第2話 接触

~護衛艦「あまぎ」艦橋~


「しかし異世界って言っても、海は変わらないね」


そう言ったのは護衛艦「あまぎ」艦長、小野寺成美一等海佐。


「ですね」


答えたのは「あまぎ」副長、大宮真司二等海佐。

ちなみに「あまぎ」とは、日本が初めて作った戦闘機搭載護衛艦である。

艦載機は航空自衛隊のF-35B。

航空母艦ではない。あくまでも『戦闘機搭載護衛艦』だ。

二番艦として「にいたか」がある。


「気象班から連絡!前方に熱帯低気圧確認!」


「異世界でも熱帯低気圧はあるのね……各部配置。嵐に備えよ」


「了!」


艦隊は嵐に入った。

***

~護衛艦「こんごう」CIC~


「レーダーに感!方位0-8-0、距離8000!」


「機種はわかるか?」


「照合中……データなし、UNKNOWN!」


「国籍不明機……ま、異世界だしそりゃそうか」


「艦長、どうします?」


「『にいたか』に報告。対空見張り厳にせよ」


「了!」

***

~護衛艦「あまぎ」艦橋~


「『にいたか』より通信!ヘッドセットでの通信がいいらしいです」


「あ、うん」


成美艦長がヘッドセットを付ける。


「こちら護衛艦『あまぎ』艦長の小野寺です」


『群司令の宮内だ。先程、『こんごう』が国籍不明機を発見した。戦闘機を発艦させ、調査してもらいたい』


「はぁ……わかりました」


『米軍の「ロナルド・レーガン」も戦闘機を発艦させるらしいから、一緒に頼むぞ』


「了解」


通信が切れる。


「サクラ隊を発艦させろ。もちろん、カメラを搭載して」


「了!」


「あまぎ」から10機のF-35Bが発艦。

同時刻、「ロナルド・レーガン」からも10機のF-35が発艦した。


「壮観だな……」


「総勢20機ですしね」


F-35は音速で飛んでいった。

***

――side とある米軍パイロット


俺の名前はロバート・スミス。階級は大尉だ。

アメリカ空軍に所属している。今、新世界の空を飛んでいた。

民間機は飛ぶのが今のところ禁止されてるから、新世界の空を初めて飛んだのは俺達って事になる。

異世界の空を飛ぶなんて、普通ならありえない事だ。

音速だと敵機……じゃなくて、国籍不明機を見逃すかもしれないから、速度を滅茶苦茶おとして飛んでいる。

少し遠くを見ると、日の丸が描かれたF-35Bが同じ速度で飛んでいる。

空自の戦闘機だ。だが、その奥に何か見えたような……


『……ドラゴン?』


神話や、日本のマンガに出てきそうな堅い鱗に身を包み、巨大な羽根を携えた生物が飛んでいる。

速度は300㎞/hくらいだろうか。上に人が乗っている。

とりあえず任務の主目的である写真を撮る。もう一つの目的である平和的接触もしてみようか。

無線は通じないだろうし、どうするか……

そんなことを考えてると、空自の戦闘機が羽根を振っていた。パンクって奴か。

通じるかはわからないが、俺もやってみる。……通じてないようだ。

向こうはこちらに驚いてるのか、高度を下げたり上げたりしている。

***

――side とある航空自衛官


俺の名前は二宮正人。一等海尉だ。

今、ドラゴンと意思疎通をしようとしている。


「通信通じるかな……」


通じるわけないが、無線回線をオープンにする。


「こちら日本国航空自衛隊、日本国航空自衛隊。応答せよ」


応答しないよな……と、思ったとき、無線に音声が入る。


『こちらフェロー王国第三飛龍隊、隊長のカミだ』


「通じるのかよ」


思わずそう言ってしまった。

***

――side とある米軍パイロット


「いや日本語かよ」


思わずそう言ってしまう。ドラゴンジョッキーの格好は完全なるヨーロッパだが、

言語は日本語に酷似しているようだ。というかモロ日本語。俺、習ってるからわかる。

そんなことを考えていると、空自のパイロットが回線をオープンにしたままで話し始める。


「えー、こちらは航空自衛隊の隊員です。あなた達はこの世界の住人ですか?」


『この世界?』


「あー……えっと、あとで貴国に行きますから、場所を教えてくれませんか?」


「ああ、わかった」


とにかく、この世界の国と接触できた。

***

~護衛艦「あまぎ」艦橋~


「この世界の国に接触できたんだ……」


「みたいですね」


「日米の外交官を連れてきてよかったね」


「いざという時戦法の勝ちです」


「なに、その戦法」


「さあ?」


「雰囲気だけで話さないでよ」


「ごめんなさい」

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