第5話

翌日の昼。


いつも通りに3人でご飯を食べていると、涼那ちゃんが急に言ってきた。


「そうだ。ねぇなっちゃん。阿納さん、どうだった?」

「どうって?」

「良い子そう?」


阿納さん。おそらくは嶺奈ちゃんのことを言っているのだろう。


「悪い子ではないと思うよ。私もしっかり関わったわけじゃないけどね。というか、どこで知ったの?」

「いや、ねぇ」

「ゆーちが盗み見とは珍しい」


あれ見られてたんだ。


「たまたまだよ。図書室にちょっと用事あってさ。そしたら2人が喋ってるところが見えたから」

「まぁ、さっきも言ったけど、特別変な子ではないよ。会話のテンポは独特かもしれないけど、別に気にならないし」

「ほへぇ。なんだか不思議な子だねぇ」

「まぁ、独特な雰囲気な子ではあると思うよ」


それがこれから付き合いたくないことの理由付けにはならないけれど。


「なっちゃんがその子ともっと仲良くなったら私たちにも紹介してほしいな」

「もちろん」


私は首を縦に振った。


──────────────────────────────────────


「ゆーち。今日部活は?」

「あったらここにいないよ」


放課後、私は2人と駅付近の喫茶店にいた。


「まぁ、なっちゃんと阿納さんが接近してたのは驚いたけど。それ以外は別に日常、っていう感じかな」

「ちょっと含みのある言い方するね涼那ちゃん…」

「まぁしょうがないんじゃない?私もちょっと驚きだったし」

「うそぉ」

「なっちゃんがこの3人の関係性に1番安心感覚えてそうだったから正直始業式の時の発言からして私はびっくりだったよ」


そうなのか…。まぁそりゃ、ある程度の安心感は持ってたけど、でも、始業式の時の気持ちも嘘じゃないし。そういう意味で言えば、嶺奈ちゃんとちょっとずつではあるけど、関わりが持てたのは嬉しいことだと思う。


「ゆーちもそろそろ新人大会で忙しそうだし、変わってないのは私だけかぁ。この際彼氏とか作ってみようかな」

「それだけはやめたほうが良いと思う。おうちゃんは学業に専念するのが第一だと思うな」

「酷いよゆーち!」

「聞こえませ~ん。去年の学年末で下から数えた方が早かった人に言われたくな~い」

「めっちゃ深々とナイフ刺してくるじゃん!そろそろ泣くよ!?」

「まぁまぁ。明日から土日だし、その間にちょっと勉強したら?」

「涼那ちゃんは?」

「部活。大会前だし、仕方ないね」

「そっか…。頑張ってね」


その言葉に、涼那ちゃんは力強く首肯した。

多分、この調子なら大丈夫だ。あとは良い結果が残るように頑張ってもらうほかない。


そう思いながら見る窓の外には、静かな夕暮れが輝いていた。

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