ピリオド。を越えていく彼女達と
あけち
第1話 道玄坂ファミリー
「ねぇ、バッタって食ったことある?」
そんな常人なら『頭大丈夫? 病院紹介しようか? かかりつけ医はどこ?』と心配と冗談の狭間で問答しそうになるセリフも俺はいつも通り優しい眼差しでこう言った。
「それが日常だったのか?」
「うん。まぁ、美味しくないけどね」
彼女の横顔は、どこか思い出したように悲しそうだった。
なんてことはなく『うぇ〜』っと思い出したのか艶やかな舌をチラッと出し口を大袈裟に開けていた。背景は燦然と春色に満ち満ちているにも関わらずミスマッチな光景。
「ぶん殴るぞ?」俺の温かみのあるジョークを真に受けて右手を握り拳にし、青筋を立てながら顔の位置まで掲げる。
周りには、今日からの新生活を胸に前を向いて歩く人たちが散見される。
これだけネットが発展し、衆人環視のSNSに拡散され暴力が起きにくい世の中になってはいる筈なのだが……どうやら目の前にいる人種には無効化のようだ。
俺は、身の危険を感じサッとブレザーのフラップポケットへ綺麗に詰め込むのを見かねてか彼女は拳を下ろしてくれた。
「入学早々、顔パンパンで登校したくないからな」
「前に寝ていて殴った時、一週間治るのかかったっけ。面白いから、また見たい」そう小学生の時の事を思い出し、口角を片方上げながら拳を振りかぶるため、ここで牽制をしておく。
「前にも言ったが、オレに次、危害を加えたらお前は野離しになるぞ? 義務教育は中学までだからな」牽制が聞いたのか契約を改めて振り返り、ぶらんと拳を下ろし、『チッ』と舌打ちを鳴らす。
怖い体験は慣れっこであるが、肝を冷やし『ふぅ〜』と肩を竦め、息を吐く。
そんな危なっかしい契約関係にある望を連れて、道玄坂高校の校舎へと徒歩で向かっていた。先日、入学式が終わり、今日から華やかな始業式が始まる。
通常の高校生であれば期待に胸が膨らみ春風と共に散る桜が心を高揚させるだろう。新しい出会い、青春の1ページを刻む学舎に自然と意識が取られるだろう。
だが、その場に留まっていた望はチラチラと舞う桜を見るなり猫みたく掴もうと必死になっている。薄いピンク色の桜の花びらはヒュルリとその魔の手を見事に逃れていく。
「おい、置いてくぞ!」振り返りながら言った言葉を聞くなり、望は眉間を顰めるも、今日だけは俺の言うことを聞く事になっている為、渋々こちらへ駆け寄ってくる。
望には、スカートじゃなくてパンツにしてもらって正解だったな。スカートだったら間違いなくショーツが丸見えだからな。
………にしても、顔立ちには荒々しさがなくなり角が取れたように感じる。それに性格や言動を一切消し去って見てみると『美少女JK現る!』とSNSで拡散され忽ち、女優として活躍する世界を思い描いてしまうほどに美少女だった。
身長に関してはそこまで高くはなく、俺より二十センチほど低い一五五センチ。
だからこそ、勿体無いな、と朧げに耽る。
隣へ戻ってくるので前へ向き直すと、桜の花びらがひらひらとオレの鼻に乗る。
「慶喜、顔脂っぽくてくっついてて〜うけるっ」何でも思った事を口に出してクスクスと笑い始めてムカつくがグッと堪える。
「もう着くから、大人しくしてろ」
「はいはーい」何も分かっていないのかオレの歩幅に合わせてゆっくりぐるぐると体を回しながら横に付いてくる。手は下斜め四五度へ伸ばしながら。
で、桜が彼女の柔らかな頬っぺたに当たるもすべすべしているのか綺麗に舞い落ちる。回っているため肩まで長く伸びた綺麗な黒髪がフワッと優しく宙に浮き、桜では無い良い匂いが鼻腔を擽る。
「……」望に気恥ずかしさを持ちつつも構うもんかと眼前に視線を戻すと、とうとう俺たちが今日から通う道玄坂高校の門へと辿り着く。
校門はレトロな煉瓦造りになっており『道玄坂高校』と縦書きで入口付近に埋め込まれている。視界を上へ向けると白と緑に配色された我が校がある。
