第12話


「なるほど…魚は血に集まってくるのか…」


男子生徒の足から流れる血に群がっている魚を見て浜田はニヤリと笑った。


「お、おい…!?見てないで助けてくれよ…!?」


「あ、ごめんごめん。彼を助けてあげて」


足を岩で切ってしまった男子生徒は、浜田の他の取り巻きによって助けられた。


だが浜田は彼のことはもはやどうでも良く、血に群がってきた魚を見て思い浮かんだアイディアを早速実行して見ることを考えていた。


「ねぇ、誰か国木田くんを呼んできてよ」


「国木田?」


「なんでだ?」


「いいいから」


「お、おう…」


浜田は取り巻きたちに命じて国木田を自分の前に連れて来させた。


「は、浜田くん…?何かな…?」


浜田の前に連れて来られた国木田は、挙動不審で、チラチラと浜田のご機嫌を伺うような視線を送っている。


そんな国木田に、浜田は笑顔で尋ねた。


「君、前に言ってくれたよね?僕のためならなんでもするって」


「う、うん…!言ったよ!自分、浜田くんのためならなんでもできるよ…!自分にできることがあったら言ってよ!」


浜田に取り入ろうと必死な国木田を見て、浜田は内心ほくそ笑んだ。


「そうかそうか。じゃあ、有言実行してもらおうかな」


「…?な、何…?」


国木田がごくりと唾を飲んだ。


浜田は国木田の周りに控えている取り巻きたちに命令した。


「国木田くんを動けないように抑えてて」


「え…」


国木田が呆然とする中、取り巻きの男子たちが動いて国木田を押さえつける。


「え…ええ!?浜田くん…!?」


国木田が驚く。


「何するの!?」


国木田は突然のことにジタバタともがくが、力ある運動部の男子生徒に押さえつけられてなす術がない。


「誰か、手頃な石でも持ってきてよ」


「おう」


浜田は次に手頃な石を持って来させた。


「持ってきたぞ浜田」


「ありがとう」


浜田は男子生徒が持ってきた石を持って国木田に近づいていく。


「は、浜田くん…!?一体何を…!?」


国木田が顔面を恐怖に染める。


国木田は相変わらずニコニコと笑いながら言った。


「僕のためになんでもできるって言ったよ

ね?」


「…っ」


次の瞬間、浜田は右手に持った石を容赦なく国木田の足に振り下ろした。


「ぎゃぁああああああああ!?!?」


国木田が悲鳴を上げる。


「お、おい…!?」


「浜田一体何を…!?」


「ん?何かな?」


「「…っ」」


周りにいた男子生徒たちが浜田の行動に驚くが、浜田が人睨み聞かせると慌てて口を閉ざして引き下がった。


「な、なんでもない…」


「すまん浜田…」


「下がっててね。これは必要なことなんだよ」


そう言った浜田は何度も何度も国木田の膝を石で打った。


「ひぎっ!?ひぎぃいいいいい!?」


国木田がブルブルと体を痙攣させて悲鳴を上げる中、浜田に容赦なく打たれたその足は、ズボンが破け、皮が剥げて、肉が裂けて血が流れ始めた。


「よし、このぐらいでいいかな」


浜田はそう言って血に濡れた石を捨てて、国木田を抑えている取り巻きたちに海の方を顎でしゃくってみせた。


「国木田くんを海の中へ」


「「…?」」


「それでどうするんだ?」


「血で魚を集めるのさ。さっき血に魚が群がってきたの、見たでしょ?」


「な、なるほど…!」


「それで魚を捕まえるってわけか…!」


国木田は引き摺られて海の中へ入れられた。


「ひぃいいいい!?染みるよぉおお!?」


悲鳴をあげて海の中でジタバタともがくが、国木田は解放してもらえない。


やがて海の中に血の匂いが漂い始め、先ほどのように魚が集まってきた。


「これで少しは取りやすくなったでしょ。みんな、国木田くんが魚を集めてくれている間に、魚を捕まえてよ。砂浜の方に、追い詰めるようにしてやればいいよ」


「「「お、おう…!」」」


浜田の指示で取り巻きたちが海に入る。


遅れて他の男子生徒たちもおずおずと海の中に入った。


彼らはその後、国木田の血を撒き餌にして集

めた魚を十五匹ほど捕まえた。


クラス全員分とはいかなかったが昨日に比べれば、十分な収穫と言えるだろう。


「ありがとう国木田くん。君のおかげで魚が捕まえられたよ」


「…ひぐっ…痛い…痛いよぉ…」


「このことは女子たちには言っちゃダメだよ?国木田くん」


「…うぅ…どうしてぇ…?」


「言えば、君は追放だから」


「…っ!?」


国木田がブルブルと震え出し、それから涙声で言った。


「わ、わかったよぉ…誰にも言わない…女子たちには言わないから…追放だけは…」


「うん。よかった」


浜田がにっこりと笑う。


国木田は誰にも助けてもらえず、血が流れている自分の足を抑えて泣くことしかできなかった。


全ては女子たちが水分補給に行っていていない間に行われたことだった。




〜あとがき〜


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