『生徒』と『先生』の新しい関係を求めよ①
学園都市の入り口に俺とセレナが行くと、既に4人のベレッタの生徒たちが
その中の一人、桃色のおさげの少女は俺たちに気づいてこちらに走ってくると、俺とセレナにぺこーっと元気よく頭を下げた。
「今日はよろしくお願いします! 連合生徒会さん!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
彼女はセレナに挨拶を返されると、頭を上げてにこっと人懐っこい笑顔を浮かべる。
「ベレッタマギアスクール二年生のエルシア・セブンスさんですね。今日の団体のリーダーは貴方だと伺っています」
「うひゃ~、連合生徒会長さんに覚えてもらっているなんて光栄です!」
エルシアは手をぶんぶんと振っていたが、ふとセレナの横にいる俺の存在に気付くと目を輝かせ、ずいっと俺に一歩近寄った。
「あ! あなたエルビスに来たっていう新任の先生ですよね!」
「へえ、俺を知ってるのか?」
まだエルビス学院の中でも俺の顔を知らない子もいるのに。
なんというか、ちょっと嬉しいな。
「はい! だって報道委員会の新聞で『新任の先生は非魔導師! ユフィール学長のコネで入ったド級のエリートヒモ!』って書いてあったのを読みましたから!」
「今すぐその情報を忘れて君はもう二度と報道委員会の新聞を読むな」
「で、でもあれは私の愛読書なんですよ?」
「うん、君はもっと知性に繋がる本を読んだ方がいい」
「恥性につながる!? 私に何を読ませようというんですか!?」
「君が何を読もうとしてるんだよ」
口をとがらせて自分を抱くようにするエルシア。学生らしく脳内ピンクだなこの子。元気だなあ。
「ん、んんっ。あの……」
軽い咳払いの音に、エルシアと俺の視線がセレナに集まる。
「すみません。時間もないので、依頼内容を確認させていただきたいのですが、構いませんか?」
「あっ、すみません! お願いします!」
セレナは手に持っていたファイルから書類を取り出すと、その内容を復唱していく。
「依頼は
「はい問題ありません! ばっちりです!」
「良かったです。
あと、依頼者の方に依頼者名が書いていなかったのですが、これはエルシアさんで良かったでしょうか」
「あ、いえそれは違います。私はあくまでもマギアのテスターで、依頼者は―――」
「依頼者はわたし。久しぶり。セレナ・ステラレイン」
不意に、俺たちの背後から高い声が聞こえた。
白百合のような少女だった。
どこまでも白い髪と、たっぷりと太陽の光を受けた草木のような緑の瞳。
俺の胸元ほどの小さな体躯に瞳と同じ緑のケープを身に纏い、膝丈ほどのスカートと一緒に揺らしている。
可愛らしい、という表現がぴったりくる少女。
そして、彼女は串にぶっ刺されたケバブを丸かじりしながらこちらに歩いてきた。
なんで?
それも木串とか売るためのものじゃなくて、余裕で彼女の身の丈くらいある出店で回してある、でかいやつ。
何食ってんだこの子。その小さい体のどこに入るんだよそれ。
「あっ、しーちゃーん! もー、遅いからどこ行ったのかと思ったよ!」
「モフモフモフモフ、もぐもふふ」
「食べながらだとわかんないって!」
「ん」
ケバブを食ってた白百合は、エルシアに注意されると名残惜しそうに最後にケバブを一口食べると、こん、と自分の手首に串をぶつけると手元から消した。
え、消えた? 何したんだいまの。
「……転移魔法です。彼女の、得意魔法ですから」
俺の疑問に答えるように隣のセレナが厳しい顔で呟いた。
「もう、しーちゃんこういうの多いよ」
「ん。来る途中にケバブの出店があったから店ごと買い取って、お肉もらった」
「もー、相変わらず自由なんだから。時間はちゃんと守った方がいいと私は思うのです」
「ん。記録・時間は守る。重要」
「記録じゃなくてぇ~……あ、すみません会長さん! 依頼の件なんですけど、私ではなくて、こちらのしーちゃん……シア・イグナスさんからの依頼でして」
シア・イグナスっていうのか、このちっちゃいケバブ娘。
「ん……よろしく」
「あ、どうもこれは丁寧に」
「……ん、いい手」
「そりゃどうも?」
ケバブ娘改め、シアは小さな手を差し出してきた。
断る理由もないので握手で応じると、シアは何が面白かったのか満足そうにふんす、と鼻を鳴らした。
そして、俺との握手を解くと、今度は俺の隣のセレナに視線を向ける。
無表情に近いシアに対し、セレナは先ほどからずっと何かに耐えるように難しい顔を浮かべている。
「ベレッタマギアスクールのシア・イグナス……そう、でしたか」
「ん。わたしの依頼じゃ不満?」
「……いえ。それが生徒からの連合生徒会への依頼であるなら、私は断る理由はありません」
「ん。ならいい。エルシア、いこ」
「え、ちょっと、しーちゃん! あ、私たちは準備して先導しますからお二人は後からついて来てください! 魔物と戦う場所は事前に通達していた通りですので!」
マギアの準備をしている生徒の方へと踵を返すシアを追うように、頭を一度下げたエルシアが走っていく。
「……こんな形で、また会うなんて」
セレナ?
「いえ、なんでもありません。先生、行きましょう」
セレナの顔はいつの間にか、いつものような静かなものへと変わっていた。
けれど、僅かにその態度には硬さが残ったままだ。
どうやらシア・イグナス、彼女と何かあったらしいが……これは、つまりそういう事なのかなァ。
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