第20話 春先の異常事態。
訓練が始まり数ヶ月が過ぎる。
もう年の瀬で俺は冬生まれなので誕生日を迎えた。
当然大神茜を筆頭に女性陣が暴走をしたが俺は何とか逃げ切った。
何が女体盛りケーキバージョンだ。
夫婦なら何でもアリじゃ無い。
食べ物で遊ぶな。
家に届く大量の泡立てる前の生クリームを見て危険を察した俺は日影さんに相談をしたら女体盛りだと思うと言われた。
頭おかCー!!
当然断られた小夏は泣きそうな顔で「お誕生日のお祝いなのに!」と言う。
なんかどうやらおばちゃんから孫がみたいと言われているとか…。
あ…頭おかC。
だがここでまさかの救世主が現れた。
聖ジジイだった。
ジジイは数ヶ月の訓練の結果に満足し、更に追い討ちをかけなくても発電所なんかで成果を出せるようになった能力者達に「ようやく怒らなくて良くなった」と喜び、俺と小夏にも礼を言ってきた。
ん?怒らなくて良くなった?
この言葉に小夏が反応をする。
「あれ?聖さんは冬音が嫌いなんじゃないんですか?」
小夏の問いに不思議そうな顔で「なぜそう思う?最初の印象は最悪だったが日向 冬音は見事に結果を出してくれた」と返す聖ジジイ。
「ん?じゃあ何でチタンダンゴムシの時は喜んだの?」
「あれは一人で突出してしまっては周りに示しがつかないからだ」
「発電所とかでは?」
「あれはそもそも日本を支える能力者の若者なのに後ろ向きで、言うことばかりは尊大。そんな事では調子に乗って怪我をする。だからその前に限界を見極めさせる為に必死だっただけだ」
なんとまあ、本当にただ不器用だっただけの聖ジジイだったが今回に限っては俺を助けてくれる。
「御母堂!孫に会いたい気持ちはわかりますが先の襲来で出た欠員が埋まらない以上、日向 冬音も小夏夫人も我らが日本国に必要な存在!申し訳ないがしばし待たれよ!」
邪念の無い純粋な日本を思う聖ジジイの言葉。
これにはおばちゃんも何も言えなくなる。
こうして孫産めコールは無くなり、小夏は無理に俺を誘惑しなくなった。
…無理する必要ないんだけどなぁ…。風呂上がりとかいい匂いがするし、一緒に寝てる時のフワフワした感触とか十分な誘惑なんだよなぁ。
春先、異常事態が起きた。
俺たちの住む関東と東北の間に化け物が大量発生した。
関東はなぜか人里をかわして国道を南下してきて俺たちの住む街の方まできた。
こっちにくればラッキーとばかりに俺が率先して東京の入り口で化け物退治に乗り出す。
本当にこの頃には聖ジジイとは誤解もなくなっていたので「日向 冬音よ!カレーとパスタならどっちだ!」「ドライカレー!」「任された!ではどら焼きとアップルパイならどっちだ?ちなみに私はどら焼きを推す!」「ならどら焼き!」なんて会話をしながら戦闘準備を進めていく。
こうして一度だが去年の三度分に相当する量の化け物を蹴散らした俺達は無傷で喜んだが問題は東北だった。
化け物の数は観測の話では8対2で東京の方が多いのだが2は福島を目指して行った。
福島の能力者達は善戦し街と人を守ったが都市機能が滅茶苦茶になる程のダメージを受けた。
ある朝、家の前に夢野勇太、日影一太郎、大神茜…そして聖善人と有原有子の5人が菓子折りを持ってやってきた。
フルネームで表現するくらいヤバい気配の5人。
そう、俺に福島に行って東北のサポートとついでに栃木、群馬、新潟、茨城の蓄電池も頼めないかと言ってきた。
お歳暮のような菓子折りを見ながら「…マジで?」と返す俺に聖ジジイが「無論、小夏夫人と御母堂も帯同して貰って構わない。予算に関しては私から有原君には頭を下げた」と言うと有原有子が「…緊急時ですから日向君の法外な報酬も致し方ありません」と続く。
法外って…ひどくね?
この先も聖ジジイが会話を回し、「無論、生活のサポートとして日影一太郎には出張というかたちでついて行ってもらう」と言うと日影さんが「…買い物や困ったことは全部言ってね」と言って笑いかけてくる。
俺より先に頷いた聖ジジイ「他の能力者達には数ヶ月日向冬音抜きで耐えて欲しいと伝えてきた」と言えば夢野勇太が「私の仕事を全部やってもらえてしまいました」と言う。
…きっと皆、聖ジジイを見て青ざめただろうな。
ここで止まらずに「無論、小夏夫人が新天地で嫌な思いをしないで済むようにアドバイザーの大神茜には東京と福島を往復してもらえることにもなった」と言い大神茜さんが「私、意外と忙しいから週に2日くらいしか行けないけどよろしくね」と言って小夏にピースサインをする。
何とまあ、逃げ場がないこと。
小夏と言えば嫌な顔せずに「福島!新しい土地!やったね冬音!冬音を悪く言う人たちなんて居ない所だよ!街の人たちと仲良くなれるね!」と言いだす。
なんか俺はこの街の人たちのせいで人間不信になったと思われている。
この話でおばちゃんは「私は日向家と私の青海家を守りますから留守番するわ」と言う。
そうなると俺と小夏は二人暮らし。
緊急事態なのだがなんか赤くなってしまった。
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