第十一話 艦隊決戦の終結

 ペンシルベニア艦橋の崩壊後、南雲忠一なぐもちゅういち中将は戦闘が終結したと判断、戦艦比叡より艦隊集結命令を発令した。


 実際、米太平洋艦隊は壊滅していた。


 主力たる第一・二・四戦艦隊は、まず真珠湾から舞い戻ってきた第一波攻撃隊によって四隻が沈没、一隻が大破、三隻が中破の損害を負っていた。その上、赤城・加賀・蒼龍の突入によって大破していた二隻が制圧され、一隻は白旗を掲げた。ただ一隻残存していた戦艦テネシーは、飛龍・翔鶴・瑞鶴から発艦した第二波攻撃隊の猛攻にさらされ、実に魚雷十二本・爆弾六発以上を受けて轟沈した。


 戦艦群の護衛にあたっていた第八巡洋艦隊・第三駆逐戦隊は、第一水雷戦隊・第八戦隊に時間を稼がれ、到着した第二波攻撃隊から猛攻を受けた。その結果、第八巡洋艦隊・第三駆逐戦隊は半壊し、その後一水戦・第八戦隊からの一斉魚雷攻撃によって所属するすべての艦が撃沈されていた。


 艦隊終結後、南雲は今後の対応について幕僚達と協議を行った。


 「我々は、なんとかこの決戦に勝つことができた。その上で、我々は今後どのように行動すべきか、君たちの意見を聞きたい」


 「まずは、飛龍ら三空母に着艦している第一波攻撃隊を真珠湾攻撃隊として出撃させましょう。この間に第二波攻撃隊を収容、損害の度合いを考えず被弾機を全て投棄します。これで、何とか全ての機体を収容できるはずです」


 南雲の問いかけに、航空甲参謀の源田実げんだみのる中佐が航空隊の収容方法について見解を述べた。


 「うむ、航空参謀の言う通りだろう。そもそも母艦数が半減しているし、これしか方法はないだろう。通信参謀、山口少将に搭乗員の命を最優先して航空機の収容にあたるよう命じてくれ」


 「はい!」


 南雲は、源田の意見に賛同の意を示し、通信参謀の小野寛治郎おのかんじろう少佐に山口多聞やまぐちたもん少将へ電文を送るよう命じた。


 「長官。真珠湾への航空攻撃の後は、早期に帰還すべきです。予想外の決戦で艦隊の損耗は大きいです。この辺で引き揚げ、南方作戦や時期作戦へ備えましょう」


 次に参謀長の草鹿龍之介くさかりゅうのすけ少将が、艦隊の損害度合を根拠に本土への帰還を促した。


 実際、太平洋艦隊を壊滅させた第一航空艦隊だったが、その損害はかなり大きかった。


 一航艦は駆逐艦霰・陽炎を喪失、空母赤城・重巡筑摩・軽巡阿武隈・駆逐艦磯風・霞が大破の損害を負っていた。また、戦艦比叡・駆逐艦浦風・不知火・浜風が中破の損害を負い、ほかの艦も多くが小破の損害を負っていた。


 さらに、敵戦艦に衝突した加賀・蒼龍に関しては艦体の損傷が大きく、自沈か戦艦と共に曳航するかの二択を迫られている状況だった。


 草鹿からの提案を受け、南雲は少し考えると話し始めた。


 「参謀長の意見はもっともだ。損傷の大きい艦について処分するか否かを判断し、早めに帰還しよう。状況把握を急いでくれ!」


 「「「はい!」」」


 南雲中将からの命令に、参謀たちは行動を開始した。


 激戦を制した一航艦は、真珠湾へ引導を渡すため、本土へ帰還するために行動を開始し始めていた。

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