第5話 メイちゃん…
私たちは扇風機の回収に失敗してから、どうにかこうにか普段の部屋に戻ってくつろいでいると、外に出ていたヒナちゃんとユノちゃんが帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえりー」
私とタエちゃんがそう返すと、二人は部屋の中へ入ってくる。
そんな二人をベッドの上に溶けるように寝転がっていたメイちゃんが「
…言動はふにゃふにゃとしているのに表情だけは何やら悟ったような表情だ。
そんなメイちゃんの様子に二人は首をかしげる。
ユノちゃんが「メイちゃん? どしたの」と問いかけるが、メイちゃんは相変わらず悟ったような表情で黙っている。
…よくよく見てみると、表情もだんだん脱力してきてる。
そんなメイちゃんの代わりに私とたランプで遊んでいたタエちゃんが「マキが水没させた扇風機が回収できなかったんだよ」と答える。
それにユノちゃんが、「倉庫のほうは確認したの? 昔のがあるかもよ」と返す。
ユノちゃんの言葉を聞いたメイちゃんは、ハッとした様子で、まるで久々に水を得た植物のようににょきにょきと起き上がり、「確認してくる」とだけ言ってビルとは反対側の通路へと走って行ってしまった。
メイちゃんの姿が見えなくなってから、私はすぐ横のいろいろな場所の鍵がかけられている木のボードを横目で確認する。
するとそこには『倉庫』と書かれた板と一緒にひもで結ばれた鍵が掛かってた。
私はそれを確認して、ため息をつきながら立ち上がり、その鍵を手に取る。
ちょうど鍵をとった瞬間、ドタドタという音とともに再び部屋の扉がバタンと開き、熱気がそこからあふれ出す。
扉のほうを確認するとそこには膝に手をついて行きも絶え絶えに汗でびっしょりと濡れたメイちゃんがいた。
「っかぎぃ」
彼女はまるでゾンビのうめき声のようにそうつぶやく。
そんな彼女へ私は鍵をホイと投げる。
勢いよく飛んで行った鍵をキャッチした彼女は若干痛そうにしつつも、「ありがとう」と感謝の言葉を残して、またすぐに扉を閉めた。
扉の奥で少しずつ小さくなっていくドタドタという音を聞ききながら、私はため息をついて席に戻ると、タエちゃんのとトランプゲームに戻るのだった。
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