第55話勉強と魔法具

「はい、ここだよ」

「失礼します〜…」

ルイが扉を開き部屋の中へと促すとリリアンナは一度軽く頭を下げて部屋へと入る。

ルイの部屋は広いながらも物は少なく、ベッドとクローゼット、勉強する為の机が置いてあるだけで質素な部屋というのがリリアンナの感想だ。

そういえばルイの部屋に入るのは幼い頃以来だとリリアンナは思いながらルイに勉強机に座る様に言われ、席に着く。

「ワーク本は持ってきた?」

「もちろん!出来るところはちゃんとやってきたよ!」

そう言ってリリアンナは机の上にワーク本を置く。ルイがそれを開くとふふっと小さく笑った。

「ちゃんと一人でやったんだね、偉いよリリー」

「ふふーん!そうでしょう?…でもやっぱり解らないところの方が多いから教えて欲しいな?」

そう言ってリリアンナが両手を合わせてお願いするとルイは当然の様に頷いた。

「もちろん、その為に今日は勉強会を開いたんだから」


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「それで、ここはさっきの問題と照らし合わせると…」

「……あぁ!なるほど!そういうことね!」

ルイの詳しくわかりやすい説明のおかげで分厚いワーク本を一ページ、一ページと文字で埋めつくしていく。ルイはほとんど終わらせているのか、ワーク本の丸つけ確認をしていた。

「これなら夏休み最終日に徹夜しなくて済むかも…」

「このお泊まり会でワーク本全部終わらせる気でいるからね?」

当然の様にそう言うルイにリリアンナは一度たじろぎながらもこくりと頷いた。

ルイがいれば大抵の難しい問題も解ける様な気がした。 ふと、額に滲む汗を拭くとルイが聞く。

「もしかしてまだ暑い?冷却器もう少し下げる?」

「大丈夫…て、言いたい所だけどお願いしてもいいかな?」

リリアンナが申し訳なさそうに言うとルイは笑っていいよと言った。部屋の隅にある魔法具、冷却器に近付いて、ルイは唱える。

「アイス」

ルイの言葉に反応する様に冷却器は温度を下げる為に稼働する。その様子を見ていたリリアンナは思った。

魔法具というのは、基本的にかなり高価な物で普通に手に入れるのは難しい。だが、ルイの家にはたくさんの魔法具である冷却器が置かれており、ルイの部屋専用の冷却器があるのはそれだけルイの家はお金持ち、という事がわかる。

「どうしたの?」

そんな事を考えているとルイは首を傾げながらリリアンナの元へ戻る。リリアンナは素直に思っていた事を口にした。

「いや…魔法具って高いのにルイの家にはたくさんあるなぁって」

「あぁ、父さんが魔法具を作る仕事してるからね、よく家に研究段階の魔法具を持って帰っては自慢してるよ」

そう言ってルイは少し苦笑する。

ルイの父親、ルートはリリアンナの父親であるアリスの仕事上の上司だ。ルートとアリスの仲は決して良好ではなく、一方的にルートがアリスを嫌っているのだが…アリスはそれを気にする事なく仕事を続けている。

魔法具についてはリリアンナもアリスからよく聞いている。今日はこんな魔法具を作った、研究中にこんな事があった…等、楽しそうに仕事の話をするアリスをリリアンナは誇らしく思っている。

リリアンナの家に高価な魔法具が置いてあるのもアリスが仕事で優秀な働きをして研究段階とはいえ、魔法具を使っていいという周りの判断の元、無償で魔法具を譲り受けているからだ。

夏も間近の頃、魔法具である冷却器を持って帰ってきたアリスにリリアンナはそれは嬉しそうな顔でお父さんありがとう。なんて言ったものだ。

「じゃあ涼しくなってきたし、また勉強再開しよっか」

「うん!勉強頑張るぞー!」

リリアンナがふん!とやる気をみせるとルイは笑いながらまたリリアンナの隣に座って勉強を教え始めた。

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ジャンク・マジック ちまねちよ @tomorshyu

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