第86話 異国の海賊

 現在、残った幽霊船内を探索中である。


「ねえ、もう帰ろうよう」


 いまだ気絶したままのファラーシャ嬢を背負いながら探索を続けるオレとアキラ。そのオレの袖を、後ろから引っ張りながらマヤが話掛けてくる。マーチとブルースもすぐに帰りたそうだ。


「そういう訳にもいかないだろ。幽霊って言っても魔物だ。ということはその幽霊が出て来たこの幽霊船には、ダンジョンコアがある可能性が高い。ダンジョンコアを放って置けばどうなるか、マヤたちだって理解してない訳じゃないだろう?」

「それはそうだけど……」


 三人とも頭では理解しているが、心が拒否しているって感じだなぁ。


「嫌ならこの船の外で待ってていいぞ」

「うっ、それはそれで嫌過ぎる」


 ワガママだなぁ。



 ダンジョンコアは船倉の中にいた。それを守護するのは、黄金でできたゴーレムだ。


「ほっ。任せて! 幽霊じゃないから大丈夫よ!」


 と先程の汚名返上とばかりに三人がオレたちの前に出る。


「ガーディアンゴーレムは文字のところが弱点だ!」


 声を張り上げるアキラ。


「分かってる! 「EMETH」の「E」でしょ?」

「エメスのイー?」


 マヤの応えに首を傾げるアキラ。お前が分かってないんじゃないか。


「もしかしていままで、なんとなく文字のところが弱点だと思って攻撃してたのか?」

「違うのか!?」


 ハァー。アキラに説明している間にマヤたちが黄金のゴーレムを倒していた。



「スゴいな。トゥナ伯爵ほどじゃないが、宝箱が10箱はある」


 だがそれを開けてみると、中の宝は錆びていた。


「銀系が多かったのかな?」


 とはマヤ。


「だろうなあ。金は多分ゴーレム造るのに使っちゃったんじゃない?」

「「「「ああ~」」」」


 金のインゴットはゴーレムから多量に獲得できたので問題なし。まあ一応宝箱の中身もお宝ということで、ダンジョンコアと一緒にオレのマジックボックスに仕舞った。鍛冶屋にでも持っていって磨き直せば、それなりの値段になるだろうとはアキラの言だ。


「うっ? う~ん……」

「やっと起きたか」


 ここでファラーシャ嬢が気絶から目を覚ました。


「こ、ここは……?」

「幽霊船の中だよ」

「幽霊!?」


 てっ、オレの背中で暴れるなあ!

 全員掛かりで落ち着かせるのに30分掛かった。ハァー、面倒臭い。幽霊関係はコリゴリだな。



「何とお詫びすれば良いのか……」


 ファラーシャ嬢がしきりにオレに恐縮している。


「いや、もう終わったことなんで大丈夫ですよ」

「でも……」


 なんてやり取りが、さっきから10回以上続いている。面倒臭い。そう思いながら船内を探索していた。


「?」


 顔を合わせば謝ってくるので、ファラーシャ嬢とは逆方向を向いていると、とある一室のドアが開いており、中が覗けた。デカい椅子と机がある。人間何人分だ? ってぐらいデカい椅子だ。


「どうかしたのか?」


「ん、ああ、多分ここ、船長室だ」


 オレは何となく引かれるものを感じて、船長室に足を踏み入れた。


「何この椅子? デカ!?」


 後から入ってきた皆が、部屋におかれたもの全てが大きいことに驚いている。


「船長って巨人だったの?」

「多分な……」


 あの五メートルの骸骨は、どうやら伊達ではなかったようだ。

 椅子に登り、机の上を見てみると、ひと一人ぐらいはある巨大な虹色の水晶玉と、航海日誌がそこにはあった。

 なぜか日本語で書かれた大きな航海日誌を読み進めて行くと、船長がこのフィーアポルトの、アウルムの人間ではないことが分かった。まあ、そこでも海賊やっていて、国に追われて行くところが失くなったので、ここにやって来たようだ。


「…………」

「どうかしたのか?」


 とアキラの問い。


「いや、最後の方が意味分かんないことになっててな」


 オレはアキラに最後のページを見せる。


「うげっ、恨み節のオンパレードだな」

「その前だよ」

「前?」


 どうやらキャプテンは相当の深傷ふかでをおってここまで逃げて来たらしく、最後は恨み節とともに血で赤黒く染まり、終わっている。

 だがそこは重要ではない。その前の部分が重要なのだ。何せここは地底湖だ。こんな場所にどうやってこの船はやってこれたのだろう? オレはそれが不思議でならなからったが、


「レディーレ・グラキエース? ってなんだ?」


 とオレが口にした時だった。虹色の水晶玉が眩しく光り出したのは。あまりの眩しさに全員が目を瞑り、その光が収まるのを待った。



 その光は30秒とも1分とも感じたが、ただ光っただけでオレたちに実害は特になかった。


「何だったんだ?」

「「「「「あ!?」」」」」


 オレが首を傾げていると、皆が窓の外を指差す。

 何だろう? とオレも窓の外を見ると、そこは空に美しいオーロラのカーテンが浮かぶ、一面青白い氷に覆われた大地だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る