第21話それぞれの夏休み
大崎との気まずいやりとりのあと、俺は頭が混乱したまま校舎を後にした。
正直、誰とも会いたくない。うんざりしながら帰宅して、自室にこもってベッドに倒れ込む。
するとスマホが振動し、清水さんからのLINE通知が表示された。
お疲れさま。補習終わったら暇かな? 夜ご飯食べに行かない?
心の乱れを誰かにぶつけたいわけでもないが、彼女と一緒にいれば気が紛れる気がした。
俺はとりあえずOKと返事をし、夜に合流する約束をする。
約束の時間に駅前へ向かうと、清水さんは涼しげなシャツとスカート姿で待っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん、今来たとこだよ」
そう言いながら笑う彼女を見ていると、どうしようもなく罪悪感が込み上げてくる。俺はさっきまで大崎と“あんな話”をしていたのだから。
「どっか行きたい店ある?」
「うーん、イタリアンのお店とかどうかな? ちょっと探してみたんだけど」
「いいね。軽くパスタでも食べようか」
人通りの多い商店街を歩きながら、清水さんが最近のバイトの話や、海の余韻がまだ抜けてないことなど、嬉しそうに語ってくる。
俺は相槌を打ちながら、内心で(大崎のことを考えるな、考えるな……)と必死に自分を押しとどめる。
ここで彼女との時間を壊してしまったら本当に取り返しがつかない。
小さなイタリアンのお店に入り、ピザとパスタを注文すると、彼女はまるで嬉しそうに色々と話し続ける。俺の勉強の進捗や、夏休みの課題、友達との予定。
とにかく話が尽きない。俺は時々相槌を打ちながらも、ふと彼女が唐突に言った言葉にハッとする。
「なんかね、○○くん(主人公)って最近ちょっと難しそうな顔してる気がするんだ。悩み事でもあるの?」
鋭い。清水さんは純粋とはいえ、相手をよく観察している一面がある。
「いや、別に……勉強とか、将来とか、まあいろいろ考えてるだけだよ」
「そっか。もし辛いことがあったら言ってね。私でよかったら話聞くから……」
彼女は笑顔を見せるが、その笑顔にはほんの少しだけ寂しさが混じっているように見える。
(こんなに気遣ってくれるのに、俺はどうして大崎のことを頭から追い出せないんだろう)
ピザを頬張りながら、どこか冷めた視点で自分を見つめる。
そして、大崎と清水さんの間で揺れる情けない自分を思い知るのだった。
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