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テーマ「甘い」「チョコ」


甘い身代わり

友人はチョコを買い溜めして何か作っている様子。何をしてるか聞いても「秘密」と言うだけで教えてくれない。翌日、友人の肌がチョコ色になっていた。どうしたか聞いてみると「自分の型を取ってチョコで分身を作った」だそうだ。友人は学校へ行かず部屋で惰眠を貪っていた。分身は学校の暖房で溶けた。


甘いも甘いも好きの内

「チョコが好きかい」聞けば彼女はもごもごと口を動かしたのち、ごくんと飲み込んで答えた。「好きよ。貴方と同じくらい」「僕が愛されているのか、チョコが愛されているのか」「そのどっちもよ」彼女はまたチョコレートを手にし包装をはぎ取り、咀嚼する。「ニキビができても知らないよ」「失礼な人」


甘い口

「甘いね」そっと触れた唇が離されたとき、彼女は呟いた。「いいのかしら、友達同士でこんなこと」「いいんだよ。キスの仕方が分からないって言ったのは君じゃないか」確かにそうだ。「もっと甘いキスをしようか」そう言って彼女はチョコレートを口に含む。この人は私を誑かしているんじゃないかしら。


誘惑に愛

ふと、甘い香りが鼻をついた。辿ってみると彼女の首筋から漂ってくるようだった。後ろからそっと抱きしめ、強く匂いを吸い込む。「チョコレートだ」「あたり」甘い甘い誘惑に思わずべろりと舌が伸びる。彼女は身を捩ってくすくすと笑った。「甘いね」せっかくのバレンタインだ。楽しませていただこう。


恋のクロノスタシス

とある喫茶店で、私はチョコレートの入ったコーヒーを飲んでいた。苦いけれど甘い、そんな味が私は好きだった。ドアベルが鳴り、一人の女性が入ってくる。彼女が歩くたび柔らかな髪が揺れる。顔だちは、普通。だけど目が離せない。彼女と目が合った瞬間、一秒が千年にも感じた。恋に落ちた瞬間だった。


恋味のチョコレート

時計の音が響く。時が経つごとに、口の中のチョコも蕩けていく。甘いものが好きだ。食べ物も、恋も。けれど失恋した。その体験は私の心を苦い思いで包み込む。「悲しい時には甘いものを食べるといいんだよ」そう言ってくれたのも彼だった。けれどいつもは甘いはずのチョコはどうしても塩辛い味がした。


眠れぬ夜の友

「眠れないの?」「うん」深夜二時。なんとなく眠れなくてぼうっとしていたら、マンションの隣に住む友人がベランダを伝って訪ねてきた。寒空の下、友人を招き入れてホットチョコを作る。「甘いね」ふふ、と友人は笑う。真夜中にこうしていると、誰にも知られない秘密を持っているような気がしてきた。


マシュマロほっぺにチョコレート

ふくふくとまろいほっぺたをつっつく。子供と言うのはなんて可愛らしいのか。つつけばそっぽを向き、追いかければ逃げる。そうしているうちに地面に突っ伏してしまった。これはしまったとポケットからチョコの包みを取り出して渡す。途端に機嫌を直して甘い菓子を頬張るその姿。またつつきたくなった。


味地獄

もそもそと食パンを口に含む。何の味もしない。口の中の水分がすべて持っていかれて、飲み込むのも一苦労だ。好きでこんなものを食べているんじゃない。ただもう、どんなものも味と言うものを感じなくなってきたのだ。あんなに甘かったチョコレートも。味がないなんて、こんなに悲しいことがあるのか。


幸せの味

「チョコ食べる?」聞けば彼は本から少しだけ視線を上げて、口を小さく開いた。私はその口に向かってチョコを差し伸べる。彼の口に吸い込まれていく、小さい茶色な塊。唇に指先が触れる。私は静かに手を自分のもとへと戻し、彼の唇に触れた指先でそっと自分の口をなぞった。「甘いね」彼は少し頷いた。



※覚書

https://kakuyomu.jp/users/kiyato/news/16818093094488230849

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