〖承-6〗記号(250301改稿 β)

〘履歴〙


・230814投稿


・250301改稿 微修正




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




【白い霧の中】


・白い霧の中、少年の声が響く。




少年の声:「ローラ…、ローラ…」




・白い霧の中、16才の少女のローラが、必死に声の主を探す。




ローラ:「ここよ!  何処に居るの?」




・白い霧の中、少年の声だけが響く。




少年の声;「絶対強くなるから! それまで待ってて…」




・ローラが、周りを見回して、霧をかき分けながら叫ぶ。




ローラ:「待って! 行かないで!」




少年の声:「絶対帰ってくるから…」






【ローラの部屋】


・ローラが、ガバッとベッドから身を起こす。消耗して、肩で息をしている。


 夢だと気づいて、片手で顔を覆って、深いため息をついた。




ローラ:「まったく、いつまで待たせる気だい…」




・ローラが窓のカーテンの隙間から指す明かりを見て苦笑いする。




ローラ:「もう…、待ちくたびれちゃったよ…」




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 




【ブラスター・ギルド カウンター】


・キャンディが、カウンターで書類仕事をしている。


 キャンディが開いている書類に影が射す。




・キャンディが顔を上げると、ローラがいる。




キャンディ:「ど、どうしたんですか?」




ローラ:「ウチの優柔不断男は?」




・キャンディが、あぁと納得した顔で答える。




キャンディ:「第2応接です」




・ローラが、?と腑に落ちない顔をする。




ローラ:「この昼時にかい? 誰か来てるのかい?」




・キャンディが、可笑しそうな顔をして




キャンディ:「いえ、メアリー姉さんの手作り弁当を2人仲良く食べてます」




・ローラが、ガクッと肩を落とす。




ローラ:「はぁ~、そこまで胃袋掴まれて、どうして逃げ切れると思うんだろうね」




・キャンディが、あざとく人差し指を頬に当てて考えこむように言う。




キャンディ:「う~ん。逃げるつもりはないと思いますよ。踏ん切りがつかないだけで」




ローラ:「…誰に似たんだか…。だから優柔不断男って言うんだよ」






【ブラスター・ギルド 第2応接室】


・テーブルタイプ4~6人用の小さな応接室。スティーブンとエミリーが、対面に座り、お弁当を食べている。




スティーブン:「弁当ありがとな。美味しいよ」




・スティーブンが、箸で厚焼き玉子をつまみ、口に頬張り、幸せそうな表情をする。


 エミリーが、それを慈愛の女神のような表情で見守る。




エミリー:「うん」




・スティーブンが、エミリーの後ろにあるスクリーンを見て、何かを思い出し、表情を僅かに硬くする。エミリーが、スティーブンの表情を見て、真面目な表情に変わる。




エミリー:「どうしたの? この前のこと思い出したの?」




スティーブン:「まぁな。曾爺さんは、俺らとっての英雄だ。それが、地球と月では悪魔と呼ばれている。その家族まで周囲から責められて辛い思いをしていた…。実感として思いもよらなかった」




エミリー:「そうね…」






【ブラスター・ギルド 第2応接室】


・スティーブンとエミリーが、応接室でモニターに映るサンディを見つめている。




サンディ:「僕の家では、マヌエルという言葉は禁句だ。口にしてもいけない。写真も1枚も残ってい無い。家系型の家庭なのに、家系図にも名前が無い。彼は存在しなかったことになってる」




サンディ:「マヌエルは、2076年にルナシティが独立を果たしたときに英雄となり、2090年に親地球政権が出来てから戦争犯罪者になった。罪状は、地球に著しい環境破壊を与えた罪だ。マヌエルの起こした地球環境の激変のために、4億の罪なき人々が餓死したと記録されている。2090年当時、マヌエルの家族に対する差別や仕打ちは表立っては無かったが、2095年にマヌエルが自宅監禁となってから、世間の風当たりは強くなった。マヌエルを口汚く罵る電話やメールが毎日のように続き、マスコミの悪意のある報道がひっきりなしに続いた。自宅への放火や爆発物が仕掛けられたことも頻繁にあった。マヌエルは、2096年に家族から離れて、ルナシティから遠く離れた郊外に自分1人で監禁される拠点を購入して引っ越している。それからガルシア家では、マヌエルという人物は最初から存在していないことになった…」




サンディ:「僕は、高校生の時に、ルナシティの歴史に興味を持って歴史学者を目指そうと決めた。そのとき初めて自分がルナシティ独立の英雄を家族を持っていたことに気付いた。それくらい、家族はマヌエルのことについて触れなかった。それからマヌエルのことを調べたよ。彼が何を考えて、何を感じて生きていたのか」




サンディ:「僕は、マヌエルを調べていくうちに、ルナシティ独立劇に疑問を持つようになった。大きなパズルのピースが抜けていることに気が付いたんだ。マヌエルは、優秀な電子計算機技師だが、それ以上では無かった。[ハードロック・オペレーション]で有名な〈危難の海〉のレールガンの建設は、完全に彼の専門とは畑違いだ。誰が、設計した? 誰が金を出した? 誰が資材手配した? 誰が工程管理した? 複数の巨大な岩の弾道計算をして、正確にピンポイントに地球のある地点に落とす。そんな事が出来る人間は、暫定政府陣営には居なかった。おそろしく有能なスタッフが居たはずだが、どこを調べても出てこない」




サンディ:「一つだけヒントがある。僕の家族で、〈マム〉と呼ばれた人物が居る。僕とは血が繋がっていない家族で[大叔母]のような存在さ。彼女は、家族の最初期メンバーで、家族の精神的な支柱のような存在だった。マヌエルの約20才年上の妻だ。彼女の日記が残っていて、そこで書いてあるマヌエルの記述は全て入念に塗りつぶされている。ただ一箇所を除いて」