通学路では、春色に染まっていたが、敷地内には桜は愚か梅の木すら生えておらず、夏と勘違いしてしまうほどに綺麗な緑の木が茂っていた。
その緑の生命力強さを和ませるような真っ白の校舎に初めて訪れた際、一瞬だが綺麗すぎて息を忘れたほどに美しい造形である。
敷地としては、小規模大学を優に収めるほどの広さを有し、五階建で聳えておりその圧巻さに時々雑誌にも掲載されている。
意識を其方に取られていたが、横にいる望は興味がないのか、違う事に意識を取られてた。
「ここの生徒、みんな品があってムカつくんだけど?」中へと進んでいく身なりがきちっとした生徒たちを睨みつけながらオレに問いかける。
確かに、男女問わずお淑やかな佇まいで優雅に歩いており、ゲラゲラと笑う人は人っ子いない。品性が歩き一つで分かるのは横に真反対な望がいるからだろうか。
「そりゃ〜、私立だし、温室育ちが多いからな。……だが、俺たちが通うクラスはこの人たちとは違うクラスだぞ?」それを入学式の時に知ったはずだし、前に色々と説明していたが、鼻くそをほじっていたからな。不安にはしていたけど、見事に聞いていなかったか。
そんな話を再度聞く耳を持たないのかズカズカと中へ入っていく。
自由奔放な奴の後を付いていくと、入学式で知り合った同じクラスの
櫻井さんは、綺麗なショートカットでふんわりしており、それが可愛らしい顔立ちを惹き立たせている。オレたちのクラスにしては希少な存在のお嬢様っぽい雰囲気を醸し出している。望よりふわっとしていてふんわっとしている……全体的に刺々しさがなくて大らかさがある。
「おはよう、櫻井さん」距離をスタスタと埋めて挨拶をする。
「おはようございます。明智君」俺の顔を見るなりコチラに微笑んでくる。
うむ、こんなお淑やかな女の子と仲良くなりたかったんだよ! オレは! と思うも前にいた望が『で、どこ?』と袖を引っ張って靴履きの方を聞いてくる。
「おはようございます。…道玄坂さん」こう名前を覚えている所とかも好感が高いんだよな。誰からも好かれるだろうし、誰もかも慈愛するような雰囲気を身に纏っている。
……これで裏の性格が本当は陰湿となれば益々芸術点が高くなるだろう……、まぁ、芸術は鑑賞する分にはいいが、実際に体験したら嫌だけど。
「ん? あんた誰?」櫻井さんの顔に近寄り、マジマジと見つめて挨拶も無しに名前を尋ねる。
ほらっ、二人って全然違う生物だろ?
「……
「えぇ〜そうだっけ? まぁ、いいや。櫻井よろしく」ぶっきらぼうに話を打ち切り他の生徒が歩む玄関へと向かっていく、自由奔放を体現する少女。
そんな光景に一瞬呆気に取られるも、オレは望を呼び止める。
「『あっ』」二人が同時に望へ話しかけようとするも同じく声が被ったので少し鼻でふっと笑う。
「…玄関が違うって言おうとした?」
「う、うん……被っちゃったね」ニッコリと笑う笑顔が俺の緊張を解してくれるほどに可愛いすぎた。
「……望! そっちじゃ無いぞ?」俺の言葉を聞くなりこっちにスタスタと戻ってくる。
「? 生徒達、あっち向かって歩いてんじゃん」もっともな事を言ってくるが俺たちの向かう玄関は校門から真っ直ぐにある玄関ではなく、右斜め前にポツンとある玄関なためそちらを指差す。
俺たちの玄関までの道すがらには細々とした石畳がある。それがあまりにも校舎の輝かしい雰囲気とは掛け離れていて思わず『ここが玄関?』と思うほど。
「は? 何あれ? 本当に玄関?」
櫻井さんはその言葉を聞いて少し顔色を曇らせる。自分達が他の生徒と違った状況にある事を今、再認識したからだろうか。
望は、その玄関の方へ『まっ、いっか』と口遊ながら早歩きで歩いていくのでオレたちもそれをゆっくりと追うも、後ろからヒソヒソと声が聞こえた。
『あっち向かうってまさか……』
『あの人だ。新入生代表の……』
『私たちとは住む世界が違うんだって……』
『道玄坂ファミリーって玄関違うんだ』
