桜舞い散る琵琶湖で繰り広げられる、過去と現在が交錯する本格ミステリー!
- ★★★ Excellent!!!
琵琶湖を舞台にした本格ミステリー。
湖上警察署という珍しい設定が物語に独特の彩りを添えている。
桜の名所で次々と起こる連続殺人事件を、湖上警察の佐川刑事が追うストーリーは、春の琵琶湖を知り尽くしているかのよう。
特に印象的なのは、現在の事件と11年前の過去が巧妙に絡み合う構成。高校の軽音楽部を舞台にした悲劇が、時を経て現在の連続殺人に発展していく展開は、読者を最後まで釘付けにする。
静岡県警から派遣された山形警部補との捜査コンビも絶妙で、二人の掛け合いが物語にリズムを生んでいる。
桜という季節感と琵琶湖の美しい自然描写が、残酷な殺人事件と対照的に描かれ、独特の美しさと恐ろしさを演出している。地域密着型ミステリーの新たな可能性を感じさせる小説。最後まで真犯人が読めない巧妙なトリックと、人間ドラマの深さが見事に融合しており、読み応え十分。