第17話 倒れるサボテン

一人ぼっちで取り残された葉菜子はドアを開けて外を見た


外にはこんもりとしたサボテンがいっぱいあった

そこらじゅうにある

よく見たら人だ


みんな、こんな所に居たの?

道路だよ

危ない


何人もの人が、頭を抱えてしゃがんでいる


猪瀬さん、渡辺さん、あと何人かがさっきまで居た気がする


みんな外に出てたのね


何をやっているの?

貧血なの?


なんとも言えぬ負のオーラを背負った人影の後ろに立った

「あなたは猪瀬さんでしょ。どうしたの」

反応が無い


後ろから肩に手で触れ、顔を覗き込む体勢で優しく左右に振った

「大丈夫?」

意識があるのに、反応が無い

顔を上げる

「みんなどうしたの?話せる人は居る?話せる人は手を挙げて?」

ちょっと乱暴にいくしかない、気後れしていてもしょうがない


なんとも言えない高揚感が湧き上がってきた

赤池葉菜子の姿がブレ出し、顔色が変わってきた

 猪瀬らしき人物の肩を後ろから両手で掴み、激しく左右に振った

「なんなの?気持ち悪いの? 救急車を呼ぶ?」

顔を上げさせて、両手の掌底で投げ下ろし気味の往復ビンタをした


猪瀬は崩れ落ちた

地面に倒れ、いごいご動いている

「気色が悪い」

心に収めるべき言葉が、口から出てしまった


遠くに一人の男が見えた

歩いて来る

風間だ

この男のシルエットははっきり認識できる

相変わらずキザだ

早足で歩いて来た。姿はどんどん大きくなり、真正面で止まった


風間は冷静な口調で発した

" どうやら、無事か "

頭の中に響いている気もする

こいつ、しがない営業マンのクセに、いつの間にこんな力を得たの・・・


顔を傾けるキザな仕草

意識と記憶はちゃんとしてるかと、

偉そうに言ってくる


無言でうなづく


 それは良かった、ご機嫌も麗しい様ですね、表情を見れば分かる

猪瀬さんはそのざまだが、彼に何かしたのか?

「いや、別に・・・きっと何か悪いものでも食べたんだと思うわ」


 俺は今、連絡を受けてた

山梨県折門集落より、数十本の光の柱が立ち上がって人がおかしくなっているんだ


世界レベルでも大変だ

そう言うと、更に真面目な目線になった

視線を下げると、何故か指をパチンと鳴らした


しばらく待ったが、何の意味も無かった


こんな時に不謹慎な男





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