第7話

普段はとても会いたいのに、

今は今だけは会いたくない、一番心配させたくない人と出会ってしまった。

「ーーーーロイ」

目をぎゅっとした。泣いてることがバレないように俯きながら答える。


「ちょっとね、汚しちゃって。」

ジゼルは何事もなかったかのように装うとしたが。


「ジゼル、具合が悪いんだろ、洗わなくていいよ。僕も手伝。。」

いつものように

横に立ったロイがシーツの端を引っ張ろうとした時

ジゼルはそれを拒絶する様に凄い勢いで引っ張り返した。血が付いていることがバレたくなかったこともそうだが、ロイに移ってしまうのではと心配したのだ。

ロイはいつものジゼルと違うことを感じ取り、びっくりした様子でしばらくジゼルを見つめた。


するとシャルルと呼ばれた先程の猫がニャーとかぼそく鳴いた。


ロイの目の中に映るランタンの炎がきらりと揺らめいて

そして優しい眼差しにそれは変わった。


「ジゼル、大丈夫。」

「え?」

「大丈夫だよ。」

ロイは何かを悟ったようだった。しかしジゼルはロイがいることでさらにパニックになった。

「何が大丈夫なの?わたし、私・・・」



ジゼルの口から思わぬ言葉が出ないように

ロイはジゼルの唇に自分のそれを重ね合わせた。



「本当は君がもうちょっと大きくなって、君に告白するときにしたかったんだ。」


ジゼルは何が何だか分からなかった。

ロイがジゼルの肩を包んだ。あの、蛍の夜のように。


「ジゼル、君はこれで大丈夫。このキスで、病もじきに治るよ。」

そしてぎゅっと優しく抱きしめた。


ジゼルは不思議に思った。ロイの言う通り身体も軽くなっていく感覚がした。

ロイが言ってることが本当か嘘かは分からないけど、信じられないぐらいに今まで重かった体が軽くなった。


「悪魔と関係を交わすと魔女になるんだ。そして君は永遠を手に入る。」

「何を言ってるのロイ、悪魔とか、魔女って何?」


ロイはゆっくり目を閉じた

ロイの目からは、赤い液が漏れ出してきた。血だ。

ジゼルの目の前ににわかには信じられなかった事実が広がっていた。


「ジゼル、僕は悪魔なんだ。」


ロイはジゼルをまた抱き締めながら言った。

「そして、悪魔の血が流れている者は

愛を交わすと死んでしまうんだよ。悪魔は愛を知ると悪魔ではいられなくなってしまう。それでも良いと思えたんだ。君に永遠を与えてあげられるのなら。」


はじめて知った事実にジゼルの気が遠くなった。それに混乱した。そしてすでに手遅れだった。

ロイは血で真っ赤になった床にへたり込んだ。


「ジゼル、ありがとう。悪魔である僕は、人を、きみを、愛せるなんて思ってなかったんだ。

だから、とっても嬉しかった。幸せだった。でも、欲を言えば、もう少し君と」

ロイはジゼルを見上げながらその手を取ろうとしたが咳き込んだ。

溢れ落ちそうになった手をジゼルは拾い、今にも倒れそうなロイを支えるために自分も床に座った。

「ロイ!死んではダメ。」

「ジゼル、僕は死なないよ。少し眠りにつくだけさ。

体を変わるけど必ず戻ってくる。きっとそれは君なら気付けるよ。


君は僕の唯一の存在なんだ。だから、僕に後悔はない。」

涙が幾重にも落ちる


おばあさんを亡くしたときにもうこれ以上の痛みはないと思っていたのに

(なんで。)



すると突然、シャルルと呼ばれていた黒猫があの夜に見た魔獣に変化した。

そして、ロイの手にクンクンと鼻を擦り付けて

『お前はそうゆう選択をしたのか。』

と言っている様だった。この魔獣とロイが過ごした時間は短くはないのだということが、その一瞬でなんとなく理解できた。


息絶え絶えになるロイの胸に顔を埋めてジゼルは最期の別れをした。


ロイの体は冷たくなるどころか灰になって消えていった。

遺体も残らないなんて。。ジゼルは灰を一握り胸に当て泣いた。


魔獣は以前のようにジゼルを襲おうとはしなかった。

魔獣は、まるで馴染みのように二人に優しく寄り添い、また一人になってしまったジゼルを慰めた。


あの夜襲ってきた魔獣が私を慰めてる。。

そこで、ジゼルはロイが死に際に伝えたことを悟った。自分もロイからの魔族の血が流れ、魔女になったと言うことを





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週末にまた一話ずつ更新予定です!

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