オレはそんな声が聞こえたので後ろを向くもそれを察知したのか皆前を向いていた。こうも初日から嫌な視線に晒されることになるとはな。まぁ、入学式も好奇な視線とは名ばかりの嘲笑を含んだ視線を感じていたけど。
「……明智君、いこっ」後ろに振り返っていたオレの袖をコチラを見ずに櫻井さんがぐいっと引っ張っていた。
「………あぁ」オレたちは、大勢の生徒とは違った薄暗い玄関の方へと歩を進めた。
全校生徒は、約三五十名。一学年一クラス四十名弱で三クラスある。
ここ道玄坂高校に入ってくる生徒は、ある程度裕福な家庭であることが多く、そのご家庭の両親のほとんどが一流大学出身で東証一部上場か外資系企業の幹部役員・社長や財閥であり、偏差値も言わずもがな県でトップクラスの学力を誇っている。
だけども全国で比べれば最難関とは言えず、箱入りの男女が入ってくるには丁度いいレベル感だと言える。
そんな優等生で秀才達とは一線を画した存在が、俺たち一年四組だ。
と、特段優れている訳でもない四組の生徒は、五名しかおらず、誰でも四組に入れるわけではない。
限られた人間だけが入ることができる……と言うより入らされると言った方が正しいか。そんな自虐を四組の教室札を見ながら思っていた。
「ねぇ、入って良いの?」目の前にいる望が首を器用に曲げながら聞いてくる。
「あぁ、もう時間も時間だしな」俺たち三人は中へと入っていく。
玄関はアレだったが教室は中学同様で特段変わり映えもしない。不潔だと感じる箇所もないし、逆にボンボン学校特有の無駄に高い天井でもなければ、大学の講堂のような壮観さもない。
ただただ、よくある教室。
その一室には一人の女子生徒しかいないようだ。
その生徒は、肩より伸びた艶やかな髪の毛、前髪は左に流して知性的な印象を受け、顔立ちも黄金比に沿って整っている。右耳を出しているのが艶っぽく同じ歳とは思えないほどに異性を強く感じてしまう。白のニットを中に着込んでおり、黒のニーソがそれをより際立たせる。
「おーい、お前も4組かぁ〜?」望は人懐っこく、その窓の外を見ている少女に話しかけにいく。手を体の斜め後ろにたらん垂らして、駆け寄っていて子供っぽい。
「頭が悪いのが移るから止めてもらえるかしら? 病原菌さん」どこから取り出したのか『対道玄坂用』と書いてあるスプレーの噴射ボタンに指をかける。望は、急に意味不明なスプレーを向けられ『うわぁ』っと声を出して後退る。
俺は近寄るなり、その清楚系少女に話しかけることとした。
「へぇ〜、そんな作ったのか? 俺も欲しいんだけど、いくらで売ってんだ?」
「なんで、あんたも欲しがってんのよっ!」お手本のような綺麗なツッコミを無視すると、間も無くして少女はオレの顔を見て話を紡ぐ。
「今なら、税込1000円! ネット通販で売っているわよ。ちなみに昨日から販売して1000個の売り上げを記録したわ。今も着実に伸びているみたい」スマホを操作しながら話している所を見るに、売上を見ているようだ。今度、オレもそのビジネスに一口乗らせてもらおう。
……と言っても嘘に決まっているのだが、目の前にいる望さんは本当のことだと思っているようで。
「どんだけっ、私のこと嫌いなやついんのよ!」窓辺にいる少女をガルルッと睨みつける。
「自覚がないのかしら? 入学式早々、新入生代表でふざけたあなたに皆恐怖しているのよ」入学式当日、オレは望と一緒に登校はしていなかった。と言うより望が事前に高校へ早く行っていたから。
で、その理由が新入生代表の挨拶であった。
今思えば当然のことであるが、前もって一言伝えて欲しかった。であれば、あのような大惨事にはならずに済んだだろう。
望はその中で唯一の頼みの綱である櫻井さんへ縋るように見つめた。
新入生だけで行った入学式会場を凍らせた様子を思い出した櫻井さんが言葉を紡ぐ。
「道玄坂さんのは…そうだね、独創的で……………………」
