エロ漫画の世界から転生した主人公が、別世界でもエロいことをしまくる話

エロ漫画の世界から転生した主人公が、別世界でもエロいことをしまくる話

 今回の相談者である月島香苗つきしまかなえは野球部に所属している。もちろん彼女がマネージャではなく選手であることは、この学校の者ならば誰でも知っていることだろう。


 髪は野球部らしくベリーショート。顔は童顔で一見すると普通の女子高生にしか見えない。もしも月島さんがユニフォーム姿ではなく制服でグランドに立っていたのなら、まったく彼女のことを知らない人が見ればマネージャーだと思うに違いない。しかしそんな月島さんは大谷翔平もびっくりの160キロの剛速球を投げる。彼女の体をよくよく観察してみると、なるほど肩の部分がラクダのコブのように異様に膨らんでいる。


 僕はそのまま視線を肩のコブから胸のふくらみへと移す。肩のそれに比べれば、申し訳程度の隆起しかない。

 カーテンの隙間から差し込む光が月島さんの胸のあたりを斜めに切り取っている。

 僕はそれを見て、まるでエロ本のモザイクみたいだと思った。


「先輩……あの、そろそろ服を着てもいいですか? それに、下着まで脱ぐ必要なんてないと思うんですけど……」


 一糸纏わぬ姿で立つ月島さんは、両腕で自分の体を抱きながら恥ずかしそうに身をよじっている。


「そんなことより月島さん。それだと胸は隠れてるけど大事な部分が丸見えだよ」


 あっ、という声を漏らしながら月島さんはあわてて下半身の茂みを隠す。すると今度は乳首が露になってしまう。その色はピンクの絵の具を水でよく溶かしたかのように淡い桃色だ。


「おや、今度は乳首が丸見えだ。それにしても月島さんの乳首、かわいいね」


「そんなっ……じっとみつめないでくださいっ……」


「恥ずかしがることなんてないよ。だって、この生徒会室には僕と月島さんしかいなんだから」


「でも……」


 僕は机の天板をばん、と手で叩く。「月島さん、今回の目的を忘れちゃったの?」


 月島さんはひっと小さな悲鳴をあげる。怯えた表情はか弱き女子のそれだ。


「男子の部員たちと一緒に着替えがしたい。裸の付き合いがしたい。今日は恥ずかしさを克服するためにこうして僕と特訓をしているんだよね? これぐらいで恥ずかしがってちゃダメじゃないか」


 月島さんの悩み――それは、彼女が野球部で唯一の女子部員であることに起因する。


 幼いころから野球をしていた月島さんは、いつも男子たちに交じって着替えをしていた。しかし年齢があがるにつれ彼女の体は少女から女性へとだんだん成長していった。


 あるとき、いつものように着替えをしていると男子の一人が月島さんをじっとみつめていた。その視線は盗塁を狙うランナーのように鋭く、その迫力に思わず彼女はその場から逃げ出してしまったらしい。


 彼女はそのことについてひどく反省したという。チームメイトにあんな態度をとってしまうなんて、なんて自分は失礼な人間なんだろう。試合でピンチに陥ったとき、支えてくれたのは誰だ? 他でもない、チームメイトだ。


 家族に次いで多くの時間を共に過ごした仲間。その大切な仲間に裸を見られたくらいであんなに取り乱してしまうなんて……プレイヤーとしても、人間としても、まだまだ自分は未熟だ。


 自分を変えたいんです――生徒会室に入ってきた月島さんは、僕に向かってそう言ったのだった。

 こうして僕は彼女の悩みを解決するために、生徒会長として一肌脱ぐことにしたのだった。


「……分かりました」


 月島さんは顔を真っ赤にしたまま力なく頷く。野球で鍛えた精神力の賜物なのか、僕の舐めまわすような視線をぐっとこらえている。その健気な姿が僕の性欲をむくむくと増幅させる。


 僕は立ち上がり部屋の中央に立っている月島さんの元へとゆっくりと向かう。そして彼女の正面に立ち、制服を脱ぎ始める。


「えっ、ちょ。なんで先輩まで脱ぐんですか?」


「裸の付き合いをするためには僕だけ服を着ていたらおかしいだろ?」


「それはそうですけど……あっ」


 彼女の視線が下へと向けられる。


「月島さんはたしかに優秀なピッチャーだ。だけどバッティングの方はいまいちだと聞く。そこで提案なんだけど、君のバッティングを僕に見せてくれないかな?」


「でもバットなんてどこにも……まさか」


「そのまさかだよ」


 僕はそそり立つ自分のバットを月島さんの方へ向けた。「さあ、持ってみて」


 彼女はおそるおそる僕のバットを握る。「……固い」


「うーん。それじゃあグリップのにぎりが少し甘いな。もっと強くにぎって。そうそう。次はグリップを握ったまま上下に動かしてみようか。最初はゆっくり、だんだんはやく……いいリズムだ。月島さ……んっ」


