#101 お値段均一販売店

『型落ち商品販売店』という看板が目に入った。

 その日、忠雄ただおは当てもなく散歩に出ていた。風の向くまま、気の向くままに歩くのが趣味という、一風変わった男。

 そんな男──忠雄が目にしたのが『型落ち商品販売店』というもの。


「……なんだこの店?」


 外観は至って普通の店だった。

 特に買いたい物はないが、せっかく見つけた店だし入ってみることにした。

 店内はいろいろなものが売っていた。日用品、掃除用具、食器、クッション、園芸用具、工具、その他もろもろ。

 忠雄は「ここ何の店だ?」と思ってしまうほどに品揃えがある。

 圧倒されつつ、忠雄は店内を見て回る。手頃なお菓子や調味料まで置いてある。包丁などキッチンで使うものもだ。


「──は?」


 なんだこの店は、と驚きに変わる。

 値段だ。どの商品も値段が基本100円なのだ。高くても500円。しかしほぼ100円の値札のものが多い。

 なんだこれは。ここにある商品は全て100円だというのか?

 謎の高揚感。100円。たった一枚のコインでここにあるものが一つ買える。

 唖然としつつ、忠雄はおもむろに一品手に取ってみた。


「ん? これって──」


 手に取った商品に身に覚えがあった。

 それはとても有名なブランドの商品だったのだ。

 しかしそれは所謂型落ち。昔に発売され、今はこれよりももっと優れたものが発売されている。


「……もしかして、ここって宝の山?」


 瞬間、男の脳裏に悪魔が囁く。

 これを買って、フリマアプリで売ろう、と。

 ダメだと思いつつ、しかし悪魔の囁きに忠雄は堕ちてしまった。

 忠雄は店内を周り、型落ちのブランド品を手に取った商品を購入。早速フリマアプリで売ろうとして、その値段に別の意味で目を丸くした。


 値段は忠雄が思っている何倍もの下の値段だった。

 あたりまえだ。100円で、どこででも買えるのだから、今はもう価値なんてないのだ。

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