ホラー嫌いなオカルト好き 続

第10話 長靴の足音

 私には霊感がなく、ナニカが見えたり気配を感じたりしたことがない。

 それでも子どもの頃は、不思議な出来事にたびたび巻き込まれた。

 大人になるにつれて、そんな出来事もほとんど体験しなくなったように思う。


 しかし、やはり感じてしまうのだ。


 「ほんとに、あれはなんだったんだろう……」と。


 あれは少し前のこと。


 昼間。私は家の裏口で、自分の自転車の整備をしていた。よく乗るのに今まで一度も整備をしておらず、前からやろうやろうと思っており、ようやく重い腰をあげたのだ。


 屈みながらオイルを差したり、フレームを拭いたりして、作業をしていた。

 すると、後ろから足音が聞こえてきた。


 ザッ、ザッ、ザッ。


 ゴムの長靴を履きながら歩く音だった。こちらに近づいてくる。


 私は、草むしりでもしていた母親が様子を見に来たのだろうと思い、顔をあげずに作業を続けていた。


 だが、家の中からも物音がする。母親は外におらず、家にいたのだ。


「じゃあ、だれだろう?」


 私は顔をあげた。しかし、だれもいない。


 気になって辺りを見回して、家の角も覗いてみたが、やはり人はいない。


 怪しい泥棒が来て、私の姿があったから急いで引き返したのだろうか。それはそれで怖いのだが、そもそも泥棒は長靴なんて音の出る靴を履いてこないだろう。


 ここで私は、違和感を覚えた。


 足音だが、三歩しか聞こえなかったのだ。「ザッ、ザッ、ザッ」と。通り過ぎた音も聞こえなければ、引き返した音も聞こえなかった。ゴムの長靴で、音を出さずに歩くのは、かなり難しいように思うのだが。


 ほんとに、あの足音はなんだったんだろう……。




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