第39話

 気を失っている杉崎を背負うと、トンネルを急いで抜けようとした。

 なんだかんだで、ようやく下山した俺たちは、恵さんの屋敷へとダッシュで向かう。


 だって、杉崎の家を知らないからだ。


「うぎっ、雨ーー?」

「ほにー?」


 そういえば、今日は天気予報でにわか雨が時々降るんだった。

 激しい雨音が降り出した。

 

 幸いに登山道具一式の中には、折り畳み式の傘とレインウェアがある。

 大雨の中で、時折稲光が辺りを覆う。

 俺たちはずぶ濡れになりながら、書統学校まで走って来ると、下校途中の公平が恵さんの屋敷へと走っていた。大方、また親父さんと喧嘩でもしたのだろう。


「なあ、公平ー! また親父さんと喧嘩かー?」

「ああ! 影洋か?! 進路なんてそんな急に決められないぜー。それより、杉崎を負ぶっているけど、なんかあったんかー?」

「ああ……後で話すよー」

「おにいちゃーーん! 空が!!」

「うぎっ!!」

 

 走りながら公平と話していると、暗黒の大空に広大な稲妻が迸った。

 と、突然。

 俺たちの目の前が強烈に光りだした。

 その光に包まこまれると。


 光の中から女神様が現れた。


「影洋! もう仲間を見つけたのですね! 良かった……もうすぐこの世界も終わりを告げます。早く影の王国を打ち倒すのです!」


 それだけ言うと、女神様は忽然と消えた。


「な、なんだ? 今の?」

「ええい、恵さんの屋敷に行ったら全てを話すよ!!」

「おにいちゃん! 私も影の王国と戦うよ!!」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る