第2話 タバコ強化剤の効果

 気付くと、森に囲まれた湖のほとりに立っていた。

 女神が一方的に、何か言ってた。

「落ち着くには、タバコを一服」

 オズモメンソールを、箱から一本取り出し、香りを嗅ぐ。

 鼻に心地好い、スッキリした香りが心を落ち着かせる。


 タバコを口に加えると、ライターで火を着ける前に、タバコの先に火が着いた。

(女神のサービス? これ便利魔法? あぁ! 基本の生活魔法って奴か)

「スーーッ、プハーー…スーーッ、プハーー」

 臍の下辺りが熱くなり、一気に身体全体が熱くなった。

「この感覚、一本で効果は10分と言ってたな? 何の効果だ? ニコチン効果か?」


 ガサガサ繁みを掻き分け、豚の頭二足歩行の化け物、多分魔物オークがやって来た。

 湖の畔だ、当然獣や魔物が水を飲みに来る。


「恐怖とか全く感じて無い…女神が心をいじるって言ってたな、感情の部分を弄ったのか?」

「ブッ? ブビーーッ」

 豚頭、僕に気付き、唸りながら近付き手に持ったこん棒を振り上げた。


「こん棒で殴られるの、待ってる程暇人じゃ無いよ」

 加えタバコのまま、僕は2メートルのオークに、ショルダーアタックした。

 コンクリートブロック、完成品をパレットに積み上げる作業で、筋肉は着いてる。

 10年近く栄養不良だった僕は、身長160センチ位しか無いが細マッチョだぞ!


 低い体勢、僕の右肩はオークの臍の位置に当たった。


 オークは吹き飛んで行き、巨木を二本へし折って、三本目にぶち当たり息絶えた様だ。

「死んだと思って油断して襲われる、イライラする展開ラノベで多かった、志村後じゃねぇんだよ」

 死んで居るか確り確認した。




 枯れ木を集め焚き火してる。森の中でも開けた湖の畔、防火は大丈夫だろう。

 今はタバコをくゆらせて思案中だ。

「魔物って言っても二足歩行の豚、食えるよな?」


 生き物を殺しても、さして忌避感を感じず、更にそれを食おうとする感覚、異世界をたくましく生きるすべ、これが女神の精神改造によるもので有った。


 貧乏暮らしの僕はスマホを買う余裕が無かった、ラノベ異世界知識は古本市場の一冊80円の本を、バイト代が入って余裕の有る時買って得た物。


「時間停止アイテム収納、解体機能付きって無い?」

 目の前のオークが消えた。


「成る程!チートじゃ無く、生き易さ優先だね!異世界女神さん名前も聞いて無いけどありがとう」

(股肉一口サイズ!出てこい!!)

 3個イメージすると、イメージ通りの肉が出てきた。


 豚がへし折った巨木を回収、串をイメージ、3本出て来た。

 焚き火から、少し離れた地面に、肉を刺した串を突き立てた。


「焼き肉なんて、いつから食って無いか…以前食ったのは確か8月のボーナスの時、と言っても5万円の寸志って奴、更に確り所得税引かれ4万5千程の手取りだった、贅沢は出来んかったが100㌘55円鶏のむね肉、確かブラジル産だったのを300㌘買って焼き鳥にした」

 冷蔵庫が無かったから、夏大量買いが出来んかった、寂しい思い出だな。


 考え事してる間に肉が焼けた、クルリ回しもう片面を炙る。

「豚肉は確り焼かないと、生焼け常食すると脳を遣られ、ヤコブ病だったか?狂牛病に似た病気になると聞いた」

 豚シャブをピンク状態で常食してる奴、トンカツの中がピンク状態を平気で常食してる奴、いずれ奇病になるだろう。


 火が通ってるとかあまり関係無い、良い例が3日目カレー腐って無いのに食当たりする事が有るのは、ニンジンに着いた菌が繁殖し食中毒起こした物、あれ程じっくり煮込んでも、ドッコイ生きてる鍋の中!!

 菌はしぶとく逞しい。


「母さんは、豚肉生焼け特に神経質だった」


 肉が焼けた。

「旨い!!」

 魔物肉を、ただ焼いただけなのに、凄く旨く感じた。

「後は、飲み水をどうするか」

『ピンポーン!飲み水は魔法で出せるよ!貴方の女神より』

 チャイムと共に、メッセージが頭に浮かんだ。

「生活魔法か!便利だね、女神さんありがとう!!」


 口の中に一口の水が出るイメージ「プハッ!コクリ、ゴクゴク」一口ずつ連続で出し、渇きがおさまった。

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