まず、本作の主題は、前世と今世とで複雑に絡まってしまった二人の因縁(と言っても、決してネガティブな意味合いではなく……!)に当たる。
その点、乙女ゲー要素はあまり重要ではなく、タイトル詐欺とも言えなくもないのだが……。しかし、こと「転生」というお題に対しては、どこまでも誠実であったと言える。
複雑に絡まってしまった感情を、一つ一つ言語化して解きほぐしていく——。そんな丁寧なアプローチは、とても好感を持てるものであった。
しかし、丁寧さと冗長さは表裏一体。だが本作に限って言えば、それは杞憂と言う他ないだろう。
お砂糖マシマシで展開された、ユーモア溢れる会話劇は非常にテンポが良く、一切ダレることなく最後まで読み進めることができたのが印象的であった。
それもこれも、全体の構成からディティールに至るまで、見事なバランスで成立しているからに他ならない。
この高水準でまとまった傑作ラブコメ……願わくば、紙の本で手元に置きたいものである。