きっと、ちょっとした会話

アングル

それとこれ

 「Aくんって人と話すの下手だよね」Bさんはいった。

 「Aくんってさ、いつも結果的には正しいことを言うよね?逆に正しくないことを言うのを極端に嫌ってるし」囁くような声で、少し笑いながらそう言った。Bさんは僕と話す時はいつも嘲るような喋り方をする。

 僕は少し頭の中に目を移す。そして

 「僕はずっと正しい道を選ぶことが、生きる上での理想だと思ってる。つまり、自分の思う理想を演じているだけだよ」と答える。

 「いつも一緒にいてさ、ずっと思ってたんだけど、人を諭したり慰めたりする時もそういう言い方をするでしょ?正しいだけじゃ解決しない問題も、世の中にはいっぱいあるよ?」Bさんの言葉を聞いて、頭が回り出す。

 「必ずしもその時に解決しないといけない訳ではないと思ってる。いつか落ち着いた時に、その人にとっての金言になるように…これでも言葉は選んでるよ」誰に対しての弁明なのか。

 人は誠実であるべきだ。だから僕は言葉を飾らない。自分を信じているから、自分の考えを人に晒すことに恐怖心はない。だから言い訳を準備する必要もない。

 「嫌われてでも人のために~ってことぉ?へー、かっこいいー」

 「心にもなさそうなことを言うね」

 「そんなでもないよ、ほんとに一割くらいはかっこいいと思ってる思ってる。だからこそAくんには報われてほしいんだよ」

 なんとなく、Bさんの前だけは、自分の正しさを証明しないといけない気がしてくるんだ。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

きっと、ちょっとした会話 アングル @anguru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る