夢中なのさとにもかくにも

@kotaroremon105

第1話 俺と結婚してくれないか

俺は恋をしている。

美しい瞳、可愛い声、優しいおっとりとした性格。

あいつの事を考えるだけで勉強に身が入らない。よって授業中は睡眠の時間だ。

俺は存在感がないからか、居眠りしても気づかれない。頬杖をつき、ノートに鉛筆で書きとってる風で眠るのが俺の居眠りスタイル。

特に国語の青山先生はおじいさんだから、安心して眠る。


先生のゆっくりとした口調、窓際の席の一番後ろ、クリーム色のカーテンからの暖かな木漏れ日。少し空いた窓からそよぐ風。春の優しい空気。

あいつが夢の中で白いウェディングドレスを身に纏い、俺に微笑ましかける。なんて可愛いんだ。幸せ。

ぽんっ!

頭に軽い衝撃。


「こら、ねるな!」


青山先生が教科書で俺の頭を軽く叩いた。


「あぁスンマセーン」


先生はそれ以上俺を責めなかった。

寝ながら書いた俺のノートはミミズのはったような、文字とはいえない謎の線だらけだった。

高校受験が控えているというのに、この余裕。というのは嘘で、成績がいいとはいえない俺。危機感持てね~。


「ユズー派手に寝てたぜー、イビキよ~」


休み時間、クラスメイトの田山が笑いながら話かけてきた。


「イビキかいてたか?俺?ヤベェな寝てるのバレてもうた。青山の授業は俺の充電時間だったのに、もう寝れね〰️」と頭を抱えた。


「お前さ~高校どこ受ける?寝てる場合じゃねぇべ?塾行ってんのかよ」

呆れ顔の田山が俺に問いかけてきた。


「そういうお前は?受ける高校決めてんのか?まだ3年になったばかりだから俺なんも考えてねーよ、塾なんて行ってないし」


本当の事だ、何も考えてないし、危機感がないと自覚はしている。


「ふーん余裕だな。俺なんてさ~親にいい高校入れって言われてうるさいんだよ、なんも言われないの親に?」


「公立でどこでもいい、私立は金銭的に厳しいからとは言われてるよ」


両親は実際、勉強に関してうるさくはない。

俺の成績には苦笑いだが、健康が一番だからと不摂生にはちょっとうるさい。夜10時には寝る習慣は身につけている。というか、自然と眠くなる。朝早く起きるのは苦手だが、6時には起きて、父親と家の周りを走る。

ほんの10分程度のランニングだか、頭が冴える。おかげで俺は風邪ひとつひかない健康だ。

中学校の給食はうまい。学校に通う目的のひとつだ。

数学、理科、社会…今日の学校終わりっ!


掃除ダルいな部活ダルいな、家帰りてぇ。

テニス部の連中、うまいやつだけでやりゃあいい。俺は校庭の鉄棒で体を鍛える。

最初はテニスに夢中だったんだ。

しかし、小さい頃からテニス習ってる連中三人がコートを占領。それ以外はそいつらにバカにされ、こけにされ、やる気なくしてる。俺は何もいわれないが、部活バカらしくなり筋トレマシーンと化した。

顧問もいつも居ないし。

3年だから、もうすぐ部活も終わりか。

青春みたいなキラキラした思い出はないが筋肉はついたし、無駄ではなかったかもな。


俺の家、通ってる中学校から徒歩5分。

実に理想的な距離。忘れ物も先生の目を盗み、ダッシュでとりにいける。

そして、俺の理想の「彼女」がいる。

俺が帰宅すりゃ、玄関に座ってでむかえ、足にすりっとしてくる可愛い奴。

俺はこいつと結婚する。決めたんだ。


「タダイマ~いい子にしてたか?」


「ミャー」


「かっかわいい~」


俺の愛しい奴、ぽんずちゃん。

そう、ネコである。オスである。性別なんて関係ない!とにかく可愛いんだ。

緑色の瞳。雨の日にはなぜか黄色の瞳、可愛い声、焦げ茶色の縞縞模様な身体、ボテボテボディー。優しい性格。

俺は毎日プロポーズする。ぽんずに土下座でプロポーズ、これが俺の日課だ。平和だろ?


