遥かなる一秒前

栗山ラファ

第1話 終結と始まり

 世界でもっとも渇いた大地が、世界でもっとも潤った大地へと変わった場所があった。右手に槍、左手には黒い物体を持ち、立ち尽くすがいて、左手の物体からは雫がしたたり落ちている。 

  

 潤った大地はその黒い物体からしたたり落ちるもので水溜みずたまりよりも遥かに大きく池を想像させた。


 空が曇り逆光を遮ると、立ち尽くす何かの向こうが見えやすくなった。池?いや、そんな狭いものではなかった。湖と呼んでも批判を受けないだろう。

 

 湖の色は真っ赤だ、その湖の上に立ち尽くす髪の長い人物がいた。ぼんやりと見えていた湖の水面が風に吹かれ波立っていたと思ったが、波の正体は数える事を諦めるには充分な争いの後だった。


 それが意味していたのは、立ち尽くす人物の最強とわずかな平和。この湖は間もなく姿を消したが後の世に名を残していた・・・

 

 数十年後、世界は国と街と村とで良い意味でのバランスを保っていた。国には国が組織する、国家防衛戦団こっかぼうえいせんだんがあり、契約金を納めた街と村は管轄内かんかつないに置き、納めていなければ全く見向きもしない。


 防衛手段を持たない街や村は魔物、戦争、自然災害、人害等あらゆる理由により一年間で平均五つ程が壊滅していた。


 あえて契約金を納めない所や、契約金が破格過ぎて納めきれない街や村は地域独自で自兵団じへいだんを組織し維持していた。


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