第2話

青年を交番まで送り届けた後、無事登校時間に間に合うように学校についた私たちの前にあるのは、新しいクラスを告知する掲示。


「これ見づらくない?」

「これくらいだったら別に…。あ、あった」


今年は3組か。……桜花ちゃんは同じで、涼那ちゃんは違うクラスか。


「やったね。なっちゃんと同じクラスだ」

「ほんとだ~。いいな~」

「別にクラス違っても休み時間ごとにこっちのクラス来るくせによく言うよ」

「へへっ。バレた?」


でしょうね。どれだけこの3人で行動したと思ってるんだか。


「今年はもうちょっと周りも巻き込みたいねぇ」

「それな!3人だとできることも限界あるしね~」


この3人で動くことが多すぎて、他の人が絡みづらいみたいなこともあると思うし、それは結構いいアイデアだとは思う。ただ、絡みたがる人がいるかどうかは別問題な気がするけど。


「まぁ、クラス行ってみますか。ゆーちはまた後でね」

「あいよ~」


いざ教室へ向かうと、すでにほとんどの人が揃っていた。みんなクラス内の空気感を探り合っている様子だ。

とは言いつつも、まだ空席もあるし、自己紹介も明日か明後日だろうし、まだ気楽だ。


「じゃ、また後でね」

「うん」


桜花ちゃんとも別れてお互いに自分の席に着いた後、新年度が始まったとき独特の喧騒を肌で感じながら、私は本を開いた。


少しの安らぎに浸っていると、いつの間にかチャイムが鳴った。


あくびの出るような始業式や、なあなあな雰囲気のホームルームも終え、今日の予定が終了した。


「………………ということで、今日はここまで。また明日元気に登校してくださいね」


今日は終わり。ということで…


「なっちゃんなっちゃん!どっか行こうよ!」


こうなるわけである。

相変わらずなご様子だ。しかし、私にも自由はある。


「私はちょっと寄る所あるかな」

「図書室でしょ」


即答である。いやはや私への関心が相当高いようで。


「そういうこと。だからどこか行くのはまた今度かなぁ。お小遣いも余裕ないし」

「そっかぁ。じゃあしょうがないね。私は帰るよ!また明日!」

「うん。またね」


そう残して桜花ちゃんは帰宅。涼那ちゃんは始業式の日から部活のミーティングがあるらしいのでそっちに行っているだろう。


私は一人、図書室へと向かった。


──────────────────────────────────────


いつもの静かな雰囲気を保ったままの図書室は、始業式ということもあってか、やけに人が少なかった。


司書さんのパソコンのキーボードを叩く静かな音だけが今日はなぜかはっきりと聞こえる。


私はカバンを少し抱えなおして、目的の場所に向かう。しかし、なんとなくの違和感はずっと拭えないままだった。


「…?」


私はわずかな違和感を抱えながら、いつもの新刊が並べられている本棚に手をのばそうとすると、本棚越しの景色の中に人影が映った。


「……」


随分と熱心な様子だ。しかし、私は彼女を知らない。

気を取り直した私は目的の本を手に取って彼女とお互いの視野に入らない席に座った。

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