第16話 ボクはボクなりのやり方で現実と向き合わなければならないのかもしれない
◆
教室には、どうせ何をやってもダメなんだっていう諦めの空気が支配している。
控えめに言っても中途半端なクズの掃き溜め。
いや、クズはそんなことを考えてるボクだけか。
みんな何だかんだいいながら、自分たちの現実を受け入れて青春や恋愛を謳歌している。
「本当にヤバい奴は頂点か最底辺からしか生まれない」
ネットで誰かが言ってたけど、普通科でも普通以下のボクが一番どうしようもないと思う。
せいぜい頑張って偏差値の低い大学に奨学金で入って、卒業後に中小企業の正社員になれば御の字。
不況だし、感染症は収まらないし、戦争だって、どうなるかわからない。
やけになった無職のおっさんが起こす殺人事件や、原因不明の失踪事件も増えている。
それでも治安は他の国よりはマシだと思うけど、ロクな未来がないことは確かだ。
◆◆
閃輝を扱うようになって気づいたことがある。
光には流れがあるということだ。
閃輝は空中に漂っていて、命じると、指先に集まってくる。
その時だけ閃輝は動きをみせるのだが、街を歩いていると、ある一点に向って閃輝が動いている時がある。まるで何かに引き寄せられているみたいに。
はじめは特に意識することはなかった。
というより、自分の閃輝を使いこなすことに精一杯で、頭がそっちに回らなかった。
でもある程度、自分の力で閃輝を動かせるようになると心に余裕が出てきて、今まで考えなかったことが頭によぎる。
ひょっとしたら、ボク以外にも閃輝を使える奴がいるんじゃないか?
閃輝を見えるようになった理由はわからない。
最初は神様が与えてくれた特別な力だと思って喜んだけど、そんな都合のいいことがあるわけはない。
ボク以外にも閃輝が見える人もいれば操れる奴はいる。
そう考えるのが自然だろう。
それが何人いるのかはわからない。
世界に数人しかいないのか、日本だけでも数百人、数千人単位で存在するのか?
はじめは「自分だけに宿った特別な力」だと思いたかったので、自分以外の人間に見えている可能性など考慮したくなかった。
一度それを認めると、せっかくボクがみつけたボクだけの特別な世界が崩れてしまう。
ゲームのレベルを99まで上げて喜んでいたら、実はこのゲームはオンラインゲームで、レベル999のプレイヤーが腐るほどいたということを知らされるような感じだろうか。
まぁ、オンラインゲームをやったことないからわかんないけど……。
そもそも、ちゃんとクリアできたゲーム自体がない。
SNSに触らないのもそれが理由だった。
学校ですらパッとしないのに、SNSでいろんな趣味とか特技を持っている人たちが嬉しそうに笑ってる姿をみると、自分がちっぽけな存在に思えて、全てがどうでもよくなってしまう。
そうやって、スポーツも勉強も絵も音楽もどうでもよくなった。
かろうじて続いている青空文庫で昔の小説を読むという趣味も、無料だから読んでるだけで、いつまで続くのかわからない。
誰にも負けない趣味を持つためには、自分しかいない世界を見つけなければいけない。
でも、そんな都合のいい場所が世界中にどこかにあるとは思えない。
たぶんボクは「普通の人よりちょっとだけ劣っている」という評価を、今後も受け続けるのだと思う。
それならまだマシか。
いずれ普通よりもさらに下の奈落の底にいつかは転落してしまうのかもしれない。
でもボクには閃輝がある。
閃輝こそ、ボクだけの世界だ。
そう思った。
そう思い込もうとした。
でもそろそろ、ボクはボクなりのやり方で現実と向き合わなければならないのかもしれない。
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