「あのっ、先輩っ、これとバッティングに何の関係が?」


「いいから黙って続けるんだ!」


「は、はい!」


 そのとき、ものすごい音と共に生徒会室の扉が吹き飛んだ。一瞬爆弾テロか何かが起こったのかと思ったが、僕はすぐにそうではないと気付く。

 ――あいつだ。

 

 もくもくと上がる煙が晴れると、そこには竹刀を持った女子生徒が鬼の形相で僕を睨んでいた。


 葉山葵――風紀委員長であり剣道部女子主将、人は彼女のことを鬼の風紀委員と呼ぶ。そんな彼女は僕の天敵とも呼べる存在だ。

 僕が女子生徒にエッチなことをしていると、どこで嗅ぎつけたのか毎回ナイスタイミングで登場してきて邪魔をするのだ。ちょうど今みたいな感じで。


「ま~た~あんたはぁ~エッチなことをたくらんでぇ~」


 ゴゴゴゴゴ、という地獄の門が開いたような音が彼女の背後から聞こえる。

 

「葉山さん! ち、違うんだっ! 僕は彼女の悩みを解決してあげたくて……」


「言い訳をするな!」


 葉山葵が竹刀を大きく振りかぶる。その構えは特大ホームランを狙う打者のようだ。彼女の狙いは僕の頭。そこに竹刀をぶち当てるつもりなのだ。毎回思うのだけど、彼女の脳内では「僕が死ぬかもしれない」という概念は存在していないらしい。


「このエロ生徒会長めっ! 覚悟おおおぉぉ~ぉ~~ぉ~~~ぉぉ」


 ああ、またこの感じか。このあと竹刀でぶっとばされて、「ほげちぇろーん」とか言いながら(僕の意志に反してなぜかそんな声が出る)めちゃくちゃ遠くまで吹っ飛ばされるのだ。


 うわ、まじか。

 今気づいたけど生徒会室は三階だ。そんな高さから地面に落下して死なないだろうか。

 ってか、ちょっと待てよ。


 そのとき、僕の目には葉山葵の動きがスローモーションのようにひどくゆっくりと映った。


 なんか僕、すっげぇ頭冴えてないか? 時間の流れが遅く感じる。これっていわゆる走馬灯……


「あっ」

 

 竹刀を振る葉山葵の体勢がぐらりと崩れた。どうやら生徒会室に入るときに壊した扉で躓いてしまったらしい。僕の顔面に向けられていた竹刀の軌道が大きく下に反れる。


 どぐちゃ。


 水気を含んだ何かが破裂したような音がきこえた。いったいどこから聞こえるのだろうと思っていたら、僕の股間からだった。


 僕が所有する二つのボールのうち、ひとつが無くなっていた。もう少し具体的にいえば僕の右の金玉がどこかに吹き飛んでいた。


「きゃああああああああああああああああああ!」


 その悲鳴をあげたのが僕なのか、葉山葵なのか、それとも月島さんだったのかは今となっては分からない。

 なぜなら金玉を失ったショックで僕は死んでしまったからだ。


 ***


 僕が前世の記憶を思い出したのは、一冊のエロ漫画がきっかけだった。


 ある日、クラスメイトの一人が授業中にエロ漫画を読んでいた。

 漫画は「生徒会長の権限を利用してエロいことすれば誰も文句言わんだろう」という、ラノベ作者でも苦笑いするであろうひどいタイトルで、そいつが「読んでみろよ」と言うのでちょっとだけ試し読みしてみることにしたのだ。

 

 漫画の内容はタイトルそのまんまで、エロしか頭にない生徒会長が女子生徒の相談に乗ると見せかけてひたすらエロいことをするという学園エロコメディものだった。

 いわゆる一話完結型で、話のオチは風紀委員の女子生徒が駆けつけて主人公を成敗するという流れがテンプレートのようだった。


 ほげちょろーんという間抜けな声をあげながら吹き飛ぶ主人公。

 いや現実世界なら絶対に死ぬだろというケガを負っても次の話ではピンピン、ビンビンとしている主人公。


 おっぱいを揉みしだいたり乳首を吸ったり下半身に手を入れたり……割りとヤバめのエロいことをしている割にやたらと女性キャラにモテる主人公。

 その世界において主人公の存在は唯一無二だった。

 どんなエロいことをしても許されていた。


 頭の中でパン、と何かが爆ぜた。

 次の瞬間、僕は前世の記憶のすべてを思い出した。


 ――そうか、僕は……!


