第19話 最近のカップルなんてこんなもん?
「そういえばうちの担任って全てに対してだるそ〜にしてるよね?」
「そうだな。俺も遥輝と話し合いそっちのけで話してたら勝手に任命されたし」
「いや、話は聞こうよ桜庭くん」
「真面目だな」
「私なんて全然だよ。買い食いとか全然するよ?それに、私から見たら桜庭くんの方が真面目そうだけど……」
「俺?はははははは」
「無表情で笑わないで?怖い」
「俺の数少ない長所」
「うん、どこが?」
我ながら今日は口が動くな、今日は。もしかして
それにしても更科さん、思ったより話しやすい。自分にネガティブな感情も、過度に好意的な感情を持たない人との会話がここまで安らぐものとは……
別にこの「やすらぐ」は好きとかのものではないぞ?
気疲れしないとか、ストレスのたまるたまらないのみのことだ。遥輝との会話と同じ感じだ。(アイツは妙に俺にかまちょしたくるが)
ちなみにストレス解消・癒しは美玖の役割。1家に1台必要だけど専売特許で俺の傍にずっと居て欲しい。将来美玖が嫁入りするなんて考えたくない。
シスコンをこじらせたら美玖にキモイとか言われたくない。言わないだろうが、ここら辺でやめておくか。
ちょっとした自責の念に駆られていると、
「ちょっと拓人」
「ん?なんだ陽菜か」
咄嗟に声をかけられても即座に名前呼びできるようになった俺、成長を感じるぞ。
どうせ後で別れるのに成長しても意味ないけど。
「なんだ、じゃないよ!彼女が横にいたのに他の女の子と楽しそうに話さないでよー!」
「いきなりなんだメンヘラ彼女か」
「ちっがーう!どこがメンヘラなの!?」
「怒るな怒るな。可愛い顔が台無しだぞ」
おぅえっ。ムーブはまだ、慣れなさそうだ。
「か、きゃわいいなんて簡単に言わないで……」
明るい茶髪がふわりと舞い上がって春川の身長がいきなり低くなる。
しゃがんだのだ。今どき両手を広げ頬に当ててしゃがむなんて、少し前のラブコメヒロインかよ。
おっと、まだいるかも知んない。判断が早計か。
それにしても春川、やっぱり褒めに弱すぎないか?将来、悪い男に騙されそうだ。(現在進行形なのに何を言ってんだ俺)
「噛んだな」
「う、うるちゃい!」
まだ口が震えて上手く喋れないみたいだ。それ、どうにかしないとな。
「ともかく、わかったよ。彼女は陽菜だからな?なるべく話さないわ」
「べ、別に完全にコミュニケーションを閉じろとは言ってないからね、……?彼女が近くにいる時は、なるべく少しだけでも彼女を優先して欲しいかなーなんて」
「わかった」
少しめんどくさいが、今どきの恋愛なんてそんなもんかもな。ある程度の拘束力がないとお互い安心してられないのかもしれない。
ほぼ仮の恋人関係の俺たちだが、ならうとしようか。
「なら、陽菜も、なるべく俺を心配させないでくれよな」
「わ、わたしなんかした?」
「まだ、何もしてない」
「……うーん。…よし、任せて!わたし、絶対に拓人のこと、裏切らないから!」
いや、そこまで意思表明とか、決意とかしなくてもいいんだが。お返しに言ってみただけなんだが。
人のこころは難しい。ホントに。
夏目漱石先生の本でもバイトの合間に読むか。
「あっ」
「?どうしたの拓人」
「いや、バイトのことでちょっとな」
そういや、昨日バイトあったんだった。店長、怒ってるだろうな。次の休憩時間に電話して謝るか。
「拓人ってバイトしてるんだ」
「親がいないからな。いくつかしてる」
「あ……ごめんね」
「いや、謝んなくていいぞ」
「でも……」
「俺には妹の美玖がいるから問題ない」
マジ神。
「そっか。てか、ホント妹好きだね」
「ああ。いつか会ったら紹介する。兄の贔屓目から見なくてもめっっちゃ可愛いから」
「そ、そう。おっけい」
「おいそこで引くなよ」
俺としては珍しく「めっちゃ」を使ってみたのだが。似合わなかったか。
「なんか、陽気に話してる拓人が変を通り越して気持ち悪い、かも」
「ああ、これが俺に向けられる本来の感情」
もう逆に清々しいまである。
「ひねくれすぎだよ拓人」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます