第6話 夢芝イツキ

 ◆


 翌日。ボクは久しぶりに登校した。


 通学の電車の中でも確認したけど、やっぱり閃輝は他の人には見えてないみたいだ。


 閃輝はいたるところに存在していた。


 場所によって小石の散らばり方はまちまちだった。


 名前もわからない小さな羽虫が飛んでいるような感じだろうか。


 あるいは空気みたいなもの?


 もしくは匂い?


 見えないけど存在しているものなんて、世の中にはたくさんある。

 閃輝もそういうものなのかもしれない。


 高校へと向かう通学路でも確認したが、閃輝はあらゆる場所に漂っている。


 もちろん校内にも。


 ボクは二年前の大雪を思い出していた。

 

 受験の日だったから、よく覚えてる。

 空から綿あめのような雪が降り注ぎ、建物や道路を覆い尽くしていく光景を観て、異界に迷いこんでしまったようだと感じた。

 

 浮游する小石群が、あらゆる場所でピカピカしてる光景は、あの時以上に非現実だ。


◆◆


「ひさしぶり、ミチオくん」


「おはよう。ドリー」


 教室に入るとドリーが話かけてきた。マッシュルームカットにフレームの大きなメガネ、口はマスクという垢抜けない姿だが、それでもオーラとしか言いようがない、隠しきれないが滲み出ている。



彼の名は夢芝ゆめしばイツキ。ドリーは名字の夢(ドリーム)から取られたあだ名で、みんな敬意を込めて、そう呼んでいる。


ドリーとは小学校の頃からの幼馴染で、当時はイツと呼んでいた。


「だいぶ休んでたね」


「ちょっと風邪で……」


「よかった。心配したんだ。また感染症、流行ってるみたいだし」


 ドリーは優しく笑った。

 マスクの下からでも彼の口元が優しく微笑んでいるのがわかる。


 休んだ理由をボクは言わなかった。


 余計な心配をさせたくないという気持ちもあったけど、自分の無能さを知られたくないという見栄の方が大きかった。


 閃輝に至っては、どう説明すればいいのかわからないし。


 ボクが急に受験勉強に取り組もうと思ったのは、ドリーのことが無関係ではなかった。




 

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