 僕は理解した。

 前世において自分はエロ漫画の主人公だったこと。

 生まれ変わった今世においても同じく高校生をしていること。


「おい、立花。体調悪そうだけど大丈夫か? 顔色悪いぞ」


 立花薫。それが今世における僕の名だ。


「すいません……体調がすぐれないので保健室に行ってきます」


「そうか。でも一人だと心配だから保健委員も一緒に行ってくれ」


 はい、と言って女子生徒が立ち上がる。彼女は僕の席までやってくると「歩ける?」と心配そうに首を傾げた。「なんとか」と言って僕は彼女と共に教室の出口へと歩き出す。


「立花君ってさ……付き合ってる子とかいるの?」


 保健室へ向かっている途中、保健委員の女子がそんなことを聞いてきた。

 彼女の横顔を覗き込むとなぜか真っ赤だった。それを見て僕は察する。なるほど。彼女は僕に好意を寄せていたらしい。


 そういえば前世においてもまったく同じような展開があった。ちなみにそのときは階段の踊り場で全裸にしてスマホで撮影しまくったっけ。


 そんなことを考えていたら下半身の方がむくむくと脈打つのが分かった。何せ今世における僕、立花薫はいたって真面目な生徒なのだ。こんなことでは欲求不満になってしまっても致し方無い。


 それによく見るとこの女子生徒はなかなかの巨乳だ。見てはいけないと分かっていてもつい見てしまう。前世の僕だったらあいさつ代わりにおっぱいを揉んでいたに違いない。


「立花君……大丈夫? っていうか、ごめんね。こんな体調悪いときに変なこと聞いちゃって。今のは忘れてもらっていいから」


「いや、別に体調はもうよくなったから平気だよ」


「えっ、そうなの?」


 体調が悪いといったのは教室を抜け出すためだ。体調不良者にはもれなく保健委員が付き添う。そして我がクラスの保健委員は女子であることを僕はもちろん知っている。

 前世の記憶を思い出した僕は今、頭の中はエロでいっぱいだった。


「立花君……急にどうしたの? きゃっ」


 制服ごしに彼女の胸を揉みしだく。円をえがくようにゆっくりとこねるのがコツだ。


「そんな、リズミカルに揉まないで」


 彼女の上体が前のめりになったところですかさず背後に回り込り今度は後ろから胸を攻撃する。


「くりくりもだめぇ」


 ただし今度はおっぱいではなく乳首を攻撃対象とする。服の上からでも僕は正確に乳首をつまむことができる。


 舌先で彼女の首筋をなぞる。

 もちろんその間も乳首をくりくり攻めるのは忘れない。快感に耐えかねたのか、彼女の口から甘い吐息がもれる。


 調子に乗った僕は彼女の制服を強引に脱がす。ブラジャーをはぎとり、必死で抵抗する彼女の制止を振り切って最後の砦であるパンティーをも奪い取る。


 僕は制服の内ポケットからスマートフォンを取り出す。前世の記憶を思い出した記念として、せっかくだから原作再現をしておこうと思ったのだ。


 そしてそれが終わったあと、僕の固くなったそれを彼女の秘部に挿入する。


 ちなみに僕の前世における漫画「生徒会長の権限を利用してエロいことすれば誰も文句言わんだろう」は少年誌だった。そのため挿入シーンは存在しない。

 というかいろいろ規制があってそんなことはできない。しかし今世においてはややこしい規制は存在しない。したがって、僕は念願の童貞を卒業できるというわけだ。それに今世においては邪魔者「葉山薫」も存在しない。


 馬乗りの体勢で彼女の自由を奪い、ついに挿入――というタイミングで罵声が聞こえた。


「おいっ! おまえたち、こんなところで何やってるんだ!」


 声の主は学年主任だった。


「すぐに服を着て職員室に来なさい!」


「えっ? いや、これは彼女がしてほしいというからやったまでで……」


「そんなわけがないだろう! こんなに嫌がっているじゃないか。おまえ、自分が何をしたのか分かったいるのか!」


「原作再現です」


 学年主任の拳が僕の頭上に落ちる。


「ほげちぇろーん」


「何がほげちぇろーんだ! おまえふざけるのもいい加減にしろよ!」


「いや、僕はエロ漫画の主人公で……こうやってエロいことをするのがある意味仕事なんです!」


「もういい! 何もしゃべるな! とにかく服を着て職員室に来い!」


「先生、聞いてください! 僕は転生者なんです!」


「何が転生者だクソ野郎! 来い!」


 このあと僕は職員室で三時間にわたり説教されたあと、退学を命じられた。

 

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(修正版)短編集 エロ怖—世にも奇妙なエロ怖い話— sakusaku @sakusaku_3939_hayama

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