私は将棋のルールを知りません。そんな人間がレビューを書く事は、将棋好きな方からするとご不快に思われるかもしれませんが、どうかご容赦下さいませ。
さて、私にとっての将棋とは、子供の頃に行った「山崩し」や「はさみ将棋」です。ある時、近所のおじさんが「わしにはさみ将棋で勝ったら、千円やる!」と小学二年生の私に言い、幼いながらもオリジナルの嵌め手を作っていた私は見事勝利したのですが、余程悔しかったのか、千円は貰えなかったと言う苦い思い出があります(笑)。
そんな私は本将棋を覚える事はせず、大人になりました。ただ本は好きでしたので、羽生九段の書籍は読んだ事があります。その中で、今はうろ覚えですが、段々と年齢を重ねて来た羽生九段は、若い頃の様に圧倒的な読みが出来なくなった反面、もう少し大きな視点で将棋を捉えられそうだ、と書かれていたかと覚えています。
そしてこれもうろ覚えなのですが、野球選手のイチローが大リーグで最多安打を競っている時に、少し考え方を変えてこれが上手くいけばどんな球でもヒットに出来ると言うのを試して、結果には結びつかなかったのも覚えています。
だけど、この「新たな領域や境地を見出そうとする頭」、その結果がどうあれ、世間で天才と呼ばれている彼らの、柔軟で貪欲な姿勢に私は大いに感動したものです。
さて、本作です。
ここにあるのは仮想大局ですが、そのあまりに巨大な熱量で書かれたドキュメントとなります。そこには将棋への深い愛情は当然として、筆者様の将棋を小説に昇華しようとする「熱い想い」が強く込められています。だからこそ、将棋をまるで知らない私の心を強く打ち、熱狂させる物語となり得ています。
お勧め致します。
将棋という限られたジャンルにこのカクヨムで挑み、多くの支持を集める作品です。そういう挑戦を行ない、柔軟で貪欲な情熱が迸り、そして見事に書き切った素晴らしい作品であります。きっと皆様にご満足いただけるどころか、胸熱な感動をお届けできると断言出来ます。
皆様、是非、宜しくお願い致します( ;∀;)
本作はフィクションである。少なくとも我々が存在するこの世界では。
だが、本作は紛れもなくリアルである。天才藤井総太5冠に羽生永世7冠が挑むこの王将戦。第7局までの簡潔なエピソードもまるで現実の記事のようだ。
そして第7局、われわれはこの大天才二人の勝負に最前席で立ち会うという栄誉が得られる。それは対局という生易しいものではなく、決闘だった。
空気が軋むような緊張感を感じさせられるこの戦いは事実に違いない。そう、我々の世界とは別のどこかの並行世界でのノンフィクションに違いない。
並行世界の二人の王将戦の結末(リアル)が知りたいならば刮目して本作を読むべし!
天才藤井聡太五冠に王将戦で挑戦者に名乗りを上げたのは、棋界の第一人者で国民栄誉賞にも輝く羽生善治永世七冠! 頂上決戦の臨場感たっぷりの傑作です。
途中までノンフィクションかと思って、「そういやそんなこともあったな…」と思いながら読んでおりました。それが終盤、羽生さんの手が「天を指すがごとく」跳ね上がったあたりで「ん?」になり、そのまま、誰も想像もできない落ちへとつながっていきます。
この数年、どういうわけか、スポーツグラフィック「ナンバー」が、時々将棋特集をやっておりますが、攻防一体の面白さ、棋士のたゆまぬ鍛錬、そしてメンタル、そういったものがスポーツと共通するからだと、本作を読んで改めて感じました。
やはり将棋をやる人じゃないと分からない小ネタも満載で、自分が将棋が詳しかったらもっと面白かったのに。。とは思いました。が、将棋やらない方、それこそ駒の動きも分からない方でも、作者の確かな文章力、表現力で、「なんかすごい対局やってる」ということは十分伝わると思いますし、楽しめると思います。
この作者は、この作品を将棋専門誌の新人賞に出そうと思ってたら、うっかり期限が過ぎてしまっていた、ということでしたから、次期には応募して、栄冠を目指してほしいものです。