第11話「村化を考える」
雪山の化粧が徐々に薄くなってきた。
そろそろ初夏かもしれない。
気温も段々と暖かくなってきたから、多分夏はあるのだろう。
そう言えば、この場所の名前が決まった。
ラミオ村。
それがダンジョンの名前だ。
村と言うにはまだ程遠いが、人を集めるなら名前があった方が良いと、みんなで決めた。
ラクト、ミャル、乙女団。
それぞれの頭文字を取ってラミオ。
乙女団は最近結成した俺の親衛隊らしい。
団長は武闘派のヤナ。
副団長はラン。
参謀長はアイ。
斥候長はリサ。
それぞれ役割があるみたい。
ま、遊びの延長みたいなものだろう。
ダンジョンの村化にあたって、俺の正体やダンジョンについてを子供達とミャルに打ち明けた。
驚かれると思ったが、反応はそこまで大きくなかった。
「ラクト様はラクト様です。何者だろうと、私は諦めませんから!」
ランよ、君は一体何に挑戦しているんだ。
「そうそう、逆にラー様が凄い人だって分かって、余計に燃えてきました」
アイは何かに燃えているみたいだ。
「遊んでくれるならなんでも良い! ご主人様好き!」
リサは予想通りの反応だった。
「我は殿をお守りするだけ」
おい、ここで刀を抜こうとするな。
ヤナは最近俺を殿と呼ぶ。
まじで漫画没収しようかな……。
他の子供達も俺を呼ぶ時に個性が出てきた。
ランはラクト様のまま。
アイはラー様。
俺はどこぞの神か。
リサはご主人様。
ミャルよりペット感が強くなってきた。
村をどういう風に広げていくかみんなで話し合った。
受け入れる優先順位も決めた。
①子供
②女性
③家族連れの男性
危険度が低い順だ。
独身の男性は特別な事情がない限り、受け入れしない方針となった。
まあ、子供達が襲われる危険もあるしね。
今の子供達なら暴漢なんてやっつけてしまうだろうけど、念には念を入れてね。
今の所村に必要な人材は大工、教師、商人。
大工と商人は子供達の要望だ。
村にするなら俺がなんでも与えてしまうのは良くないと言われた。
自分達で生活が出来ないと、いざという時に崩壊する。
確かにその通りだと思った。
うちの子供達は賢いな~。
大工がいれば新しく入村してくる人達の家を建てて貰える。
商人は村人が必要とする物資を調達してくれるので必要みたいだ。
教師は俺の要望。
子供達にはもっと知識をつけて欲しい。
一応、他の子供達が来た時の事も考えてだ。
知識があれば人生を有利に過ごせる。
ここで育った子供達には、立派になって欲しい。
良い先生を見つけて来ないと。
村人が食べる食糧は、ダンジョン内の畑で育てれば良い。
肉は食べられる魔物を狩って貰ったり、獲物が少ない時は俺が分けても良い。
野菜や果物は、ダンジョン内なら育ちもかなり早く、季節に左右されないので収穫も期待出来る。
ここで疑問が生まれた。
ダンジョン外から持ってきた種を育てると、外に持ち出せるのか?
育ちは同じスピードなのか?
この疑問を解決するなら、外で何かしらの種を手に入れる必要がある。
手が空いたら見つけに行ってみるか。
最初に目指す村の形は、農業で生計を立てる農村か。
はたまた温泉やここでしか味わえない娯楽を提供する観光地か。
今思いついているのはこの二つ。
他にも候補があれば選択肢に加え、じっくり決めれば良いだろう。
ある程度考えが纏まった所でピクニックをする道作りに出発だ。
進捗率は40%といったところ。
最初は中々捗らなかったが、日を追おう毎に効率が上がってきた。
風魔法で木を切り倒し、土魔法で地面を均す。
切った木はもったいないのでダンジョンで保管している。
お陰で少し拡張を余儀なくされた。
それでも置ききれない木は、元奴隷村の空き地に仮置きしている。
いつか来る村人達の家の材料に使えれば良いのだが……。
今日も中々に疲れた。
スローライフのつもりが、結構な労働をしている。
でも生活のためじゃなく娯楽のためだしな。
これも労働と言うのだろうか?
まあ、肉体労働の後は飯が美味い。
ビールも進む。
あまり飲み過ぎると子供達が怒る。
飲んで寝てしまうからつまらないのかも。
ほろ酔い加減でいつも止められるのだ。
「判断力が鈍るほろ酔いが一番良いと小説に書いてありました」
「そうね。後はどう攻めるか」
「中々の強敵よの」
「ねえねえ、なんの話?」
リサに同感。
一体なんの話だ?
今日の添い寝当番はラン。
「なんか暑いですね……」
「そうか?」
俺はちょうど良いが、子供は体温が高いと聞くしな。
「脱いじゃおっかな~! チラチラ」
「脱いでも良いが、風邪引くなよ~」
「も~! ラクト様のわからず屋!」
何故か怒っているラン。
良く分からんが、体をトントンしながら頭を撫でてやったら寝てしまった。
こういう所は、まだまだ子供だな~。
気持ちがほっこりした所で俺も寝よう。
翌朝。
叩き起こされた。
「今日の朝食当番は私とラクト様なので早く起きて下さい!」
最近は子供達も料理が出来るようになってきた。
といっても、あまり工程が複雑ではない簡単なもの。
「スクランブルエッグと目玉焼きどっちが良いですか?」
「うーん、今日は目玉焼きの気分かな」
「分かりました。ラクト様はアイが食べるサラダをお願いします」
手際が良い。
将来良いお嫁さんになりそうだ。
「なにニヤけてるんですか?」
「いや、ラナの将来の旦那様は良い奥さんを貰えて良いな~、って」
「そ、そ、そ、そんな事急に言われても!」
「お、おい、殻が入ったぞ……」
なんだ急に慌てて。
多感な時期に変な事を言ってしまったか?
セクハラ親父と罵られないよう自重だ。
「みんな朝ご飯だぞ~!」
「あら、今日の採れたて野菜も新鮮で美味しそうね」
「ウインナー! ベーコン!」
「うむ、朝は味噌汁の香りに限る」
今日も何気ない幸せの朝がやってきた。
楽しそうに笑う子供達の幸せを、これからもずっと与えていけるように頑張ろう。
「朝ご飯を食べたら訓練だぞ~」
「頑張ります!」
「今日も私の魔導をお見せ致しましょう」
「僕、頑張る!」
「殿に新たな型をお見せしなくては」
本当に、可愛い子供達だ。
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