2030年、世界各地に突如として全長3000メートルを超える巨大樹が出現する。CO₂を吸いすぎた結果、地球は寒冷化に向かい、人類は「樹を消せ」と躍起になるという発想がまず痛快だ。環境保護を逆から見た、アンチテーゼとしてのSFである。
プロローグの冒頭から文体が映画的で、銃・剣・ハルバード・対戦車ロケット砲が混在する謎の軍勢が雪原を進む光景は絵として強烈。北欧神話の九つの世界を模した命名(スヴァルトアールヴヘイムなど)で巨大樹に異界の格を与え、さらにダンジョンが絡むことで現代ファンタジーとしての間口も広い。
ラジオ・K氏の他の短編と比べると、こちらは物語の密度と情報量が段違いで、「いくつもの歌を同時に歌おうとしている」野心が伝わってくる。習作と銘打ちながら、世界観の土台はしっかり組まれていて、続きを読みたくなる力がある。更新が止まっているのが惜しい一作。巨大生物×SF×北欧神話が好きな人には特におすすめ。