまわりに虹色の光が見える。これは月光冠と言うのだか、彼女はこれを『月虹』だと思っていて『見ると幸せになれるのよ』と僕に笑いかけた。たとえ勘違いでも彼女はきっと幸せになれるだろう。#twnovel
だから僕も彼女といる時はあれは幸せの月虹だと騙されよう。
「本当に月が綺麗だね」
秘伝のレシピ? そんなのないわ。だって、美味しいものはみんなに食べて欲しいもの。私にわかることは全部教えてあげる。でも、同じレシピでも同じ味になるとは限らないのが料理なの。同じ楽譜で演奏しても少しずつ違って聞こえるのと一緒ね。#twnovel さあ一緒に『おいしい』の合唱を聞きましょう。
制服の第二ボタンが欲しいと言った。事実上の告白。あいつは困ったように泣き笑い。ずっと友達でいて欲しいと言われあっさりフラれた。
振り返ると声を掛けられた。『先輩、ボタン下さい!』「いいよ」知らない女子にせがまれ、僕のボタンはあっさりと無くなった。僕も女子なら、あいつのボタンを手に入れられたのだろうか? 天を仰ぎ泣き笑いした。 #twnovel
共に魔王を倒した騎士と魔法使い。平和になった世でそれぞれの道を歩み過ごしていた。数年後、魔法使いからの便りに騎士は驚く。今は異世界にいて、そこは天国のように居心地が良く帰りたくないらしい。
騎士は膝を折り、顔をゆがませて泣き笑いした。
あいつらしいが別れくらい言って逝け。
「火の用心!戸締り用心!」町内会の夜警当番。大人と一緒に、拍子木を持って火の用心を叫んで歩くだけの簡単なお仕事も夜道を歩くことの少ない小学生の僕らにとってはちょっとした冒険。暗い角を曲がったら凶悪犯が…と想像するだけでドキドキする。が何事もなく終わるのが一番だ。#twnovel
戻るとおばちゃんが缶詰のゆで小豆を煮て、お汁粉を作ってくれていた。仕事の後のこのお夜食が楽しみだったりもする。
鎮守の杜から微かに聞こえる祭囃子に誘われて、下駄を鳴らして境内に入ると夜闇の中にぽうと提灯の明りが並んでいる。#twnovel
誘われるがままに足を進めれば、夢色の綿あめに真っ赤なりんご飴、ぴかぴか光るブレスレット。お祭りのあとに瞼の裏に残るのは鮮やかな色たち。
あたしは町のクリーニング屋さん。お代さえいただければ、どんなものでもキレイにお洗濯しちゃう。シミひとつない真っ白なシャツって気持ちいいでしょ?
#twnovel さあ、あなたもどう? 消したい過去や記憶、経歴なんかいくらでもあるでしょう。心配しないで、あたしが驚きの白さにしてあげる。うふ。
病気がちで食の細い妹が林檎が食べたいと言った。高熱で寝込んでいる床でのことだった。雪が降り始めた今は林檎はもう旬ではない。凍みてしまってボソボソしている。けれど、妹の望みを叶えてやりたい。冷えた林檎をすり下し、蜂蜜をとろりとかけてみた。妹は目を細めて全て食べてくれた。 #twnovel
公爵令嬢は退屈な夜会を抜け、夜空を見上げ思う。
星は縫い留められているビーズのように光っている。
きらきらと美しいが、それだけだ。
私は飾りにはなりたくない。言われるがまま緩慢に動く恒星にはなりたくない。頭上を星が流れる。
私は、一瞬に身を焦がす流星群のように恋をする! #twnovel
岩が言った。
水のようになりたいと。
雨になり、雪になり、川になり、海になる。
綿のように真白な雲になり、刃のように透明な氷になる。雫は岩をも穿つ力を持ちながら、七色の虹をも生み出す。
水よ。あなたは強く美しい。
あなたのようにはなれないが、焦がれることを許して欲しい。 #twnovel
欲しいものはこれではなかった。プレゼントの希望を聞かれた時、子供らしく人形が欲しいと言えばよかった。けれど心とは裏腹に口を突いたのは本。子供だと思われたくなかった。義兄は分厚い本をくれた。中身は素敵なファンタジーだった。背伸びした自分が恥ずかしく、同時にうれしかった。#twnovel
