第22話 葵葉を救うために
俺は学校を一心不乱で駆け回っていた。
その時はただ葵葉のことが心配でたまらなかった。
兄として助けてあげられないことが耐えられないという正義感から来る焦りだった。
妹が苦しんでいる時に助けてあげられないなんてことは絶対に嫌だ。
そして数分後、校舎の外を見て回っている時に1度だけ大きな声がしたのを聞き逃さなかった。
俺はその方向に行くと、体育館に着いた。
外からの音だったからどこにいるのか探していると、だいぶ裏の方で集団を見つけた。
もしやと思い近づくとそこに見覚えのある姿が見えた……
葵葉だ…一体何をしてるんだ……?
朝に会っていたから見間違えるはずもない。間違いなく葵葉だった。
「立川さん。ほんとに来ててウケるw
あたしはあんたのことが嫌いすぎて毎日疲れちゃうのよ。なんであんたはそんなにクソ生意気なのかしら?」
なんだあいつ?葵葉を囲んでいる中心の女子が葵葉に罵詈雑言を言いつけていた。
ずっと信じたくなかったけど、この時葵葉が虐められているかもしれないという疑惑が確信に変わった。
そう思った瞬間。俺は今まで経験したことない感情に支配されていた。
恐怖…怒り…様々な感情が入り交じって、自分でも分からない感覚に襲われたのを今でも覚えている。
でも……その時俺の心は……
葵葉を助けたいという一心で埋め尽くされた
助けないと…俺は葵葉の兄なんだ。
「おい、お前ら何してんだよ…」
俺は一言、それなりの声量で場を凍らせる。
「なっ……なに?
あー立川さんのお兄さんじゃないですか♪
どうしてこんなところに?まさか妹のことが心配で見に来たとかじゃ「そうだよ…」
「え…?「ふざけんじゃねーぞお前ら!!!」
「複数人でよってたかって恥ずかしくないのか!?
そもそも!葵葉がお前らになにか悪いことでもしたのか?
絶対にそんなわけが無いだろ!!
お前らは分からないだろうけど、葵葉は優しい子だから!!たった1人で、ずっとずっと耐えてきたんだ!!!
ずっと前から………こんな意味の無いことにも!!」
「僕は……妹を傷つけるお前らを、絶対許さない!!」
その場は時が止まったかのような静けさが続いた。すると、取り巻きの1人の女の子が発言する。
「わ…私本当はそんなに立川さんのこと…嫌いじゃなかったし…」
そう言うと他の子達も
「私も」「まあそんなに」
と言った感じで葵葉にあまり敵意がないと打ち明けてきた。
そして、取り巻きのリーダーである子と葵葉が残り、3人の空間が生まれるのであった。
リーダーの子はずいぶんと焦っているような表情だった。周りで虐めていた奴らがみな逃げだし、自分1人となったことに絶望しているのだろう。
「お前は逃げないんだな」
「いや………その私も悪かったというか、立川さんのこと…そんなに……」
「あ??お前だけは絶対に許さないぞ!
謝れよ!葵葉に向かって!今ここで!」
「はっはぃーーー!!すみません!もう絶対やりません!!ごめんなさい!」
「いざ面と向かって言われたら逃げ出すのか…本当にタチが悪いな…」
「大丈夫か?葵葉。お兄ちゃんが助けに来たぜ」
「……な…んで……来てくれたんですか?」
「なんでってそんなの、
お前が大切な妹だからに決まってるだろ
「………うう…っ………
うわぁぁぁぁん〜ずっと……ずっとつらかった……づらがっだよ〜〜」
俺はさも当然という感じで返したが、葵葉は泣き出してしまった。ずっと1人で抱え込んでいたのがとても辛かったんだろう。
その日は葵葉と一緒に家に帰った。
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