第24話 グーパン
ガシンッ! ドスッ!
マヤが大盾で防いだ角ウサギを、オレが銅貨の一撃で倒す。
「フゥー、さすがに夜の赤の森は魔物の数が多いな」
銅貨と魔核をポーチに回収し、オレは息を吐く。素体は木の枝だったので放置だ。
「だからって明日も平日だから、どうなってるか分からないし」
そうなのだ。このマグ拳ファイターというゲーム、プレイヤーの多い時間帯だとリアルと同じ速さで時間が進むが、プレイヤーの少ない時間帯だとリアルだと1時間しか経っていないところを、ゲーム内だと2時間経っている。といった具合に、プレイヤー数によってゲームの外と内で時間に差が生じる。これによっていつも夜の決まった時間しかプレイできないプレイヤーでもゲーム内では夜だけでなく、朝や昼を楽しめたりするのだが、
「明日の
「グチグチ言ってても仕方ないわ。先に進みましょ」
マヤは盾を構えながら赤の森を奥へ奥へと進んでいく。その後をついていくオレ。
「…………」
「…………」
「…………そういえばさ」
「何?」
「大盾だけで武器は持ってないだろ?」
「今は赤狼牙のナイフがあるけどね」
「いままではどうやって魔物を倒していたんだ?」
ここまでマヤの大盾で万全の防御を敷き、オレの
「どうもこうも、グーパンだけど?」
シンプルな答えだった。盾を持っていない方の手を握り、ニカッと笑うマヤ。うん、頼もしい。
「そんな大きな盾を持ち歩いて戦闘もこなすんだから、マヤが女子とは思えない膂力の持ち主なことは分かっていたけど、まさかリアルでも?」
「はぁ? 何バカ言ってんのよ」
思わず先を行くマヤが振り返る。オレを見るその顔が呆れていた。
「バフで強くしてるに決まってるでしょ」
「バフって、基礎魔法のあれか?」
「…………頭大丈夫? それ以外ないでしょ?」
ないでしょ? と言われてもな。今更オレはそれに気付いたんだが。そうか、普通はバフで身体能力を上げるところから始めるのか。言われてみればそれが合理的だよな。冒険者やるなら体が資本だろうし。
「リンだってバフで強化した石やコインをぶつけてるんでしょ?」
「いや、オレのは引斥力魔法、と言うかテレキネシスだな」
「は?」
腰に手を当てて「どうだ!」と誇ってみたのだが、マヤには理解できないものを見るような目をされてしまった。
「ま、まぁ、何でもいいわ。強いし」
流された。
「それより」
「ああ」
森の最奥に着いた。
最奥には一本の巨木があり、その巨木を守るように三体の赤狼が辺りを伺っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます