第2章

第1話

その日は結局、涼那ちゃんにも、嶺奈ちゃんにも会うことはなかった。


「ゆーち、どうしたんだろうね」

「分かんない。でも、学校休んでるみたいだから、何かはあったのかも」

「まさか、事故……?」

「まさか。大会前で体調管理とか徹底してるだろうし、そんなことないと思うよ」


とは言っても、これは私の憶測でしかない。実際に何があったのかは、本人にしか分からないんだから。


「ゆーちに連絡してみる?」

「ううん。私は良いかも。ただの思い過ごしかもしれないし、単純にちょっと体調が悪いだけなのかもしれない。もしなんかあったら、連絡しない涼那ちゃんじゃないと思うし」

「……待ち、かぁ」


随分と不安そうだ。もちろん、涼那ちゃんの身に何かが起きているのならばそれは心配だし、気にもなるけど、下手に突っ込んで隠されるほど、嫌なことはない。


「また明日ね。なっちゃんも心配しすぎないでね!」

「ブーメラン飛んでるよ。お互い様じゃない?」

「そりゃそうでしょ!でもゆーちなら連絡してくれるって信じてるから。待ってなきゃね。また明日!」

「うん。また明日」


私たちはそれぞれの帰路に就いた。


──────────────────────────────────────


その夜。


夕飯も食べ終え、部屋でまったりしていると、スマホに1件のメール通知が来た。


『from: YukISuZu

やぁやぁ諸君

今日1日学校行ってないから心配かけたかな?

ちょっと週末の部活でやらかしちゃってさ。手術も必要かもしれないからしばらく学校行けないかも

連絡遅くなっちゃってごめんね』


「……涼那ちゃん…」


その文面を見た途端、不安と心配で涙があふれそうになったけれど、なんとかこらえてメールを打った。


『大丈夫

ゆっくり休んでしっかり怪我直してね』


それだけ送ってから、私はベッドに横たわった。


「……涼那ちゃんもだけど、嶺奈ちゃんも心配だな…」


私のその呟きは、静かに部屋の空気に溶けていった。

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