両親は共働きだから、大抵、俺が帰宅しても誰もいない。たまに二つ下の妹の夏葉が先に帰宅しているが、あいつはバスケ部で忙しくしてるから、俺が帰宅する時間はいない時が多い。


玄関で行儀よく座って、俺を出迎えてくれるのは愛しいぽんず。


俺は手洗いうがいをし、ぽんずを抱いてリビングのソファにぽんずを置いた。ぽんずは毛繕いを始めた。

冷蔵庫から、大好きな梅ジュース缶を取り出し、ごくごく飲む。うっうめぇ~、梅だけに。

と寒いギャグを心の中でつぶやきつつ、ぽんずのいるソファに座りながら、テレビの電源をリモコンでつける。

つまらないワイドショーが流れている。芸人が不倫したそうだ。ふぅーん、

俺はお前一筋だぜ、ぽんず。


ぽんずはうとうとしている。ぽんずを撫でていると、ひっくり返ってお腹を見せてくれた。喉はゴロゴロ鳴っている。


あぁなんて可愛い、麦畑のような腹毛は黄金に輝き、俺はそこに顔をうずめ香ばしい香りを吸う。

俺は鼻血を出す。


俺は体質的に猫飼ってはいけない、鼻血は猫アレルギーが原因だ。最近耳鼻科で判明した。


テッシュで鼻血を押さえてると、心配そうにぽんずが俺を見上げている。カワイイ。


鼻血で、布系ソファが汚れた。

「やべっ怒られる」

母親に怒られると思った俺は、鼻血が収まった後、ソファの鼻血をウェットテッシュで拭いたが完璧には取れなかった。ソファに付いたのが少量だったので、まぁいいか。紺色だし、目立たねぇよな。


ぽんずといつの間にかソファで寝てしまった。

いい匂いがして、俺は目が覚めた。


母親が帰宅し、夕飯の支度をしている。


「あっお帰り〜、今日カレー?」


いい匂いはカレーの匂いだ。


「起きた〜、ただいま。今日はカレーだよー、ねぇゴミ箱に血のついたテッシュいっぱだけど、また鼻血?あまりぽんず吸いしないほうがいいよ~アレルギーなんだからさ」


母親が俺からぽんず吸いを取り上げるつもりだ。


「いいのっ!ぽんずカワイイからっ!それと、鼻血ソファに付いちゃったごめんねっ!」


と俺は思い切り可愛いく言ってみた。


母親はソファの血を確認。


「カバーだから洗えば大丈夫だよ」


怒られると思っていた俺は拍子抜けした。

しかし学校でも寝て、帰宅して寝て俺、寝てばっかだな、自分に呆れた。


ぽんずといると安心するんだよな、癒やしの究極的存在。受験勉強もみが入らない。


「ただいまー」


ぽんずは妹の夏葉を出迎えに、玄関に走っていった。「ポーンちゃぁーんカワイイ結婚してー」夏葉のセリフは俺と類似しているが、残念ながら、ぽんずは俺の妻なので、夏葉には叶わぬ恋なのである。

妹は洗面所で手洗いうがいをすませ、ぽんずを抱き上げ、無理やりほおづりをする、ぽんずはされるがまま。無の表情もなんとも可愛い。


妹がぽんずを床に降ろすと、激しい毛繕いが始まった。


乱された毛並みを浄化するが如く。


「ぽんず、ほんっとにかわいい❤結婚して〜」


夏葉はまたぽんずを抱き上げた。



「おいっ!しつけーぞ!ぽんずちゃんはお前とは結婚しないの!お前の相手はカマドウマだ!」


「ハァ?カマドウマってあのキモいバッタぁ〜何言ってんだお前?ぽんずちゃんは夏と結婚するの〜、ね〜ぽんずぅ〜」


「あ〜ぽんず嫌がってる、ぽんずは俺と結婚してるんだ、残念だったな」


「ぽんちゃんは夏の結婚相手なの〜」


といつもの兄妹の小競り合いが幸せだったりする。


「ぽんちゃんはわが家のアイドルだね」


母親は言う。


嫌違う、アイドルではない、俺の正真正銘の妻なんだ。本気で大好きなんだ。もはや猫ではない。
















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