第8話  嫉妬

もう薄暗くなってから目が覚めた。手製のベッドの下に置いた靴を探りながら履いてプレハブから出、腐りかけた非常階段の手摺を触らぬ様に注意しながら階段を降りると、腹ごしらえとトイレへの欲求を体が訴える。1階の喫茶店に行くと、珍しく容子の方から話しかけてきた。             「きのうは綺麗な女の人とごはん食べてたんだって」 誰かに聞いたんだなとユウキはちょっとドキッとしたが

「まあね」 と素っ気無く答えた。

「彼女?」  と容子が聞いてきた。

「たまたま雀荘で一緒になっただけの人だよ」 というと

「雀荘で一緒になっただけでご飯は行かないでしょう?!」と彼女が言った。

”お前には関係ねえ“ と言うとしたがグッと堪え

「へへへ」 と笑って彼女を見ていると、こいつ焼いているんだろうかと思って試しに

「今晩ご飯でもどう?」 と言ってみた、すると

「いいわよ」 と帰ってきた。昨日とは違う中華料理店の名前を出すとそこでいいと言う。

「でも割り勘よ」といい、続けて

「あなたに借りは作りたくないから」とも言う。ユウキとは一線を弾きたいのだとも言った。

「そんな線なんて砂の上に弾いてるのと同じさ」 とユウキが言うと

「それ、どう言う意味なの?」と容子は不思議そうな顔を向けた。

「風が吹けば消えるって事さ」 

また更に不思議そうな顔を向けたが

「じゃあ、夜11時頃ここで」 と、どちらからともなく言い、チャーハンとコーヒーを頼み、食べ終わると勝負をしに、向かいの3階ヘ行くのだった。夜空には珍しく星がいくつか輝いていた。明日もいい事があればいいのにな〜と思いながらエレベーターのボタンを押した。

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