0話 Dear my FRIENDS

第0話 ブラックサーバル編 「せいぎのために」

みんな…いなくなった。


まもるべきなかまも…ともだちも…。


こんなにもうしなうことがつらいのなら、であわなければよかった。

なかよくならなければよかった。


でも、おれはあいつをたすけた。


まだおれは、まもるべきもののためにたたかえる…!


おれは、そうしんじてあのちからにてをのばした。


これいじょう…なにもうしなわないために…。


おれは…、おれは…。


「よう、ブラックサーバル…だよな…?最近、ノドグロミツオシエの縄張りを荒らしたのは」


サバンナをあるいていると、ラーテルがこえをかけてきた。


「しらない、おれはセルリアンからあのこをまもっただけだ」


ひっしにうったえをつづけたが、ラーテルはいうことをきいてはくれなかった。


「とぼけるなよ、あいつが言ってたんだ。私をセルリアンから遠ざけたあと、縄張りから食べ物を全て持ち去っていったってな」


「そんなことをしたおぼえはない」


「そんなに無実を証明したいのならば、ちからくらべで俺を倒してみるんだな」


そうか、ちからさえあれば。


「そんなもの、くらべるまでもない」


おれはちからにみをまかせ、おのれのすべてをふるった。


「わ、悪かった…俺が悪かったよ…!たすけ…」


ちからさえあれば、おれがすべてただしい…。

ちからこそがせいぎなんだ。


「おれが、このパークのせいぎだ」


それからのことはなにもおぼえていない。


ただ、ちからをもとめつづけた。


なんども、なんども…。


……第0.1話 ドール編 「せおうべきもの」


「ブラックサーバルから検出された黒い霧のようなもの、外来特殊生物由来のセルリウムが気体状に変化した…いわば、セルゴーストによるものかもしれない」


カコ博士は、外から来た謎の生物の特定と、突如現れたブラックサーバルさんの謎の現象について調べていました。


「セルゴースト…。何かに取り憑かれている、って事ですか」


ミライさんが持っているのは本土の日本というところにある自衛隊という組織の機密レポート。防衛省と呼ばれる方から直々に受け取っているそうです。


「気体状のセルリウム…。海上自衛隊からのレポートで、海底から発掘された固形状のセルリウムから黒い霧が発生していたという報告を受けています。隊がその後どうなったのかは知りませんが…。」


カコ博士も同じようなレポートを受け取っているようです。


「別の報告では、大量のセルリウムが個体となって石油コンビナートから突き出したという事例も発生しているわ」


ブラックサーバルさんは気体状のセルリウム、セルゴーストに接触し、暴走している状態。と見るのが今の2人の結論だそうです。


「ゴーストに触れたアニマルガールがセルリアンと同様の性質を得るのだとしたら、何かしらの輝きを求めているはず…。ブラックサーバルが求めているものって何なのかしら…」


2人は頭を捻り思索していました。


「外来特殊生物からの影響を受けている、というのは特定できましたが、この生物を調べない限りは対策は難しそうですね…」


セルゴーストに取り憑かれたフレンズはセルリアンと同じように輝きを求め始める…

カコ博士とミライさんの中でそう結論がつくと、研究室のラッキービーストから隊長さんの通信が入りました。


「隊長さん…?どうかしたんですか?」


私が隊長さんに尋ねると、隊長さんはこう答えた。


『ブラックサーバルが求めてる輝きは、力そのもの…絶対的な強さだと思う。みんなを守れるだけの、圧倒的でとてつもない力を』


力…。


「誰かを助けるための、絶対的な力…」


麒麟さんから聞いたブラックサーバルさんの過去を思い出して、私はすぐに納得がいった。


「もう二度と…あの日の事件を起こさないように…。誰も傷つけないように…。そんなことしたら…、あの子が壊れちゃう…」


カコ博士は涙を浮かべている。誰かを守ろうとする拳で、守るべきフレンズを傷つけているブラックサーバルさんの事を…守ってあげたい…。そう思っているのかな。


「私に任せてください。…私は、あの子に守ってもらいました。絶対に、私が助けます」


ミライさんは私の手をそっと握り締め、涙を浮かべて私に託した。


「ドールさん…!あなたの大切なともだちを、助けに行きましょう…!」


「…はい!」


しかし、その後ブラックサーバルさんの捜索は決行される事なく、このパークに特異級セルリアンの群れがやって来ました。



でも。


この頃の決意が、新与那国島のみんなを助ける事に繋がったのなら、私はとても嬉しいです。…だけど。


結局、何度ブラックサーバルさんを捜索しても、パークにはそもそも痕跡が無く、あの子が居たという証拠さえも残っていませんでした。


パークからブラックサーバルさんのアニマルガールとしての登録情報は全て抹消され、後にパークに害を成すビーストとして認定される事になりました。


例え、この場所から…。この星からも貴女が忘れられようとしても。貴女が私の事を忘れてしまったとしても…。


「…私が覚えてますから」


待っててくださいね、ブラックサーバルさん。


あなたのともだちが、必ず助けに行きます。


⁇話 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎編に続く。


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