空いていた窓から風がヒューっとタイミング良くオレたちの間を横過ぎる。
「おいぃ、櫻井ぃ! 他には!?」もっと出せ! と言わんばかりに自分の体の方へ手を上下にし櫻井さんへ懇願している。
「えっっと………明智君、パス」何故か手のひらでボールを包んだモーションをし、俺に向けて『えぃっ』っとそれを投げてくる。オレは、乗った方が良いのかと思い、ボールを受け取ったポーズをする。
「えっと………うん、頑張ったな。望」俺は、空気のボールをヒョイっと望にパスを出した。
「いらねぇよっ!! こんなボール!!!!」空気のボールを下に勢いよく投げつける。
「あっ、ボールちゃん」何故か愛着を持っていた窓辺に棲む美少女は呟いた。
「あ、あんた大丈夫?」
「そっくりそのまま返してあげるわ、その言葉」挑発するように望へと視線を強くする。まぁ、そう言われてもおかしくない新入生代表の挨拶だった。新入生代表には、フォーマットに則ってやるのが通例だろう。
だが、望が行ったそれは、新入生に向けた___________威嚇だった。
『新入生で勉強ばっかやっている頭の悪いみんなぁ〜、おはようサン。ちなみに、今のおはようサンのサンは、太陽のSUNにかけてんだよな。頭の悪いお前らには分からないだろうけどな。あはははははっ。お金を持って、家族がいて、友達がいて、それで勉強をする? お前らどんだけ馬鹿なんだよ!! 勉強は弱者の特権なんだよ! お前らエリートの子供が勉強するから弱者は這い上がれないんだよ!! 勉強すんな!!! 馬鹿どもっ!!』という新入生代表は、まだ続くつもりだったらしいが、近くにいた先生方二名に引っ張られてイヤイヤどこかへ連行された。
『馬鹿なんだよ!!』のところで既に肩を掴まれていたが、その後は、マイクを掴みながら舞台袖まで引っ張られつつ罵声を発していた。
会場は、凍り切っていたが、オレだけ腹を抱え、口を抑えて笑っていた。おそらく、バレていないだろう。
「明智君、何笑っているの?」どうやら思い出し笑いをしていたようだ。
「す、すまない……それと今更だが、おはよう、
「望月さん、おはようございます」櫻井さんも綺麗な所作でぺこりとお辞儀する。
「おはよう、二人とも」俺と櫻井さんだけを見て挨拶する。だから、当然あいつが突っ掛かる。
「私に挨拶しなさいよっ!! .......てか、なんであんたも望なのよっ!!」彼女の顔に向けて、指を刺し、睨みつける。
「人に指を刺すなって言われなかったのかしら?」
「まだ刺してません〜〜刺す前ですぅ〜〜」なぜか物理的に指を刺す言葉だと思っているらしい。うむ、実に馬鹿なやつだ。
てか、本当に刺そうとしてるのね。
「名前が気に食わないなら、あなたの名前を変えたらどうかしら? そうね.........
「
「じゃあ、俺らは
「……良いわよそれで。
「あっ、うん。芹香………ちゃん」どうやらまだ少し恥ずかしいようで少し俯きながらそう言った。
「私は、あんたのこと
「好きにしなさい」二人の視線が交わり火花が散っている。どうやら、混ぜるな危険のようだ。
俺たちは、五人のはずだが、机と椅子の数が十脚ずつある。
教卓から見て縦に二、横に五脚といった配置の仕方だった。そこへテキトーに腰掛ける。と同時に、前の扉から教師っぽくない可愛らしい顔立ちの女性がやってくるが、この人が俺たち四組の担任である、
黒のサラッとしたスーツを羽織り、中には綺麗な青みがかったブラウスと純白のストレートパンツを履いている。そのスタイルの良さが十五、六歳の学生とは掛け離れており、大人の色気が溢れ出ていた。その立ち姿は、意識を制しておかないと見惚れてしまうほど。
また、程よく肩まで伸び、後ろ髪はハーフアップをしており、可愛さがアップしている。なんとも合法ロリっぽい顔立ちだな。と見ているとニッコリされるので女性特有の『おい、お前。変な妄想してないだろうな?』みたいな怖さを少し感じたのは気のせいだろうか?
