靑の心臓
「この前なに使いましたっけ」
「トルマリンだな」
「ああ、靑と緑混ざったやつ」
ベッドに横たわる想海の傍らで東雲と群靑の会話が響く。横たわる想海は着ているYシャツを開けられ白い胸部が晒され、『内側』を開かれている。
「鉱物を動力源にするのは
「
「まあ確かに。いかにもメカって感じしますもんねぇ」
想海の胸部内側には幾重にも重なるコードの中央に円筒状の硝子がはめ込まれている。想海と名付けられた人形はこの中へ入れた鉱物を動力源として稼働していた。
「石によって稼働時間が違うのがまたなんとも」
「一番長かったのは何だったか」
「アンモライト。親指の爪くらいの大きさで1週間持ちました」
「鯨の心臓の結晶も長かったな」
「今のとここれが一番コスパ良いかもですよ。今は売るほどあるんですし」
言いながら東雲は想海の胸部から円筒状の硝子を取り外し靑い結晶を入れていく。筒の内側を靑で満たした後、もう一度内側へはめ込み直し細いコードを数本繋ぎ胸部を閉めた。
「伝手にこの人形の出所を探して貰ってはいるが、なかなか見つからない」
「難しいんじゃないですかねぇ……」
「今はまだいい。しかし故障すれば私達では修理出来ないだろう」
眠る想海を見つめる群靑の目に薄い不安が揺らぐ。東雲は群靑を見つめたまま尾をゆっくり揺らし思考を巡らせてからベッドに腰かけて「ひとまず」と口にする。
「まだ想海君は壊れていませんし、心配のし過ぎは心に毒ですよ」
「……そうだな」
東雲の言葉に僅かに群靑の表情が和らぎ、手元のボードを抱え直すと踵を返した。
「私は森に鉱物採取に行く」
「いってらっしゃーい」
「お前も業務に戻れ」
「はぁい」
部屋を出る群靑を見送ってから東雲は立ち上がり、想海の衣服を整えて薄い布団をかけた。硬く閉じられた瞼はまだ開きそうにない。
「次はいつ起きるかな?起きたら遊ぼうね」
眠る想海へ声をかけ優しく頭を撫で、東雲も部屋を後にした。想海が次に目を覚ましたのはそれから5日後の事だった。
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