空に虹色の魚が泳いでいた。うろこ雲の彩雲だ。それを釣って食べようとは思わなかったけど、とてもキレイだったので君に教えたいと思った。けど、君がいなくてとても寂しくなった。待ち合わせの場所でそのことを話すと君は笑った。『私も同じこと考えてた』ああ、同じ空を見上げてたのか。 #twnovel
ぐっと右足の指に力を込める。体は上へ押し上げられ、体が傾ぐ。すると次は自然に左足が前へ出る。足の裏に自分を感じる。それをくり返しながら坂道を上ると、ただ強い鼓動と息遣いだけが世界のすべてになる。
――ここに自分は生きている。
頂を目指すのはそれを知るためだ。#twnovel
制服の君は困難や悩みの中であがいている。いつかは抜けられる流れだと教えても信じないだろう。それでいい。大人の言葉を鵜呑みにするのは危うい。自分で考えて、選んだものしか身につかないのだから。 #twnovel
感じるといい。しとどに降る秋雨もからりとした高い空も、君の中にあるのだから。
お店の前を通るたび、窓越しに会釈をしてくれる店員さんを可愛いいと思っていた。けれど、無骨な俺にその店は入りにくい。ハーバリウムの中で揺れる水中花のように彼女を眺めるだけ。けれど今日は意を決して店に入る。理由があれば恥ずかしくないはず。
「誕生日なんで、ケーキ下さい!」#twnovel
え、神隠し? 神が子供をさらうなんて時代遅れだ。少子化の中そんなことしたら人口が減っちゃうでしょ?信仰する人がいなくなったら、神なんて存在が希薄になって消えちゃうんだよ。子供は大事にしないと。
#twnovel 今は『神現し』が流行中。子供に紛れて一緒に遊び暮らす。神も人間も幸せだよ☆
金木犀は雨に香る。しとしとと降る雫が甘い芳香をいっそう強くする。まるで金木犀のしずくが降っているかのよう。 この雨を飲めたらいいのに…。#twnovel
そうだあるじゃないの! 黄金色のお酒を小さなグラスに注ぐ。
『宇宙船のネジが一本脱落しただけのちょっとしたミスだ』そんなことをいう奴には命は預けられない。俺は怒りのままにぶん殴った。あいつは変わっちまった。引き潮のようにじわじわと。気が付けばあいつの海への情熱は干上がっていた。 #twnovel 俺は一人でも星海へ出で、この宇宙の果てを見てやる!
小さな子供達が公園でどんぐりを拾っている。小粒な茶色い実にも個性がある。とがったもの、長いもの、まあるいものと色々だ。 食べられるわけでもないのに夢中で拾い集めるのはなぜだろう? #twnovel
小さな手に握られた実は自分で探し、自分で選び、自分の力だけで手に入れた初めての宝物だから。
昔の人の読書好きの人は、夏は蛍の光で冬は雪明りで本を読んだという。電気のない時代、暗くなったら寝るしかないのに、そこまでして本が読みたかったのか同志よ!!と私は深く感銘を受けた。#twnovel
今日はそんな昔の人を偲びつつ、私の秋灯はキャンプ用のランタン。ほっこりとオレンジ色の明りが部屋を満たし、本の世界へ誘う。
白い便せんに青いインクで手紙を書いた。
『あなた、お元気ですか? もう苦しくはないですか?そちらはいつも常春だと聞きます。一緒に行けないことがとても辛く悲しいですが、いずれ必ず行きますので、待っていて下さいね』 #twnovel
手紙を紙飛行機にして空へ飛ばす。風が天国へ届けてくれるから。
子供の頃、5階建てビルの屋上は俺たちにとって秘密基地だった。電線の蜘蛛の巣に邪魔されない空。はためく洗濯物のシーツ。虹色のシャボン玉を無限に飛ばし、給水タンクの梯子を上れば、晴れた日は遠くに小さな富士山が見えた。 #twnovel
今は老朽化で取り壊されてしまったが、あの景色は忘れない。
私は鍵を駐輪場の側溝に落としてしまい、途方に暮れていた。それを先輩が制服が汚れるのも顧みず拾ってくれた。名前も知らないし、部活の先輩でもないのになぜ?『困ってる人をほっとけないでしょ?』その時から特別な存在。 #twnovel
薄くリップを塗り先輩を待ち伏せする。今日こそはこの想いを!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます