第29話 月巫女編 剛寂流

地図を眺める剛善と一花。

「出雲まで出来るだけ急ぐが15日はかかるな」

「仕方ないさ、人目を避けるために主要な交通路は使わない方がいいからな」

今回の任務は極秘である。御手守師団の中でも桜華衆と隊員である俺たちぐらいしか聞かされていないはずだ。

「うーむ!考えていても距離は近づかない!俺が先頭を走るからみんな付いてきてくれ!」

剛善が走る後に俺たちは付いていく。

「えぇー!走るのー?!僕疲れちゃうよー!」

「ははっ本当にヤバくなったら俺がおんぶしてやるからさ」

「蒼蒔〜おんぶ〜」

「まだ早いだろ!」

嫌々走る幽姫の背中を押してやる。

「蒼蒔〜甘やかすと幽姫のためにならんぞ〜」

一花に注意される。

「でも幽姫を見てると助けてあげたくなっちゃうんだよな〜」

幽姫には人に優しくされる才能があると思う。

「蒼蒔〜体力が有り余ってるなら私をおんぶしてくれてもいいんだぞ〜」

「一花はダメだ」

俺は即答する。

「ちぇーお姉さんに優しくないな〜お前は〜」

「お姉さんは俺より体力ありそうなのでダメです」

一花が蒼蒔の肩に手を回す。

「優しくしないと女にモテないぞ〜せっかく男前なのに残念なやつだな〜」

「べっ別に女にモテたいとか考えてねえし!」

「そうか〜?残念だな〜蒼蒔が優しくしてくれたらお姉さんがとっても大人なこと教えてあげようと思ったのに〜」

一花が着物の胸元をめくる。

「あばっ!ば!なっ!なな!」

顔を赤くして狼狽える蒼蒔。

「あぁ〜蒼蒔がスケベエだぁ〜」

幽姫にお尻をペシペシされる。

「あははははっ!年下を虐めるのはお姉さまの特権よのう!」

その様子を見て一花が高笑いする。

「ん?なんだ?一花はおんぶして欲しいのか?なら俺がおんぶしてやるよ」

剛善が一花を抱え上げる。

「武人!大丈夫だ!冗談だから!」

「まあまあ気にするな」

剛善が一花をおんぶして全速力で走る。

「ひいぃぃいい!!下ろしてええぇぇ!!」

絶叫をあげる一花。

「あっ!そう言えば一花が高いとこ無理なの忘れてたな」

剛善がふと思い出したように言って止まる。

一花って高いとこ無理なのか、てか剛善さんの身長がめっちゃ高いのは分かるけどおんぶでもダメなのか。

これはいいことを聞いたぞ。

蒼蒔が心の中でニヤリとする。

いつかイタズラし返してやろう。

一花を下ろす剛善さん。

「ぐすん、武人ぉ〜今度お前の嫌いなイモリの黒焼き食わせてやろうか〜」

「悪かったって!すっかり忘れててさ〜」

俺たちは仲良く?先を目指す。


しばらく走った時、

先頭を走る剛善の目の前にゴツゴツと全身が岩で覆われた怪異物が現れた。

「ギュルルルル!」

怪異物はこちらに気付くと身体を丸めて突進してくる。

「邪魔だ!」

剛善の手から橙色の怪気が漂う!

剛寂ごうじゃく流・いちの手・さいさい

岩盤さえ砕くような広範囲に広がる突き!

バギンッ!!

当てられた怪異物の全身にヒビが回ってバラバラに弾け飛んだ。

「進行方向にいる怪異物は全部俺がぶっ壊す!だからみんなは安心して走れ!」



剛寂ごうじゃく流】

六大流派の一つ。

怪気は橙色。

怪気を使って肉体を強化し全身を鋼鉄のように硬くすることが出来る。

名前の由来は「あまりにも強くて寂しさを感じる」ことから名付けられたとされる。



「剛善さん!怪異物が出たら俺も戦いますよ!」 

蒼蒔が剛善の隣に走っていく。

「おお!そうか!いいぞ新入り!積極的なやつは大好きだ!」

【千年裏真流・いちの手・末摘花すえつむはな

【剛寂流・いちの手・さいさい

蒼蒔と剛善が怪異物を薙ぎ払っていく。

「団長も言っていたが以前よりも怪異物が増えた気がするな、まあ雑魚なら問題はないが」

後ろを走る一花が俺たちを見て言う。

「たしかにな!本部を出発してからもう10体ほど狩っているからな」

怪異物がどうやって生まれてくるのか、増えているのかはまだ分かっていないらしい。

「この調子なら問題ない!」

剛善さんが怪異物を蹴散らす。

俺たちは先を急いだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る