その恋は″あらたま″ならではの、美しさがある
- ★★★ Excellent!!!
この物語は奈良時代に生きる少女、古志加の人生を書いた物語だ。
古志加の人生を見守るように描かれた物語は、作者様の優しい眼差しが随所に見える。
歌うように紡がれる文章に、奈良時代を生きるこの物語の人々を近くで見守っているような心地になるのだ。
何よりも、この物語は読者様にも優しく、そして物語の没入感を損ねない時代の説明が随所にある。
その為、聞き馴染みのない単語があっても、作者様が優しく導いてくれる。
そして、やはり魅力的なのは主人公、古志加だろう。
父親に恵まれなかった少女、古志加は、小さな体で母親を守る。
この物語は、そんな古志加が三虎に出会い、年を重ねていく物語だ。
生活の匂い、土の香りが不意にするような描写で紡がれる物語は、丁寧に、緻密に、彼らの生活を描く。
時には焦ったくなるほどにゆっくりと紡がれる古志加と三虎の、なんとも言えぬ関係を見守りながら、いつの間にか、周囲の人々の人生も見守っているのだ。
丹念に、丁寧に、心の内側に優しく触れて紡がれる物語に、気がついたらのめり込んでいる。
是非、この物語に触れて欲しい。恋だけではない。古志加が人と関わり、自分の思いを自覚し、そして、三虎とえにしを紡いでいく。
一人の少女の生き方を描いた物語を、是非、堪能して欲しいと思う。
これはあらたまならではの美しさを書いた、古志加の物語だ。
少女の人生に触れて読み終える時、この時代に生きる人々を愛おしく思う。
恋に歴史に、この時代ならではの文化を楽しみたい人にもおすすめの物語です。