「は〜い。おはようございますっ! みんな元気に来れたようで安心あんし………」教室を何度も何度も見渡すが、四人しかいないのに気づく。
「あれぇっ!! 徳橋さんは? 知っている人いる?」俺たちに問いかけるも誰も知らない。
「誰だよっ徳橋って」
その言葉を見計らったかのように前の扉から勢いよく登場すると共に活発な声が響き渡る。
「僕だよっ!
徳橋さんの髪型は、ショートウルフカット。髪上部を丸みを持たせて襟足をクイっと肩に僅かにかかり、両耳を軽く隠す。その丸みを帯びた感じとさっぱりしたスポーティーさが愛らしい顔立ちを引き立たせる。
そのほんのりとした吊り目の顔立ちと僕っ子が上手い具合に徳橋さんの性格を物語っているように感じる。
「お前遅刻だぞ! 廊下に立ってろ!」立ち上がりながら、廊下を指差す。
「……お前呼ばわりは失礼だなぁ〜って、僕は理事長と話していたんで遅れたんです。それにぎりぎりセーフでしょ?」と右手の人差し指を上へ向けるとチャイムが鳴る。今から朝の会が始まるチャイムだ。
……理事長と話をしていたか。ここの理事長は、雇われであることは明白だが、それが誰だとは知らない。もしかすると、徳橋家の人間なのだろうか。
「徳橋さん。おはようございます。さ、座ってね」
「おはようございます。伊能先生」そう争わせないように伝えた言葉を聞き、後ろで右から二番目にいたオレの右の席へと向かってくる。
ちなみに俺の左斜め前で一番ど真ん中に座っているのが望でその左に櫻井さん、その左後ろに芹香が座っている。当分の間は、この席が固定化されるだろうか。
「おはよう、慶喜君」座りながらこちらに顔を向けてるため前髪と横髪が頬にたらんと掛かって色っぽさが出ている。
「おはっ。徳橋さん」右手を軽く挙げてぎこちない愛想を振る。初対面ではないとはいえ、三年間を共にするクラスメイトだから少しでも親しみやすさをプラスさせておこう。
「いいよ、千明で」椅子に保たれ掛かって呼び方の変更を求めてくる。
「じゃあ、ち、千明」
「僕に照れてるのかな?」俺の目を覗き込んで自分の魅力を制御できていないふしだらな子。
「可愛い子に照れない男子がいないとは思えないが?」
「可愛いよりカッコイイって言われた方が嬉しい女子もいるって事を覚える良い機会になったね」その時にニッコリとした笑顔はやっぱり可愛かった。
「静かにしてね〜。では、早速みんないるようなので今日の簡単な日程を話します」どうやら出席確認と言う面倒なことはしないらしい。生徒は五人だから支障がないか。それに五人であれば伊能先生も生徒たちの名前と顔も既に一致しているだろうからな。
「今日から中学と同様に授業が始まります。高校レベルの授業内容でスピードは進学校ですので早いと思われますが、しっかり復習をすれば問題ないです」何故か他人行儀で話すのは俺たちの学力レベルを知ってのことだろう。
望以外の学力がどの程度のものかは知らないが、この高校の偏差値水準の学力は悠に超えているだろうからな。となると、やはり伊能先生は俺達の生活様式を理解していると思って差支えなさそうだな。まぁ、そうでなくては今後やり難いから非常に助かる。
「ちぇっ、いつまで勉強やらせんだよっ」日頃から勉強を嫌という程やらされてる望にとっては苦痛なことだろう。だが、教育機関に入学する以上高度の学習を続ける選択をしたに他ならない為仕方がない。とはいえ、望が高校に入りたいと自分から志願したとは考えられないが。
「道玄坂さんの学力であれば問題ないですよ。楽勝です!」真っ白な歯を見せるほど微笑み、両腕を胸の辺りでガッツポーズして鼓舞する。
「ふん、当然! 私は天才だからっ!! あははは」腕組みをし、少しだけ鼻が伸びたように見えた。伊能先生、この短時間で望の短絡的な行動パターンを読み解いてしっかりと扱い方をマスターしたようだ。
そして、伊能先生は緊張めいた目つきになり、ふぅーと深呼吸をし、『よし』と意気込み、話を再開する。
「これは、まだ伝えていませんでしたが、皆さんにはシェアハウスに入居してもらいます」
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