第45話 アニメ的展開

――私は葛城夜魅かつらぎ よみ

夜を統べる咎人。闇に祝福されし漆黒の徒。


なんて、自己紹介をする機会はめっきり減った。

(だって恥ずかしいんだもん)


以前までの、私は他者からの評価というものを絶対的なものだと思っていた。

そして、少しでも評価され得る自分にも掛けられる仮面をかけて過ごしていた。


しかし、私の綻びのある考えは、ある事件を経て完全に消失した。


あの事件で私は一度クチャグチャになった。

私の仮面も、私自身も。


なんとか優しい同級生と、その同級生の紹介で会った大人の力を借りて、

グチャグチャな自分という観念は粘土をこねるみたいにして、復元された。


今度は、自分自身という評価軸を持って。


だってアニメみたいな事は現実には起きない。

そう、思った矢先のことだった。




「最近、出番ないんだよねぇ〜」

そう、私の隣を歩く女性がぼやく。


彼女は、私の恩人が営む喫茶店の常連客で小野寺 涼子さん。

出版社『Elegance+(エレガンスプラス)』の編集者。


どうやらElegance+では、最近になって競合他社に押され

彼女の配属だったファッション部門が解体されたらしい。


私たちは、街でばったり遭遇した。


「だからって、都市伝説に回されてもねぇ」


「そうですね」


そして、興味も知識もない“都市伝説部門”の配属になったらしい。


「最近の記事はどういう記事を書いたんですか?」

私の質問に彼女は顔を顰める


「聞いてよ〜。なんでも、表向きは何の変哲もない女たちが裏で暗躍する組織!とかについて調べさせられて」


「え〜大変ですね」


(本当に大変そうだ)

そんな組織が、

法律によって様々な義務を負わされている法治国家 日本にいる訳が無い。


無いものについて、書く事なんて小説家の仕事だ。


「他にも、制作に取り掛かってるのは世界地図に載らない国だとか未来人だとか、、ある訳ないのに」


「はぁ」


どうやら本当に、鬱憤が溜まっているらしい。



「悠馬さんに聞けば何か教えてくれるんじゃ無いですか?」


結城 悠馬。

私の恩人にして喫茶店を営んでいる人物だ。

彼なら、何か知ってそうだ。


「案外、謎の組織の幹部と知り合いだったりして?」


「無いない。そんな事、わざわざ聞いて大切な時間を消費したくないしぃ〜」


(分からなくもない。)

私も、あの喫茶店にいる時間は1秒でも無駄にしたくない。





彼女の愚痴を聞く事に飽き飽きし始めた私はアニメの話題でも振ってみる。


「小野寺さんは、アニメ観ないんですか?」


「私?ジフリ位しか観ないけど」


「『嵐の山のナターシャ』とかですか?」


「そうそう、あと『雲の上の巨城ラプデゥス』とか」


小野寺さんが心無し楽しそうな表情になって来た。


「あれですよね『親方!空から男の子が!』とかですよね」


「そうそう」


そんな話をしていたら、小野寺さんの家の前に着いた。

小綺麗なマンションだ。



――それじゃあ。

そう彼女が別れの言葉を述べたあとだった。


不意に、強い風が吹き抜けた。

私は顔をしかめながら空を見上げた。


その直後に──


なんと空から男の子が降って来たのだ。

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