7.おみくじ
長い石階段を上がって、さらに並んで参拝した。
「脱帽、二礼二拍手一礼って書いてあるよ」
背の高い
あたしたちは並んで立ち、お賽銭を投げ入れた。二礼二拍手して、手を合わせて目を閉じる。頭の中が星のことでいっぱいで、自分でも何をお願いしていいのか分からなくなっていので、元気でいられることに感謝をして、一礼をして終わった。横を見ると、星がまだ真剣な顔をして手を合わせていた。
しばらくして目を開けた星と目が合う。
「やっと参拝出来たね」
「うん」
「長かった!」
「ほんと」
右の方から出ると、おみくじの箱が見えた。その向こうにお守りを売っているところもあった。
星が「おみくじをしよう」と言うので、いっしょにおみくじを引いた。どきどきしながらおみくじを開くと、
なんと、凶!
「星~ 凶だったよー」
「すげ、レア!」
「え?」
「初詣に凶引くなんて、逆にすげー確率じゃね?」
「えー、でもやだよー」
「内容、読んだ?」
「……あんま、読んでない」
「読んでみなよ。内容が大事だから」
「……うん」
和歌を読んで、そのあとも読む。……今はうまくいかない時期だけど、いずれうまくいく、というようなことが書いてあった。
「そんなに悪くないでしょ?」
「うん」
星はあたしのおみくじを覗き込んで、言った。
「……今は月の光が遮られているけれど、いずれ射すってあるね。いいじゃん。
いいことなんて、もう叶っちゃったよ。
あたしは言葉では返さずに、笑顔で応えた。
「お守り、買う?」
星が言い、いっしょに売り場の方へ行く。
「あ、かわいい!」
あたしは鳩のお守りに目が釘付けになった。「鳩鈴守」って書いてある。
「ほんとだ」
星も手に取る。
「あたしは金色のがいいな」
「オレは銀色かな――すみません」
星は巫女の恰好をしている売り場のひとを呼んだ。
「これ、ふたつください」
「お分けする袋はお付けしますか?」
「はい、お願いします」
あたしが何か言う前に星はお金を払い終え、あたしに「はい、美月の」とお守りをくれた。
「え? あの、お金……」
「いいのいいの、あげる」
「でも」
「ほら、美月、凶だったし!」
と星は笑う。
でも、凶でも内容はいいよ、いいことあるよって、もう言ってくれたよ。
「……ありがとう。……大事にする」
「うん――美月、見て」
星が指さす方を見ると、凶と大凶のおみくじを入れる箱があった。
「さっきの美月の今日のおみくじ、ここに入れればいいよ」
「ほんとだ!」
あたしのおみくじは箱に入れ、星のおみくじは少し行った先のところの紐に結んだ。
おみくじについてきた小さな打ち出の小槌は、鳩鈴守といっしょに今日の思い出に大切にしよう。星のは亀だったな。
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