第15話 CEOには指1本触れられない

俺は倉庫に入ると大型モニターから声が聞こえた。


≪彼こそ、ツブッターCEO 山田和樹様なるぞ!頭が高い!控えおろー!!≫


そしたら、それに対して、ざわめきが起こった。

最近アテナは、時代劇にはまっているのかな?

ちょっと恥ずかしいからやめてほしいが、まぁいいだろう。


≪そして私は、和樹様の防衛システムAI、アテナです!≫


アテナはそう言うと、目の横でピースした。


「嘘はいけないですよ。こんなに進んだAIなんて聞いたことありませんからね」


「沢良木さんが言うなら間違いないな」


「おそらく、俺たちを欺くために事前に作ったビデオでも流してるんだろ!」


「そうですよ。もし本当にこのようなAIが存在するなら、私の耳にも入ってるはずです」


「おそらく何かの時間稼ぎでしょう!」


「早くこいつやっちゃって、行きましょう!」


「そうですね。そもそも嘘ももっとましなのをつきない。あなたが社長なわけないでしょう。社長は右舷義孝ですよ。世界中の誰でも知っています。山田和樹なんて名前じゃありませんからね」


「教養のないガキとはこういう奴を言うんだな!」


「常識ってのを知らないんだよな」


「大人に嘘つくと、どうなるか教えてやるよ!」


そう言って、ガタイのいい男5人が近づいてきた。


「和樹!私の事はいいからもう逃げて!!」


≪里奈さん!大丈夫ですよ!≫


「えっ?これほんとにビデオなの?生きてるようにしか見えないけど・・・」


≪私はマスターの守護AIですから≫


そういうと画面の女の子は右手を前に掲げ叫んだ。


≪アテナ、行きます!≫


それを合図に、和樹に向かっていった5人組が1人ずつ衝撃音とともに吹き飛ばされていく。

そして残るは沢良木だけとなった。


「なっ!?」


沢良木はびっくりした顔をする。


「何をしたんですかあなた!」


「俺は何もしてないよ」


俺はそう言い、両手をひらひらして、何もしてないアピールをする。


「まぁ、種明かしをするとアテナが俺を守ったんだよ」


「そんな嘘通用すると思ってるんですか?このビデオに映ってる女はマジシャンとでもいうのですか?」


≪私、マジシャンじゃないですよ?≫


「答えは、あそこにあるんだよね」


俺はそう言って、倉庫の天井に指を向けた。

沢良木はそれにつられ、上を見るが倉庫の天井が広がっているだけだ。


「何もないじゃないですか!私を馬鹿にしてるんですか?」


俺はため息をついた。


「倉庫の天井じゃないもっと上だよ」


沢良木は意味が分からなかった。


「あなたは、いったい何を・・・」


「答えは、倉庫の天井のさらに上の上。宇宙にある俺専用のサポート衛星アテナだよ」


「は?」


こいつは何を言ってるんだ?

一個人が衛星を持っている。

そんなことはあり得ない。

そもそも!


「衛星とこの人たちが吹き飛んだのは関係ないんじゃないですか?」


確かに、関係ないようにも思えるが、さっきの現象は確かに衛星によるものだ。


「衝撃波だよ」


「は?」


意味が分からない。


「さっきの男たちの近くに衝撃波を発生させたんだよ。そして、その衝撃波によって、この人たちは吹き飛んだのさ」


何を言ってるのかわからない。

そもそもそんなこと出来るわけがない。

やはりハッタリか?

沢良木は考え込む。


「そもそも、あなたの言ってることすべてが信じられませんね」


「俺の言ってること本当なんだけどな」


「だからまず、ツブッターの社長はあなたじゃなくて右舷社長ですよ。それにこのようなAIや衛星の衝撃波で人間を吹き飛ばすとか、全て嘘ですね!」


俺はため息をついた。

何を言っても信じてもらえない・・・しょうがない。


「アテナ、右舷さんとビデオ電話つないで!」


≪了解しました。マスター!≫


そういうと入口から向かって右の画面に電話マークが出て、しばらくしたら画面が切り替わった。

そしてその画面にはなんとツブッター社長、右舷義孝が社長室だろうか、椅子に座った状態で表示された。

沢良木は、えっ?という顔で固まっている。

そして、理沙は「えっ本物?」と言って騒いでいた。

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