第23話

 山頂から降りていく。行きはなんと、ジャンプのみで向かったがさすがににはできない。

 木々が風に揺れ音を奏でる。その心地よさを感じながらゆっくりと降りていった。

 ついた頃には夜になっていた。

 とぼとぼと寮の扉を開けた。


「どこで何をしていたの? 幹久くん」

「あ…」


 そこにはあきらかに怒り顔の会長と太閤先輩にカナリアがいた。


「すごいよね。せっかく、安全な異空間に送り込んだっていうのに自力で戻ってきちゃうなんて、やっぱり君を生徒会に迎い入れてよかったなぁー」

「そ、そうっすね…」


 明らかな棒読みで威圧された…が、さすがに自分がやったのではないとは言えず返す言葉もない。


「で。どうやったの?」


 カナリアがムスッとした顔で問う。


「なんか願ったら外に出られたんだ」

「で。山の頂上にいた…と。元の場所所じゃなく山頂で戻ってきてしまったのは詰めが甘かったのかも…。いや、ある意味安全圏だからよかったの…か?」


 太閤先輩が茶化したところで会長が誠の方に一歩出た。


「いずれにせよ。あなたのハラには危険な魔王が棲んでいます。くれぐれもいっときの感情に流されて自我を失わないように」


 ではと会長が一礼して部屋へと戻っていったそれを見届けたほか三人も散り散りになっていった。




 ーーーーーーーーーーーーー


 校長室では、煌々と灯りが点っていた。

 他大陸支部のリーダたちに報告を行った後だった。各地でも魔法による武力でこの世界の秩序を変えようという動きはあるようだ。


「魔法は人々をより高次元に至らしめるもの…。しかし、それを独占するようなことがあってはいけない。過去あった魔女狩りのように私利私欲に魔法を使えば必ず我々は消される。人間という定義を外れ、何らかの化け物と呼称され、恐れられ、そしてさげすまれるだろう。魔法は使えても人々の枠からははみ出してはいけない。あくまでも人々に手を差し伸べる形で共存していくべきであろうー」


 そのように話したのは画面上のアメリカ支部、アルビナ・ビルヘイム。


「どう思う。華蓮」


 アリシアが頬杖をついて尋ねた。


「我々の理念とすれば概ね間違いないが、これは他大多数に魔法という存在は知られている体の話で。まだ眉唾ものと思われている今では空想の世界に等しいような気がする」

「そう。それにはまず魔法というものがどんなものかを知ってもらわなければならない。ただ、文化発展を遂げある程度便利な世の中になっている日本においてうまく伝わるかどうか…」


 もし、文明開化などなかった時代なら夜なのに明るくしたり、水を出現させ干ばつを防いだりなど人々の役に立つ魔法で人々に受け入れられたかもしれない。


「でも、だめだわ。過去でも神格化されて普通の人間とはみなされない可能性が高い」

「祈れば雨を降らせることができる…みたいな?」

「そう。それで、人間たちに崇められて祈られるようになる。たしかにそういった魔法が使えるだけで他はみんなと変わらないのに…」


 アリシアがスマホで検索する。画面には卑弥呼と出てきていた。


「たしかにこれは魔法ね」


 スマホの文章でまとめられたサイトを読みながらそう呟いた。


「気に入れられても、恐れおののかれても結局は同列とは思ってくれないわけか…」

「まさに現代で言うところのチート…なのでしょう。魔法というものは」


 アリシアは立ち上がり窓の外を見た。そこからはちょうど演習場で魔法を鍛える高校生たちが見えた。

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