第84話 エネルギー波を撃とう

 光を物質化させても質量が軽すぎて上空へと浮いていってしまう問題。

 オレが考える解決策は、光以外の物質に置換する。

 別に光である必要はないのだ。アキラはエネルギー波と言っていたし、そのくせ実態は何やら物質であるらしいし、と言うことはアキラが思うエネルギー波っぽく見えれば良いのだ。


 ファイアボールなどの火系統の魔法も言い方はアレだが光を放っている。あれは魔力を燃焼材に変化させて酸素と燃焼させている。それによって熱と光を放っているのだ。だからと言って空気より軽くなく、上空に浮いていってしまうこともない。あんまり真剣に考えてなかったけど、良くできてるな。

 つまりエネルギー波も光れば良いのなら、ファイアボールのように光を放つ光源の物質化をすれば良いのだ。ネオンはどうだろうか? 軽いか? アルゴンなら? いや、物質なんてどれも熱すれば光るんだから、ガス系統である必要はないのか。

 オレはおもむろに砂浜の砂を引斥力で中空に浮かせ、エフェクトで熱を加えてやる。すると砂粒たちは赫赫と燃え、光を放つ。それを海へと投げ入れれば、ジュッと蒸気が上がった。


「アキラ、どう?」


 とそのままアキラの方を向くが、


「どう? と言われてもな。イメージと違う。何て言うか、燃えるのは違うんだよ」


 光は放つが熱くはないと言うことか。LEDみたいだな。あれの化学組成なんて魔法で再現できないだろ? いや、魔法だから再現できるのか。ファイアボールの魔力的燃焼材だって、何? 燐? メタノール? と訊かれても答えられない。そういうモノなのだ。

 つまりここでオレがやらねばならないのは、エネルギー波の原材料を魔力からマテリアルでこの世界に顕現させること。

 え? 何この無理難題。第一オレがやる意味あるのか?


「なんか急にやる気が失せてきた……」

「チッ、リンならできるって! あきらめんなよ!」

「今チッて舌打ちしなかった? チッて」

「気のせい気のせい」


 うむむ、まあそういうことにしておこう。

 要はイメージとしてそういうモノができればいいんだ。大きさ的にはドッジボールなんかの球技用ボールくらいで、空気とほぼ同等の質量で光は放つが熱は出さない。

 オレは両の手のひらを胸の前に出し、そこに空気のボールがあるかのように構えると、今思ったことを何度も反芻はんすうし、イメージを固めていく。


「ハアッ!」


 イメージが固まったところでそのイメージに魔力を流し、マテリアルで顕現させると、オレの手のひらの間の空間には、光の玉が現れていた。


「そう! それだよそれ! そんな感じ! あとは流星みたいに尾を引いて飛んでいったら最高だな!」


 無茶を言うな。流星みたいに尾を引く、か。またそれをイメージイメージ。そして、


「撃ち出す!」


 しかして光の玉は確かに流星のような尾を引き、海の彼方へと一直線に飛んでいって見えなくなってしまった。


「うおおおお!! それだよそれ!! できた! リン、スゲエ!!」


 なんか、できたオレよりアキラの方が喜んでるな。それだけ待ち望んでたってことか。

 しかしこれに興奮したのはアキラだけではなかった。見学に徹していたマヤやマーチ、ファラーシャ嬢までが「スゴいスゴい」とはやし立て、どうやったのかを尋ねてくる。まあ、隠すことじゃないから良いか。

 そうしてオレが皆にレクチャーしていると、どこに行っていたのかブルースがふらっと帰って来た。


「どこ行ってたんだ?」


 何気なくオレが尋ねてると、ブルースは難しい顔をして、とりあえず付いてきてくれ、とのご要望。

 執事とメイドをその場に残し、残りのメンバーで無人島の中心地へ行くと、そこには木々に隠されるようにして、地下へと通ずる洞穴がぽっかり口を開いていた。


「ブルース君は、いつもこういうものを探し回って生きてるのかい?」

「そんな訳ないだろ」


 ブルース以外のメンバーを見回せば、皆、中へ潜る気満々の顔をしている。おかしいなあ。今日は休日のはずだったんだけどなあ。

 いくら遠くを見つめたところで、中へ潜るのは決定事項だった。

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