サンディ:「2075年5月13日は、ルナシティのスチリヤーガ・ホールで、初めて革命会議が開かれた日だ。その翌日の14日のマムの日記のページは黒く塗りつぶされている。マムが、マニエルと何らかの連絡を取り合っているんだ。そして、そのページの欄外に、マムの小さな字で〈MYCROFTXXX〉と書いてある。これだけだ」




サンディ:「僕は、失われたパズルのピースを探したい。なんとか協力してくれないか?」




          ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 




【ブラスター・ギルド 休憩室】


・キャンディが、休憩室のテーブルでサンドイッチを食べている。


 キャンディのサンドイッチに人影が射す。




・キャンディが顔を上げると、ローラがいる。




ローラ:「遅番の昼飯かい? ご苦労さん」




・キャンディが、まだ居たのかという感じで目を瞬かせる。




キャンディ:「今日は、どうしたんですか? 四代目なら外出しましたよ」




ローラ:「いや、キャンディとコミュニケーション取ろうと思って」




・キャンディが、僅かに顔を引きつらせる。明らかに迷惑に思っていて「昼休みぐらい自由にさせてよ」と心の中で毒づきながら、相手がギルドの重鎮なので仕方なく顔に笑顔を張り付けて返事を返す。




キャンディ:「それは、どうも…。それでどうしたんですか?」




ローラ:「いやぁ、現役、復帰しようと思って」




キャンディ:「…店はどうするんですか?」




ローラ:「こないだ税務署から厳重注意食らっちゃって。面倒になっちゃって、下の息子に任せようと思って」




キャンディ:「ケンノビですか?」




ローラ:「あぁ、今同級生だっけ? 知ってるだろ? アイツ数字強いしさ。今も、ネット通販の店舗やってて、採掘プラットフォーム船員向けのプライベートオーダー受けてるんだよ。アタシはね、商売は性に合わないんだよ。なにせ、気に入らないと相手殴って解決してたからね。ほら?お金貰ったら頭下げなきゃいけないだろ?」




・キャンディが、自分が3回目の高校一年生で、ケンノビと同級生なことを思い出して、少し痛い表情をする。ただ、さっさとローラの戯言の付き合いから逃げ出したいので、ローラにツッコミ入れることなく話に合わせる。




キャンディ:「〈紅の魔女〉が復帰するとなれば、凄いですよね」




ローラ:「いや、過去の栄光なんてものはいらないんだ。金もあるしさ。


出来れば無名のパーティー立ち上げて、そこそこの案件受けてさ、いろんな所に行って、気に入らない悪党を根こそぎにするってかね。ロマンだろ?」




キャンディ:「もう、世直し旅ですよね。それ」




ローラ:「ただ、チーム名がねぇ。〈紅の魔女〉だと、有名すぎてさ。A級の指名案件なんて来た日にはさぁ、面倒くてしかたがないしね。けど〈紅〉は外せない」




キャンディ:「それは、年寄…ベテランの、ワガマ…理想ですよね」




ローラ:「あたしも歳だしねぇ。〈紅の婆ババア〉なんちゃってね」




キャンディ:「その罠みたいな、迂闊に笑うと、誰かの命がなくなっちゃうネーミングやめませんか?」




ローラ:「まぁ、試しで1ヵ月とかでも良いんだよ。だれか若くて良いやついないかねぇ。キャンディ?」




キャンディ:「…アタシ、勧誘されてます?」




ローラ:「いや、学校が性に合わないみたいだし? 丁度良いかと思って」




キャンディ:「アタシ18才なんで、ババアにはちょっと早いと思います。アタシ、18才なんで。それに、エミリー姉さんの荒修行がありますんで、お断りします」




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 




【サカモト学園高等部 ケンノビの教室】


・いつものように、4人で机をくっつけて昼食を食べている。




アーサー:「ケンノビさぁ、あそこの机の人って、お前の知り合い?」




・ケンノビが、チラリと視線を左斜め後ろに投げる。窓際に1つ空席がある。天板の上には、アクリルスタンドが置いてあり、そこには手書きのイラストが描いてある。ほっぺがまん丸な女の子が、テヘペロの顔をしたイラスト。吹き出しが付いており、「私が代わりに出席中だよ!」と書いてある。




ケンノビ:「キャンディ姉さんな。今頃、ギルドのカウンターで受付してるわ。きっと」




ドリー:「キャンディ姉は、凄いんだよ。一度聞いたことは何でも覚えてるし、臨機応変だし、応用効くし、戦闘やらせても凄いし」




ケンノビ:「それな」




ドリー:「うん、姉さん学校嫌いなんだよね。学校嫌いで登校しないから、出席日数足りなくて、今3回目の1年生なんだよ」




ケンノビ:「そんで、たまに気まぐれでテスト受けるとトップの成績なんだ」




ドリー:「姉さん本人はねぇ、あのアクリルスタンドで、出席扱いになるって思ってるんだよ」




ケンノビ:「自由すぎかよ」






[記号凡例]


 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。


 ②〘〙 投稿・改稿履歴の表示。神沢メモ他を記載。


 ③【】 主に、場所を記載する。


 ④〈〉 固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。


 ⑤《》 固有名詞・用語。巻末に説明あり。


 ⑥ [ ] 固有名詞・用語。既出のもの。説明ないもの。


 ⑦ ・  登場人物の動きや表情の説明。背景セットの説明。


 ⑧名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」


 ⑨ モノローグ:状況を説明する。


 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ シーンとしての区切り。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る