第10話 仕返し。
小夏が散々向かわされてたてあろう蓄電池の前に立つとジジイがその棒を両手で持って発電すれば勝手に貯まると言い出した。
それにしても蓄電池はクソでかい。
これに小夏が立ち向かっていたかと思うと思わず腹が立つ。
「入れられたら帰っていいがやり切るまで居るんだぞ!」
そう言うジジイを無視して頑張ってこっちを見ている小夏に「寝てろって、おぶって連れて帰ってやるからな」と声をかけると小夏はまた泣きながら「ごめんね」と「ありがとう」を言う。
「小夏弁当のためなら安いって」
「…ありがとう冬音。でもあれ私がやらされたのより大きいの…」
この言葉に「クソジジイ」と悪態をついた俺はコッソリ小夏に耳打ちをする。
「起きたらとんでもなく面白い事になるから期待してな。小夏の分まで仕返しはたっぷりしてやるからな。おやすみ小夏」
小夏は本当に辛かったのだろう。
小夏母さんの膝枕であっという間に眠りについた。
俺は武士の情けで「日影さん、通訳入る?」と聞くと日影さんは「…君も聖さんも日本人だよ?」と返してきた。
「あっそう、じゃあいいや。なに?あれ満タンにしたら帰って良いのね」
「やれるものならな!」
「ちなみにレベル1なら何人分?」
「35人分だ!あれ一つでこの街の電力は一週間は保つ代物だ!」
話に聞いていた5倍以上かよ。
頭きた。
絶対後悔させてやる。
「採算度外視でやってやるよ。本気で打ち込めば良いんだろ?でもなぁ、俺が本気で打ち込んだら壊れちゃうかもなぁ〜」
俺の釣り針には当然デカい魚が食らい付く。
「始める前から負け惜しみか?お前如き力で壊れるわけがなかろう!さっさと全力を入れぬか!」
ジジイの言葉に俺はニヤりと笑う。
「なら壊しても責任取れとか言わないね?」
「言わぬ!いいからやって見ろ!」
言質ゲーット。
「日影さん、聞いてたよね?」
「聞いてたよ。日向君?君…」
俺は日影さんに「約束、凄いの見せてやるよ」と言いながらハンドルを握って「過充電!」と言うと1秒後には「パン!」と言う音を立てた後で蓄電池はプスプスと煙を立ててお亡くなりになった。
「ありゃ?本気出したら壊れちゃったかな?」
わざとらしい俺の言い方にすら反応出来ないジジイは開いた口が塞がらずに煙を放つ蓄電池を眺めている。
日影さんは「…あれ、一基で5千お……」と言っているが知らね。
「だって心配で聞いたのにジジイがフルパワーでやれって、ジジイが責任取るからいいよね。じゃあ帰るわ」
帰り支度をする俺にジジイは懲りずに予備の蓄電池を指差してくる。
「今の半分の力でやれい!」
「良いけど壊しても知らないよ?責任とってくれるの?」
「取る!」
その言葉を聞きニヤリと笑う俺をみて日影さんが「待って!日向く…」と言った時には手遅れで今度は3秒で「パン!」と聞こえてくる。
「なんだ、半分でもダメじゃん。止めてくれなきゃわかんないよ」
俺はニヤニヤと笑いながら「じゃ」と言って帰ろうとすると日影さんが「聖さん、始末所だけじゃ済みませんがそれでも書いてくださいね」と言ってから俺の前まで来て「街の人の為とは言えないがお礼をするから通常の蓄電池に充電をしてもらえないかな?」と頭を下げる。
「その他にも条件。小夏は貸さないよ」
「それも条件に付けさせてもらうよ」
「なら決まり。でも軽くやっても壊せるから見極めの人を付けてよ」
この言葉で技師達が見届ける中、俺は4基の蓄電池と1基の大型蓄電池に充電をした。
壊れた蓄電池を見て崩れ落ちる技師達には「あの人がフルパワーなんて言うからさ、ごめんね」と謝ると技師達が本気でジジイを睨んでいて気分はサイコーだった。
ちなみに俺は空腹マックスで帰り道に小夏の母さんに「やりすぎたせいでお腹減ったって言ったら怒る?」と聞いたら「何言ってるのよ!小夏をありがとう!」と言われてシュークリームを3個も買ってくれた。小夏母は神かよ。
日影さんの車の中で、シュークリームはカスタードといちごクリームとチョコレートクリームがあってどれから食べるか悩む俺に日影さんが話しかけてくる。
「日向君…」
「シュークリームはあげないよ」
「いや、そんな事は言わないよ」
「そんな事!?シュークリームより大事な話は今ないよ!」
怒る俺に呆れながら「一つ聞きたい。君は何タイプなんだい?」と聞いてくる日影さん。
「秘密。なんでもいいよね?俺は火も風も土も草も雷も使ったよ」
「…どうやって…」
「孤独で飯もない。あるのは時間。寝たくても腹減って眠れない日に考えたくないが俺は旧人類でいる為に能力について考えていただけ」
「…もし…」
「何?」
「もしも我々が困ってると言ったら助けてくれるかい?」
「パス」
「…何故……街の人達だね?」
「アイツら俺の両親を殺したのに懲りずに小夏まで殺そうとして、更に俺の配給を止めてやがった。だから知らね」
そのまま日影さんはその件については言わなくなったが小夏に対してある提案をされた。
まあ聞けば仕方ないが俺より小夏の母さんが困るだろうにと思ったが小夏の母さんは快諾してしまった。
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