手放した本は二度と手に入らないと思え

 断捨離や片付けの方法でよく言われるのが、「読まない本は捨てる。読みたくなったらそのときに買えばよい」と言うものだ。


 私はこの方法が一番納得がいかない。はじめから納得いかない話をするのもいかがなものかと自分でも思うが、ちゃぶ台をひっくり返したくなるくらい反発したくなる。


 本というのは、すぐに絶版になる。ベストセラーの本や漫画はともかく、再び買おうと思ったときには買えない可能性が高い。


 もちろん、今は電子書籍の時代なので、電子媒体では存在するかもしれない。しかし、こちらとしては本は紙派。そもそも、形あるものを所有して満足する人種。電子で欲は満たせない。


 そんなだからものが減らないのだ、という声が聞こえる。その通りだ。けれど電子派だって確認したほうがよい。作家の意向か、出版社側の問題か、電子化されていない本もある。


 そもそも読みたくなったら買えばいいから捨てなさい、というのは、ずっと読んでいないのだから捨てたところで読みたくなることはなく、買い直すこともない、という教えなのだろう。実際、たしかにほとんどの本は手放して困ることはないと思う。


 しかしかつて私は、一度手放した漫画が読みたくなり、持っているという友人に借りて読み、その後文庫版で買い直したことがある。文庫版になるような漫画だったからそうすることができたが、古本屋やネットで探し求めるしかない本というのも数多くある。


 そして厄介なのは、手放したけど必要じゃなかったという経験よりも、そうした「やはり手放さなければよかった」という経験のほうが圧倒的に記憶に残るということだ。


 買い直したり、そこまでではなくても手放さなければよかった、読み返したい、と思う本はたしかにある。たとえそれが百冊に一冊だったとしても、後悔のほうが記憶に残るせいで、ますます躊躇を覚えるようになるのだ。


 それでもやはり、本を置くスペースは有限で、本を読む時間もまた有限だ。限りある中で手放そうか悩むというのも、なんとももったいないことである。


 そこで本を減らそう、と思うのだが、私のような思いきりの悪い人間は、「ええい捨ててしまえ!」というふうには残念ながらならない。それでもちまちまと、本を減らしてきた。


 手放してもよいかな、とすっと思う本もある一方で、手放す本候補にあがっては立ち消えていくものも多々ある。


 私が躊躇する本には、次のようなものたちだ。


1.本棚にあると格があがる(と思っている)本

2.好きな作家・漫画家の本

3.好きだった本

4.絶版になっている本

5.思い出のある本


 こうした要素が一つのものもあれば、複数組み合わさっていることもある。それらの中で手放した本、躊躇している本、残している本を紹介していきたい。


 その前に、まずは比較的手放しやすいものをあげてみようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る